「有料記事を無料で見られるGoogle Chrome 76の機能」によりかえって情報が高価になるという指摘
by Nikin
2019年7月30日に公開された「Google Chrome 76」ではシークレットモードが強化されており、無料ユーザーから有料記事をブロックするペイウォールの一部が回避可能になりました。しかし、これによりかえって情報がユーザーの手に届きにくいものになってしまうと、広告技術などのニュースを扱う海外メディアWhat's New in Publishingが指摘しています。
Google unlocks 33% of publisher paywalls on July 30. This is what happens next. | What’s New in Publishing | Digital Publishing News
https://whatsnewinpublishing.com/google-unlocks-33-of-publisher-paywalls-on-july-30-this-is-what-happens-next/
ペイウォールとは、ウェブサイト上のコンテンツを一部有料化する仕組みのことです。新聞社のオンライン版でよく目にする課金方式で、代表的なものに「一定数の記事までは無料で利用可能で、それ以上利用したい場合は有料にする」というメーター制ペイウォールがあります。
かねてからGoogle Chromeのシークレットモードを使用すると、ペイウォールを回避して有料記事を無料で閲覧できることが知られていましたが、ウェブサイト側もシークレットモードでのアクセスを検知して、コンテンツの代わりに「ブラウザを通常のモードに切り替えるよう促すメッセージを表示する」といった対策を講じてきました。
しかし、2019年7月30日にリリースされた最新版のGoogle Chromeでは、ウェブサイトがシークレットモードを検知することが不可能になりました。この変更についての詳細は以下の記事を読むとよく分かります。
「Google Chrome 76」ではFlash排除の動きが一段と前進、シークレットモードでのペイウォール回避も進化 - GIGAZINE
Chrome 76のシークレットモードの威力をThe New York Timesのウェブサイトで検証したのが以下の画像です。左側はChrome 75のシークレットモードでアクセスした結果で、「あなたはプライベートモードを使っている」というメッセージとともにログインを促すボタンが設置され、記事の冒頭部分以外は読めなくなっています。一方でChrome 76のシークレットモードを使用した右側では問題なく全文が表示されています。
The Boston Globeといった新聞社のウェブサイトでも同様の結果となりました。
この機能について、メディア業界からは反発の声が上がっています。パリを拠点とするニュースサイトWorldcrunchのCOOベンジャミン・サッバーフ氏は自身のTwitter上で「オンラインニュースメディアは、ペイウォールを浸透させるのに5~10年の歳月を要しました。次期Chromeにより、我々はユーザーに無料登録をさせるか、ハードペイウォールに切り替えるかの選択を迫られます」とツイート。「いずれにせよ、まるで賽の河原のようだ」と怒りを露わにしています。
????⛔️ Online news media have spent 5-10 years to get their readers used to metered paywalls & recreate value. With next #Chrome release, #Google gives them 2 weeks to switch to free registration or hard paywalls or... whatever.
— Benjamin Sabbah (@bsabbah) 2019年7月23日
Another rock for Sisyphus!https://t.co/CFToY6E2zt
ハードペイウォールとは、「全てのユーザーがあらゆるコンテンツに対して料金を支払う必要がある」という方式のことで、シークレットモードを利用して無料で読んだ記事の本数をごまかすことができないという点で一般的なペイウォールとは異なります。
Business Insiderの購読サービス責任者であるクローディアス・セント氏は「自社は既に有料会員限定記事にハードペイウォールを採用しているので影響は皆無」としつつ、「多くのパブリッシャーはこれを機にペイウォール戦略を見直すことになるでしょう」と述べました。また、既に多数のパブリッシャーがより厳格な有料購読方式への移行に着手しているという報道もあります。
What's New in PublishingのライターであるMonojoy Bhattacharjee氏は「Googleは期せずして多くのコンテンツが有料の壁(paywall)の向こうに隠されるという結果を招こうとしています」と述べ、プライベートブラウジングの趣旨を尊重したいというGoogleの意図がかえって消費者の利益を損ねることになるとの見方を示しました。
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