Location via proxy:   [ UP ]  
[Report a bug]   [Manage cookies]                
メモ

3000台以上の車のフロントガラスに小さな穴やへこみが発生して住民が大混乱になった騒動の原因とは?


1954年春、ワシントン州シアトルの北にあるベリンガムで「車のフロントガラスに小さな穴やへこみができている」という事象が確認されました。悪質ないたずらから宇宙線の影響、スナノミの卵、果ては水爆実験まで疑われた騒動は、発生から数週間でシアトルにまで広がりましたが、シアトル到達後はわずか数日で消滅しました。一体この騒動はなんだったのか、歴史的な出来事に関する百科事典・HistoryLink.orgが情報をまとめています。

Windshield pitting incidents in Washington reach fever pitch on April 15, 1954. - HistoryLink.org
https://www.historylink.org/File/5136

Seattle windshield pitting epidemic - Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Seattle_windshield_pitting_epidemic

「フロントガラス穴あき事件」が最初に確認されたのは1954年3月下旬、シアトルの北にある町・ベリンガムでのことでした。


穴はとても小さなもので、当初捜査にあたった警察官は、何者かがモデルガンでBB弾を撃ち込んだのではないかと考えたそうです。

しかし、最初の報告から1週間もすると、ベリンガムから30kmほど南にあるセドロウーリーやマウントバーノンでも同様の事象が報告されるようになりました。


1954年4月13日早朝、本土と川を隔てたフィダルゴ島にある大きな町・アナコルテスでも、とうとう「穴あき事件」が確認されました。現地警察は、ただちに犯人逮捕のため町に人員を配置。南のウィッビー島との間にかかる橋には障害物が設置され、町を出入りするすべての車とドライバーのチェックが行われました。


しかし対策に効果はなく、ウィッビー島の海軍航空基地でも車両のフロントガラスに穴やへこみが見つかりました。海軍は75人の基地要員を動員して、基地周辺を5時間にわたり集中的に調査しましたが、何の情報も得ることはできませんでした。この日の終わりまでに、ベリンガムからウィッビー島海軍航空基地の南にあるオークハーバーまでの間で、2000台以上の被害が確認されています。

4月14日朝、ついにシアトルの新聞が北方で起きている「穴あき事件」を報じました。すると、シアトル中心部でも警察に続々と「フロントガラスが損傷した」という報告が入るようになり、警察署の前に停車していたパトカーさえ被害に遭いました。

あまりにも報告件数が多いことから、少なくとも「何者かがフロントガラスを壊して回っている」可能性は否定されたものの、原因はまったくわからないまま。


可能性として、1954年3月に第五福竜丸の被爆で知られる水爆実験がマーシャル諸島で行われたことから、何らかの飛来物があったのではないかと考える人も出てきましたが、ガイガーカウンターは反応しませんでした。このほかには「海軍が新たに設置した100万W規模の無線送信機」「宇宙線」「謎の大気現象」「ガラスの中に産み付けられたスナノミの卵が孵化した」「超音速の音波」「地球の磁場の変化」などが原因の候補に挙げられ、最後には「グレムリンのせい」という人まで現れたそうです。

ワシントン大学のD・M・リッター博士は事態を懐疑的に見ており、当局と協力してフロントガラスや残留物について調査を行い、「異常な破損を引き起こすようなものは、私の知る限り何もありません。人々は夢でも見ているのではありませんか?」とコメントしました。

4月15日、「穴あき事件」は最高潮を迎え、警察に届いたフロントガラスの穴あき報告は累計3000件を突破。アラン・ポメロイ市長がドワイト・D・アイゼンハワー大統領とアーサー・ラングリー州知事に宛てて、事態解決の協力を求める連絡をするに至りました。

ラングリー知事は調査委員会結成をワシントン大学に要請。地球環境研究室や応用物理学研究室、化学・物理・気象学科の専門家らは大学構内の84台の車を対象に調査を行い、損傷は「誇張されたもの」で、「普段の運転で車のフロントガラスに小さな物体が当たった結果」である可能性が高いと結論づけました。つまり、リッター博士の見解が当たっていたというわけです。


シアトル市警が追加調査を行うと「新車には穴・へこみはなく、古い車ほど穴・へこみが多い」ことも確認されました。わずかながら、人為的な破壊が行われたケースもあったものの、ほとんどは「穴はずっとあったのに気付いていなかった」ものでした。

最終的に、シアトル警察犯罪研究所のマックス・アリソン巡査部長は「穴あき事例のうち、5%がならず者の仕業、残り95%は大衆の集団ヒステリー」と発表。4月17日には、「穴あき」の報告は一切上がらなくなったそうです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
相次いで報告された不審なドローンの飛行事件が「集団ヒステリー」によるものだった可能性 - GIGAZINE

外交官が次々に謎の脳損傷を負った「ハバナ症候群」の多くは他国の攻撃ではないとの調査結果、一方で未解明の報告も - GIGAZINE

魔女狩りで19人が処刑された「セイラム魔女裁判」の原因は幻覚剤「LSD」かもしれない - GIGAZINE

群衆の行動心理が科学的に解明されつつある - GIGAZINE

in メモ, Posted by logc_nt

You can read the machine translated English article here.