ダルバート
ダルバート(ネパール語:दालभात dālbhāt、ダルバットとも)は、ネパールの代表的な家庭料理で、ダル(daal=挽割り豆のスープ)とバート(bhaat=米飯)の合成語であり、それにカレー味の野菜などのおかず(タルカリー)、漬物(アツァール)の2つを加えた4つがセットになった食事をいう。ネパールでは毎日食べられている、日本でいう定食にあたるものである[1]。
概要
編集日本でいえば、「味噌汁、ご飯、副食」の組み合わせにあたるもので、ネパールで普通「料理」といえばダルバートを指す。ネパール料理は一般に、ターメリック、クミン、コリアンダーなど各種スパイスを使ったカレー味が基本である。インドほど唐辛子は使わないので、ややマイルドであっさりしている。特にダルはマイルドであり、辛い料理との相性がいい[1]。
ダル(daal)は、小粒の豆を使ったスープ。さらっとしており、米飯にかけて指先で混ぜ込んで食べるのが普通である。ネパールは300種類にも及ぶ豆を料理に使うため、ダルが食事の主役といっても過言ではない。レンズマメ、キマメ、黒豆、リョクトウ、ケツルアズキなどがよく食べられる[1]。
バート(またはバット)(bhaat)は、ライス(米)を意味する。バスマティと呼ばれるインディカ米(長粒種米)であり、細長くパサパサしている。ネパールでは、白米以外の主食として、ディロ(トウモロコシやシコクビエなどの粉を熱湯で練ったもの)やローティ(パン)も食べられる[1]。
タルカリー(tarkaarii)はおかずである。炒めた野菜やカレー(野菜が主)などで、ジャガイモ、カリフラワー、ニガウリ、サヤインゲンなどがよく使われる。店によっては素材を日替わりにして、飽きないように工夫を凝らしている。ときに別に肉料理などもつくこともあるが、一般家庭では稀であり、週に一度くらいしか食べない。おかずがない場合はダルとバートだけの組み合わせになることもある。最低ダルとバートだけは入るため、ダルバートと呼ばれ、名の由来ともなっている[1][2]。
サーグ(またはサグ)(saag)は、青菜の炒め物の総称。主にカラシナが使われるが、季節や地域によってはホウレンソウとなることもある。
以上のものに、アツァール(またはアチャール、アチャル)(acaar)と呼ばれる辛口の漬物、薬味がつくのが一般的である。アツァールには大根やジャガイモなどがよく使われ、乾燥させたグリーンピース、ティンブール(tinbur サンショウ)、 焦がしたフェヌグリークなどの風味が入り混じる。その他、クルサーニ(खोर्सानी khorsāni) という小型激辛青唐辛子が薬味としてつくこともある。料理の辛みが足りないときは、これを生で齧りながら食べる。
スパイス
編集おかずであるタルカリ(tarkaarii)には、スパイス(マサラ)が使われ、日本でいうカレーにあたるが、肉は滅多に使われず、野菜が中心である。ジャガイモ、タケノコなどもよく使われる。以下にタルカリに使われる代表的なスパイスを上げるが、中でもよく使われるのは、ベサール(ウコン)、ラッスン(ニンニク)、モリジ(黒コショウ)、アドゥア(ショウガ)、クルサニ(トウガラシ)などである[1]。料理に便利な様々なスパイスをあらかじめ調合したミックスマサラ(ミックススパイス)もあり、「ガラムマサラ」などがその代表的なもの。その他、「カレーパウダー」、「チキンマサラ」、「野菜マサラ」などもネパールの食料品店やスーパーでは市販されている[2]。
- ラッスン(ニンニク)
- ジラ(クミン)
- モリジ(黒コショウ)
- ベサール(ウコン)
- アドア(ショウガ)
- ダニア(コリアンダー)
- スクメル(カルダモン)
- ティル(ゴマ)
- メティ(フェヌグリーク)
- ジャイパル(ナツメグ)
- クルサニ(トウガラシ)
- ダルチニ(シナモン)
- ケサリ(サフラン)
- トリ(マスタード)
- ルワング(クローブ)
- ガラムマサラ(ミックススパイス)
「ガチネパ」との関連
編集ダルバートは家庭料理であるがゆえに、インド料理店で働いてきたネパール人料理人の中には、そのような料理を出しても売れず、プライドにかかわると考えていたものすらいた[3]。ある時、新大久保のネパール料理店が留学生たちのためにダルバートを提供したところ評判を呼んだ[注釈 1][3]。やがて500円でダルバートを提供する店も出てくるようになったことで、日本人客の注目も集めるようになった[3]。
脚注
編集注釈
編集出典 =
編集外部リンク
編集- ウィキメディア・コモンズには、ダルバートに関するカテゴリがあります。
- ネパール料理教室 特定非営利活動法人ヒマラヤ保全協会
- 在日ネパール国大使館によるネパール料理の紹介