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エロース

ギリシア神話の神

エロース古希: ἜρωςErōs)は、ギリシア神話に登場する恋心と性愛を司るである。ギリシア語で性的な愛や情熱を意味する動詞「ἔραμαι」が普通名詞形に変化、神格化された概念である。日本語では長母音を省略してエロスとも呼ぶ。

エロース
Ἔρως
恋心と性愛の神
エロースの彫像
ナポリ国立考古学博物館所蔵
住処 オリュムポス
シンボル 弓矢, 松明,
配偶神 プシューケー
カオスガイアのような原初神
アレース, アプロディーテー
兄弟 ポボス, デイモス, ハルモニアー, アンテロース, アドレスティアー
子供 ヘードネー(ローマ神話ではウォルプタース)
ローマ神話 クピードー, アモール
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概説

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ローマ神話との対応・姿の変化

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ローマ神話では、エロースには、ラテン語で受苦の愛に近い意味を持つアモール(Amor)またはクピードー(Cupido)を対応させる(ギリシャ語でいう「πάσχω」)。クピードーは後に幼児化して、英語読みでキューピッドと呼ばれる小天使のようなものに変化したが、元は、髭の生えた男性の姿でイメージされていた。古代ギリシアのエロースも同様で、古代には力強い有翼の男性あるいは若々しい青年であり、やがて、少年の姿でイメージされるようになった。エロースの象徴は弓矢及び松明である。

古代の記述

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ヘーシオドスの『神統記』では、カオスガイアタルタロスと同じく、世界の始まりから存在した原初神 (Greek primordial deities)である。崇高で偉大で、どの神よりも卓越した力を持つ神であった。またこの姿が、エロースの本来のありようである。

後に、軍神アレースと愛の女神アプロディーテーの子であるとされるようになった。またエロースはアプロディーテーの傍に仕える忠実な従者とされる[1]

古代においては、若い男性の姿で描かれていたが、西欧文化では、近世以降、背中にのある愛らしい少年の姿で描かれることが多く、手には弓と矢を持つ(この姿の絵は、本来のエロースではなく、アモールあるいはクピードーと混同された絵である)。黄金で出来た矢に射られた者は激しい愛情にとりつかれ、で出来た矢に射られた者は恋を嫌悪するようになる。

エロースはこの矢で人や神々を撃って遊んでいた。ある時、アポローンにそれを嘲られ、復讐としてアポローンを金の矢で、たまたまアポローンの前にいたダプネーを鉛の矢で撃った。アポローンはダプネーへの恋慕のため、彼女を追い回すようになったが、ダプネーはこれを嫌って逃れた。しかし、いよいよアポローンに追いつめられて逃げ場がなくなったとき、彼女は父に頼んでその身を月桂樹に変えた(ダプネー daphne とはギリシア語で、月桂樹という意味の普通名詞である)。このエピソードが示す寓意は、強い理性に凝り固まった者は恋愛というものを蔑みがちだが、自らの激しい恋慕の前にはその理性も瓦解するということである。

「愛と心の物語」

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フランソワ=エドゥアール・ピコの1817年の絵画『アモルとプシュケ(愛と心)』。

ヘレニズム時代になると、甘美な物語が語られるようになる。それが『愛と心の物語』である。地上の人間界で、王の末娘プシューケーが絶世の美女として噂になっていた。母アプロディーテーは美の女神としての誇りからこれを嫉妬し憎み、この娘が子孫を残さぬよう鉛の矢で撃つようにエロースに命じた。

だがエロースはプシューケーの寝顔の美しさに惑って撃ち損ない、ついには誤って金の矢で自身の足を傷つけてしまう。その時眼前にいたプシューケーに恋をしてしまうが、エロースは恥じて身を隠し、だが恋心は抑えられず、魔神に化けてプシューケーの両親の前に現れ、彼女を生贄として捧げるよう命じた。

晴れてプシューケーと同居したエロースだが、神であることを知られては禁忌に触れるため、暗闇でしかプシューケーに会おうとしなかった。姉たちに唆されたプシューケーが灯りをエロースに当てると、エロースは逃げ去ってしまった。

エロースの端正な顔と美しい姿を見てプシューケーも恋に陥り、人間でありながら姑アプロディーテーの出す難題を解くため冥界に行ったりなどして、ついにエロースと再会する。この話は、アープレーイウスが『黄金の驢馬』のなかに記した挿入譚で、「愛と心」の関係を象徴的に神話にしたものである。プシューケーとはギリシア語で、「心・魂」の意味である。

プシューケーとの間にはウォルプタース(ラテン語で「喜び」、「悦楽」の意。古典ギリシア語ではヘードネー)という名の女神が生まれた。

脚注

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出典

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  1. ^ 松村一男/監修 『知っておきたい 世界と日本の神々』44頁。

参考書籍

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関連項目

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