永井淳
永井 淳(ながい じゅん、1935年1月17日 - 2009年6月4日)は、日本の英米文学の翻訳家でベストセラー小説を多く訳した。
生涯
編集秋田県生まれ。本名・須藤隆。埼玉大学文理学部(現:教養学部)卒。角川書店の編集者を経て翻訳家となる。翻訳を大久保康雄と中村能三の二人から学んだ。
1961年に最初の訳書を出版以来、アーサー・ヘイリー、スティーヴン・キング、ジェフリー・アーチャー、W・P・キンセラなど娯楽作品や戦記・探検記の翻訳多数、出版した訳書は120冊を超える。
特にヘイリーやアーチャーの訳書は(ドラマ化もされ)周知され多数重版「売れる作家をいち早く手がける眼力は師匠大久保譲り」と評された。職業翻訳家として[1]エンターテインメント作品紹介に徹した。また師・大久保の訳書目録を作成している。
エピソード
編集- 1973年以来一貫し作品翻訳を行ったアーサー・ヘイリーとは、来日時には会見するなど交流があった。ヘイリーは2004年に逝去[3]、最後の作品「殺人課刑事」も生前に訳し見送る形となった。
- ジェフリー・アーチャーも1976年の作家デビュー以来、一貫し小説作品[4]の翻訳全てを手がけ深い交流がある。2009年6月刊のアーチャーの「誇りと復讐」訳が、同月に亡くなった永井自身の最後の仕事となった。
- 永井没後のアーチャー作品の翻訳刊行は、戸田裕之が引き継ぐ形で「遥かなる未踏峰」(2011年1月)以降一貫して行っている。なお永井訳のアーチャー作品は、処女作「百万ドルをとり返せ!」、代表作「ケインとアベル」(2019年現在)のみが現行版。
- 趣味はゴルフで、1992年頃からほぼ毎年同業の小鷹信光たちとゴルフツアーで英国やアイルランドに行き本格的だった。ゴルフ関係書の翻訳も手がけており、ゴルフ紀行も著書出版している。
著書
編集- 『リンクスランドより イギリス・アイルランド・ゴルフ通信』東京書籍 2004
翻訳
編集- 『運命の宝石』(コーネル・ウールリッチ、早川書房) 1961
- 『悪魔とベン・フランクリン』(シオドア・マシスン、早川書房) 1962
- 『殺しあい』(ドナルド・E・ウェストレイク、早川書房) 1963、のち文庫
- 『地下室のメロディー』(ジョン・トリニアン、早川書房) 1963
- 『逃げる男のバラード』(シェリイ・スミス、早川書房、世界ミステリシリーズ) 1963
- 『日曜日には鼠を殺せ』(エメリック・プレスバーガー、早川書房) 1964
- 『新聞裁判 シェパード殺人事件』(ポール・ホームズ、早川書房) 1965
- 『嘲笑う男』(レイ・ラッセル、早川書房、異色作家短篇集15) 1965 、のち再刊 2006
- 『007号 / ジェイムズ・ボンド白書』(キングズリイ・エイミス、早川書房) 1966
- 『最後の100日 ヨーロッパ戦線の終幕』(ジョン・トーランド、早川書房) 1966、のち文庫
- 『裸のランナー』(フランシス・クリフォード、早川書房) 1967
- 『海底のスペイン金貨 フロリダ沖アクアラング作戦』(キップ・ワグナー/L.B.テイラーJr, 集英社) 1967、のち改題『海底の黄金』(角川文庫)
- 『動物救出作戦』(ジョン・ウォルシュ,ロバート・ギャノン、毎日新聞社) 1967
- 『果てしなき無限の鏡』(リチャード・コンドン、早川書房) 1967
- 『金星の大海賊』(E.R.バローズ、角川文庫) 1968
- 『007号 / 孫大佐』(ロバート・マーカム、早川書房) 1968、のち文庫
- 『寝室に棲む亡妻』(キャサリン・ターニイ、徳間書店) 1968
- 『角笛の音の響くとき』(サーバン、早川書房) 1968
- 『宇宙のウィリーズ』(エリック・フランク・ラッセル、創元推理文庫) 1968
- 『ヒトラー強盗美術館』(デヴィッド・ロクサン/ケン・ウォンストール、日刊ペン社) 1968
- 『マイラ』(ゴア・ヴィダール、早川書房) 1969
- 『シャドウボクサー』(ノエル・ベーン、早川書房) 1969
- 『ザルツブルグ・コネクション』(マッキネス、筑摩書房) 1969、のち角川文庫
- 『金星の死者の国』(E・R・バローズ、角川文庫) 1969
- 『夢みる宝石』(シオドア・スタージョン、早川書房、世界SF全集) 1969、のち文庫
- 『プリズナー』(トーマス・M・ディッシュ、早川書房) 1969、のち文庫
- 『ガス状生物ギズモ』(マレー・ラインスター、創元推理文庫) 1969
- 『アドルフ・ヒトラー』(ルイス・スナイダー、角川文庫) 1970
- 『孤独の時刻』(フランシス・クリフォード、早川書房) 1970
- 『永遠へのパスポート』(J・G・バラード、創元推理文庫) 1970
- 『ラブ・マシーン』(ジャクリーヌ・スーザン、常盤新平共訳、新潮社) 1971
- 『危険な夏』(ヘミングウェイ、角川文庫) 1971、復刊1990
- 『葦舟ラー号航海記』(トール・ヘイエルダール、草思社) 1971
- 『カリブ海の秘密』(アガサ・クリスティー、早川書房) 1971、のち文庫
- 『諜報作戦 / D13峰登頂』(アンドルー・ガーヴ、創元推理文庫) 1971
- 『マルクス兄弟のおかしな世界』(ポール・D・ジンマーマン他、中原弓彦共訳、晶文社) 1972
- 『スペインに死す』(ウィリアム・ヘリック、角川書店) 1972
- 『フランクフルトへの乗客』(アガサ・クリスティー、早川書房、世界ミステリ全集) 1972、のち文庫
- 『放浪惑星』(フリッツ・ライバー、創元推理文庫) 1973
- 『目的地アルファ・ケンタウリ』(A・E・ヴァン・ヴォークト、創元推理文庫) 1973
- 『ビートルズの不思議な旅』(ピーター・マッケイブ/ロバート・D・ショーンフェルド、深町真理子共訳、草思社) 1973
- 『野獣死すべし』(ニコラス・ブレイク、早川書房、世界ミステリ全集) 1973、のち文庫
- 『生存者 アンデス山中の70日』(P・P・リード、平凡社) 1974、のち新潮文庫
- 『いくたびか美しく燃え』(ジャクリーヌ・スーザン、新潮社) 1974、のち文庫
- 『惑星売ります』(ヴァン・ヴォークト & メイン・ハル、創元推理文庫) 1974
- 『ノイローゼになった犬』(スティーヴン・ベイカー、晶文社) 1975
- 『殺人者』(コリン・ウイルスン、早川書房) 1975
- 『マラガからの秘密指令』(ヘレン・マッキネス、角川書店) 1975
- 『九マイルは遠すぎる』(ハリイ・ケメルマン、深町真理子共訳、早川ミステリ文庫) 1976
- 『親善野球に来たスパイ』(L.カウフマン,B.フィッツジェラルド,T.シーウェル、平凡社) 1976
- 『コロンブス 不可能を征服した男』(フェリペ・フェルナンデス=アルメスト、草思社) 1977
- 『フォーチュン氏の事件簿』(H.C.ベイリー、創元推理文庫) 1977
- 『アドルフ・ヒトラー』全2巻(ジョン・トーランド、集英社) 1979、のち文庫 全4巻
- 『シャドウボクサー 』(ノエル・ベーン、早川文庫) 1980
- 『メイド・イン・アメリカ』(ピーター・マーズ、読売新聞社) 1981
- 『イングリッド・バーグマン マイストーリー』(アラン・バージェス、新潮社) 1982
- 『甦った鷲たち』(ジョゼフ・ディモーナ、新潮文庫) 1982
- 『カー短編全集5』(ディクスン・カー、宇野利泰共訳、創元推理文庫) 1983
- 『ナイト・スカイ』(クレア・フランシス 角川書店) 1986、のち文庫
- 『ストライク・スリーで殺される』(リチャード・ローゼン、早川ミステリ文庫) 1987
- 『ボギー・マン』(ジョージ・プリンプトン、東京書籍) 1989
- 『誓約』(ネルソン・デミル、文藝春秋) 1989、のち文庫
- 『スパイだったスパイ小説家たち』(アンソニー・マスターズ、新潮選書) 1990
- 『全英オープン殺人事件』(キース・マイルズ、徳間文庫) 1990
- 『イギリスの釣り休暇』(J・R・ハートリー、芦沢一洋共訳、早川書房) 1994
- 『グレタ・ガルボ その愛と孤独』(アントーニ・グロノヴィッツ、草思社) 1994
- 『デイヴ・バリーのアメリカを笑う』(デイヴ・バリー、集英社) 1995
- 『衣裳戸棚の女』(ピーター・アントニイ、創元推理文庫) 1996
- 『いまの私』(ローレン・バコール、文藝春秋) 1997
- 『オードリー・ヘプバーン』(バリー・パリス、集英社) 1998、のち改題文庫化『オードリー・ヘップバーン物語』
- 『イチロー USA語録』(デイヴィッド・シールズ編、戸田裕之共訳、集英社新書) 2001
- 『父と子のゴルフ奮闘記 ゴルフは子供を育てる!』(アンドリュー・シャンリー、集英社) 2001
- 『ゴルフのすべて』(ボビー・ジョーンズ、ゴルフダイジェスト社) 2002
- 『ドライビング・レッスン』(エド・マクベイン、ソニー・マガジンズ) 2002
- 『ブルーベア』(リン・スクーラー、集英社) 2003
アーサー・ヘイリー
編集- 『自動車』(アーサー・ヘイリー、新潮社) 1973、のち文庫
- 『最後の診断』(アーサー・ヘイリー、新潮文庫) 1975
- 『マネーチェンジャーズ』(アーサー・ヘイリー、新潮社) 1976、のち文庫
- 『エネルギー』(アーサー・ヘイリー、新潮社) 1979、のち文庫
- 『権力者たち』(アーサー・ヘイリー、新潮文庫) 1979
- 『ストロング・メディスン』(アーサー・ヘイリー、新潮社) 1985、のち文庫
- 『ニュースキャスター』(アーサー・ヘイリー、新潮社) 1990、のち文庫
- 『殺人課刑事』(アーサー・ヘイリー、新潮社) 1998、のち文庫
スティーブン・キング
編集- 『キャリー』(スティーヴン・キング、新潮社) 1975、のち文庫
- 『呪われた町』(キング、集英社文庫) 1983
- 『クージョ』(スティーヴン・キング、新潮文庫) 1983
- 『いかしたバンドのいる街で ナイトメアズ&ドリームスケープス 1』(スティーヴン・キング、白石朗共訳、文藝春秋) 2000、のち文庫
- 『ヘッド・ダウン ナイトメアズ&ドリームスケープス2』(スティーヴン・キング、文藝春秋) 2000
- 『メイプル・ストリートの家』(スティーヴン・キング、文春文庫) 2006
ジェフリー・アーチャー
編集- 『百万ドルをとり返せ!』(ジェフリー・アーチャー、新潮文庫) 1977、改版2011
- 『大統領に知らせますか?』(ジェフリー・アーチャー、新潮文庫) 1978、新版1987
- 『ケインとアベル』(ジェフリー・アーチャー、新潮文庫) 1981、改版2007
- 『ロスノフスキ家の娘』(ジェフリー・アーチャー、新潮文庫) 1983
- 『めざせダウニング街10番地』(ジェフリー・アーチャー、新潮文庫) 1985
- 『ロシア皇帝の密約』(ジェフリー・アーチャー、新潮文庫) 1986
- 『十二本の毒矢』(ジェフリー・アーチャー、新潮文庫) 1987
- 『無罪と無実の間』(ジェフリー・アーチャー、新潮文庫) 1988
- 『十二の意外な結末』(ジェフリー・アーチャー、新潮文庫) 1988
- 『チェルシー・テラスへの道』(ジェフリー・アーチャー、新潮文庫) 1991
- 『ジェフリー・アーチャー 日本を糺す』(ジェフリー・アーチャー、講談社) 1993
- 『最後の特ダネ』(ジェフリー・アーチャー、新潮文庫) 1993
- 『盗まれた独立宣言』(ジェフリー・アーチャー、新潮文庫) 1993
- 『十二枚のだまし絵』(ジェフリー・アーチャー、新潮文庫) 1994
- 『メディア買収の野望』(ジェフリー・アーチャー、新潮文庫) 1996
- 『十一番目の戒律』(ジェフリー・アーチャー、新潮文庫) 1999
- 『十四の嘘と真実』(ジェフリー・アーチャー、新潮文庫) 2001
- 『運命の息子』(ジェフリー・アーチャー、新潮文庫) 2003
- 『ゴッホは欺く』(ジェフリー・アーチャー、新潮文庫) 2007
- 『プリズン・ストーリーズ』(ジェフリー・アーチャー、新潮文庫) 2008
- 『誇りと復讐』(ジェフリー・アーチャー、新潮文庫) 2009
W・P・キンセラ
編集- 『シューレス・ジョー』(W・P・キンセラ、文藝春秋) 1985、文春文庫 1989
- 『アイオワ野球連盟』(W.P.キンセラ、文藝春秋) 1987
- 『野球引込線』(W.P.キンセラ、文藝春秋) 1992
- 『インディアン・ジョー フェンスポスト年代記』(W.P.キンセラ、文藝春秋) 1995
ロアルド・ダール
編集- 『来訪者』(ロアルド・ダール、早川書房) 1976、のち文庫
- 『飛行士たちの話』(ロアルド・ダール、ハヤカワ文庫) 1981
- 『少年』(ロアルド・ダール、早川書房) 1989、のち文庫
- 『単独飛行』(ロアルド・ダール、早川書房) 1989、のち文庫
アート・バックウォルド
編集- 『そしてだれも笑わなくなった』(アート・バックウォルド、文藝春秋) 1980
- 『だれがコロンブスを発見したか』(アート・バックウォルド、文藝春秋) 1980
- 『嘘だといってよ、ビリー』(アート・バックウォルド、文藝春秋) 1982
- 『ゴッドファザーは手持ち無沙汰』(アート・バックウォルド、文藝春秋) 1984
- 『二毛猫アーヴィングの失踪』(アート・バックウォルド、文春文庫) 1987
- 『コンピューターが故障です』(アート・バックウォルド、文藝春秋) 1990
コナン・ドイル
編集「反地球」シリーズ
編集- 『ゴルの巨鳥戦士 反地球シリーズ1』(ジョン・ノーマン、創元推理文庫) 1975
- 『ゴルの無法者 反地球シリーズ2』(ジョン・ノーマン、創元推理文庫) 1977
- 『ゴルの神官王 反地球シリーズ3』(ジョン・ノーマン、創元推理文庫) 1979