中環でミシュラン2つ星店としてノルディックジャパニーズ料理を提供する「arbor」が11月20日、青森食材を使ったメニューの提供を始めた。20日・21日の2日は全てのコースメニューに青森食材を使う特別メニューも用意したが、全ての席が満席となった。
大間のまぐろでノルディックの郷土料理。隣にはマグロの肌身をイメージした津軽びいどろの肴盃鮪も
特別に考案したというメニュー「Aomori Inspiration」は、ランチ、ディナー共に青森の食材をふんだんに使う。今回は青森市の創作フレンチレストラン「Kashu花秀」の花田秀樹シェフも同店でキッチンに入り、コラボメニューも提供した。
青森県は今年9月、arborのEric Raty(エリック・ラトゥー)シェフを招き、県内の食材などを視察してもらった。これは、昨年青森の観光を特集した香港現地の雑誌が発行される際、青森をイメージする食の写真を同店で撮影したことがきっかけで、エリックシェフも「青森を訪れてみたい」という希望があったことから実現したもの。視察はエリックシェフの強い希望もあり、大間まで出向き、運よくマグロ漁船が荷揚げするマグロに出合うこともできた。その後、シジミ、ワカサギなどが釣れる小川原湖や、長芋、ニンニク、トウモロコシ「嶽きみ」などを育てる農園を訪れたり、ホタテなどの商談も重ねた。
視察の際、青森市で訪れた「Kashu花秀」の花田シェフと意気投合し、花田シェフの香港への渡航などの話も固まった。今回は食材だけでなく、食器、店内装飾、キッチンツールとして、青森の工芸品も採り入れている。もともと同店の店名はラテン語で「木」を表すことから、リンゴの木のプレートや料理べら、津軽びいどろなども器に使うなど、「トータルで」青森を表現したという。
最初に登場するのは「ウニとモクズガニ」で、香港でも食べる機会が多い上海ガニと同属異種の小川原湖のモクズガニを使ったメニューで、カニのだしで炊いた青森県産の米「まっしぐら」を詰めたフィンランド風のカレリアンパイ。同メニューはフィンランドの郷土料理で、ヒマラヤ産ピンクソルトで味付けした青森のキタムラサキウニをトッピングし、フランス産のイエローワインのスープを添えた。
花田シェフが得意とする「春巻き」には、青森県産のフカヒレとノルウェー産のグリルしたロブスターを詰めた。ロブスターの頭とバターで作ったソースを添え、辛味調理料のかんずりオイルで仕上げている。
「大間のマグロ」は赤ワインとしょうゆで漬け、赤身のスライスと刻んだ中トロをフグネギ、燻製(くんせい)卵黄、ライ麦の麦芽クレープで包んだもの。このスタイルもノルディックの郷土料理で、西洋わさびとしょうゆパウダーをトッピングした。酢のクリームと梅酢漬けの長芋も添える。
ハイライトの一つは「青い森紅サーモン」だという。黒酒(くろき)とモシオ海藻塩でマリネしたサーモンをリンゴの木で燻製し、軽く火を通す。バターミルクソース、焦がし昆布油、イクラ、スダチ、カボス、リンゴのピューレ、香草のディルを添えて提供した。
青森の家庭料理「貝焼きみそ」は、青森のホタテを白子のベシャメルソースとかつお節みそのオランデーズソースでグラタン焼きにし、ゴボウ、ジェレサレムアーティチョーク、アシタバ、ユリ根などの冬野菜も添え、カリカリのエシャロットとネギ油をトッピングした。
白みそとのりのブリオッシュと、焼きホタテとみそを使ったバターも横に添える。バターには、半乾燥の青森のホタテとみそパウダーも載せた。
ほかにも「青森のB級グルメ」とも言われる「バラ焼き」を昇華させたものや、デザートのキャラメルプリンにはゴボウを使ったほか、リンゴのアップルパイ、リンゴのわらび餅なども用意する。
今後、まず3週間は、紅サーモン、ホタテ、ゴボウ、ニンニク、リンゴを使ったメニューを加え、その後、通常メニューにも「青森インスピレーション」の言葉を残すという。「青森は本当に食材が豊富で、どれを選んでいいか悩むくらいたくさんあった」と、エリックシェフは今回のメニューづくりを振り返る。「今後も継続して通常メニューにも使っていきたい」とも。
ランチ=888香港ドル、ディナー=1888香港ドル。営業時間はランチ=12時~14時、ディナー=18時30分~21時30分ラストオーダー。