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映画「キューポラのある街」の川口 なぜ外国人は集まるのか 便利で安いだけじゃない

World Now 更新日: 公開日:
JR川口駅周辺に立つ高層マンション。市内では最近至る所で大型マンション立つようになった
JR川口駅周辺に立つ高層マンション。市内では最近至る所で大型マンション立つようになった=2023年3月、埼玉県川口市

川口市は埼玉県の南端に位置する人口約60万人の中核市で、荒川をはさんで東京都と接している。江戸時代から鋳物や園芸などの産業が発展し、近年は東京、新宿ともに電車で30分ほどという近さから、ファミリー層に人気の街。住宅ローン金融機関主催の「本当に住みやすい街大賞」(関東)で2020年、2021年と2年連続1位に選ばれた。なぜ外国人がこの街に多く住むのか。

全国一外国人が多い街、世界104カ国・地域から

外国籍の住民はこの10年で1.8倍に増えており、2023年4月1日現在、世界104の国・地域の4万124人(市の総人口の約6.6%)が暮らす。コロナ禍で多くの外国人が日本を離れたが、川口市では逆に増えた。法務省の在留外国人統計によると、区市町別の在留外国人数で2020年に東京都新宿区、江戸川区を抜き、全国の区市町で最多になった。

棒グラフ。川口市国籍別外国人住民の数。2023年5月現在。川口市統計より。
中国 22355
ベトナム 4296
フィリピン 2748
韓国 2665
トルコ 1382
ネパール1149
その他 4957

国籍別では中国(56.5%)が最も多く、ベトナム、フィリピン、韓国、トルコと続く。主にトルコから来たクルド人は川口市と蕨市やさいたま市などその周辺におよそ2000人と言われているが、自治体が把握しているより実際には多いとみられる。

在留資格別では永住者(31.5%)が多いのが特徴だ。技術・人文知識・国際業務、家族滞在、特定活動、留学、定住者、特定活動と続く。外国籍住民は20~40代の若い世代が約68%(日本人は約38%)を占める。

市が2021年に外国籍住民に川口に住む理由を聞いたところ、交通の利便性や、職場や学校への近さ、家族や同じ国の知人が住んでいること、家賃が安いことを挙げる人が多かった。

「外国籍住民が川口市に暮らす理由」の棒グラフ。
1167人が複数回答。第二次川口市多文化共生指針改訂版より。
交通が便利 34.2
職場や学校に近い 27.9
家族が住んでいる 27.8
同じ国の人が住んでいる 25.8
家賃が安い 10.7
その他 6.4
無回答 1.5

外国籍住民のニーズは「日本語を学びたい」が圧倒的に多い。川口に40年近く続く「自主夜間中学」や、日本語教室など、市民ボランティアが市内に19教室を運営しており、こうした人たちを支えている。

一方、市役所で多文化共生を担当するのは、協働推進課の職員3人と、中国語ができる国際交流員3人、韓国語、英語、ベトナム語、フィリピン語、トルコ語がわかる外国人相談員5人の計11人で、小体制で走り回っている。

先進地の取り組みを参考にしながら、昨年8月、ゴミ出しや税金申告の仕方を動画で説明する7言語対応のポータルサイト「外国人生活ガイド」を開設した。スマートフォンで見られるようにした。外国人相談窓口では20以上の言語で相談にのっている。

川口市のスマホのポータルサイト「外国人生活ガイド」へ誘導するQRコード
川口市のスマホのポータルサイト「外国人生活ガイド」へ誘導するQRコード

外から人を集める求心力、江戸時代から今に続く

1962年に公開された映画「キューポラのある街」の舞台としても知られる川口。鋳物などの産業で栄えた市のなりたちも、外国人が増える底流にある。

市の郷土資料館で学芸員を務める出野雄也さん(31)は、「川口は江戸・東京を下支えする職人の町として発展した経緯がある。工場が多く、例えば鋳物関連では親方の下に弟子がつく徒弟制度で、熱い炉の近くで力仕事をしてきた。昔は各地を渡り歩く職人が多く、近代に工業都市へと発展をとげる川口は、外から人がどんどん集まって工場を構えやすい土地だった」と話す。

そんな土地柄が住む人の気風を生み、外国人を多く集めたのではないかと出野さんは分析する。

「地元で家を継げない人や血気盛んな人も、職人をやろうと入って来やすかったようだ。大都市の周辺は様々な人が居つきやすく、この傾向は、江戸の北の玄関口だった千住から川口あたりまで続いている。変にお高くとまっていないので新しい人が入りやすい。こうした歴史的経緯は、いま川口で外国籍の住人が増えていることにもつながっている」という。