日本の研究で幼児期の「スクリーンタイム」の長さと発達の遅れとの間には関連性があることが判明
「スクリーンタイム」とは、テレビの視聴やビデオゲームのために画面を見たり、スマートフォンやタブレットなどの電子機器を使ったりして過ごす時間のことです。1歳の時のスクリーンタイムの長さと、2歳および4歳の時点でのコミュニケーションや問題解決に関する発達の遅れとの間に関連があることがわかったと、東北大学が発表しました。
Screen Time at Age 1 Year and Communication and Problem-Solving Developmental Delay at 2 and 4 Years | Child Development | JAMA Pediatrics | JAMA Network
https://jamanetwork.com/journals/jamapediatrics/fullarticle/2808593
1歳時のスクリーンタイムが2歳・4歳時点の発達特性... | プレスリリース・研究成果 | 東北大学 -TOHOKU UNIVERSITY-
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2023/08/press20230822-01-screentime.html
世界保健機関は、子どもが十分な身体活動に参加できるように、2~5歳の子どものスクリーンタイムを1日1時間に制限することなどをガイドラインで推奨しています。ところが、このガイドラインを守っている子どもはほとんどいないことが2022年の研究で明らかとなっているほか、特に新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる外出制限で子どものスクリーンタイムが長くなっていることから、スクリーンタイムが子どもの発達に与える影響が懸念されるようになりました。
今回、東北大学東北メディカル・メガバンク機構の栗山進一教授らの研究グループは、「東北メディカル・メガバンク計画三世代コホート調査」に参加している7097組の母子を対象に、1歳時のスクリーンタイムと2歳時および4歳時の5つの発達領域における発達特性との関連を調査しました。
1歳時点でのスクリーンタイムはアンケートにより評価され、発達の度合いの測定には2歳と4歳の時点での日本語版ASQ-3乳幼児発達検査スクリーニング質問紙を用いた調査の回答が使用されました。
調査の結果、7097人の子どものうち1日のスクリーンタイムが1時間未満の子どもは3440人(48.5%)、1時間以上2時間未満が2095人(29.5%)、2時間以上4時間未満が1272人(17.9%)、4時間以上が290人(4.1%)でした。スクリーンタイムが長い子どもの母親は年齢が若く、出産経験が少なく、世帯収入や学歴が低く、産後うつ病の傾向があるという特徴がみられたと、研究グループは報告しています。
そして、これらのデータを分析した結果、1歳の時におけるスクリーンタイムの長さと、2歳および4歳の時点における「コミュニケーション」と「問題解決」の発達遅延との間に関連があることがわかりました。
具体的な結果は以下のとおり。1歳の時にスクリーンタイムが1時間未満だった子どもと比較すると、スクリーンタイムが4時間以上の子どもでは2歳の時と4歳の時にコミュニケーション領域の発達に遅れがある割合がそれぞれ4.78倍と2.68倍になっていました。また、問題解決の領域でも2歳では2.67倍、4歳では1.91倍の割合で発達の遅延がみられました。
一方で、スクリーンタイムの発達への影響は領域によって大きく異なっていることもわかりました。研究グループは、コミュニケーションと問題解決以外にも、手と指を使った細かな運動能力である「微細運動(Fine motor)」や「個人的・社会的スキル(personal and social skills)」についても調査しており、2歳の時に観察されたこれらの領域の発達の遅れは、4歳の時には確認できなくなっていたとのこと。また、手足の大きな動きである「粗大運動(Gross motor)」ではどの時点でもスクリーンタイムとの関連性がありませんでした。
指や手の細かい運動能力や社会スキルでの発達の遅れが解消された理由として、研究グループは2つの仮説を提唱しています。1つ目は、2歳の時の発達の遅れが4歳までに追いついたという仮説です。そして、2つ目は微細運動や個人的・社会的スキルの遅れがスクリーンタイムを長くしているという逆の因果関係の発生です。
また、全体的なスクリーンタイムの長さが言語能力の低下に関連していた一方、教育的プログラムを使用していたスクリーンタイムが長いと言語能力が高かったという調査結果も報告されていることから、研究グループは「デジタルデバイスが急速に普及している現代においてスクリーンタイムを極端に減らすことは現実的ではありません。スクリーンデバイスは教育的な一面も含んでおり、先行研究において教育的なスクリーンデバイスの使用が発達に良い影響を与えることが示されています」と述べて、今回の研究結果はスクリーンタイムの制限を推奨するものではないことを強調しました。
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