Pentium 4
Pentium 4(ペンティアム・フォー)は、インテルが製造したNetBurstマイクロアーキテクチャに基づくx86アーキテクチャのマイクロプロセッサ(CPU)に付された商標である。集積トランジスタ数は4200万[1]。最初の製品は2000年11月20日に発表され、当初はその単一製品に付した商品名と目されていた。しかしその後も後継のプロセスルールで製造されたが同名で販売され、結果として一連の製品を指す商標になった。そのため、同じくPentium 4を冠するCPUであってもプロセスルール(すなわち製品世代)によって性能が大きく異なる。それら製品世代を区別して指す場合には、(自作パソコンユーザーなどがそうするように)インテルが用いた社内開発コードネームをそのまま用いることが多い。本項でも以降の節では開発コードネームを見出しに用いる。
生産時期 | 2000年11/20から2008年8/8まで |
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生産者 | インテル |
CPU周波数 | 1.3 GHz から 3.8 GHz |
FSB周波数 | 400 MHz から 1066 MHz |
プロセスルール | 180nm から 65nm |
マイクロアーキテクチャ | NetBurst |
命令セット | x86, x64(x64はPrescott-2MとCedar Millのみ) |
拡張命令 | MMX, SSE, SSE2, SSE3 (since Prescott). |
コア数 | 1 |
ソケット |
Socket 423 Socket 478 LGA 775 |
コードネーム |
Willamette Northwood Prescott Cedar Mill |
前世代プロセッサ | Pentium III |
次世代プロセッサ | Pentium D |
トランジスタ |
42M 180 nm 55M 130 nm 169M 130 nm (P4EE) 125M 90 nm 188M 65 nm |
Willamette(ウィラメット)
編集2000年11月20日に発表され、同年12月より市場投入された第一世代のPentium 4である。180nmプロセスルールで製造され[1]、256KBのL2キャッシュメモリを持つ。 当初はサポートするチップセットが、高価なRDRAMしか利用できないIntel 850チップセットのみで、Pentium 4に128MB分(64MBが2枚)のRIMM(RDRAMモジュール)を安価なPC-133 SDRAMと同等価格で同梱するなどの様々な販促活動を行ったが、あまり普及しなかった。このため、インテルは安価なPC-133 SDRAMが利用可能なIntel 845チップセットを止む無く発売した。なお、Intel 865系以降のチップセットはWillametteに対応していない。開発コードネームはウィラメット川からとられた。
発売当初はSocket 423を採用していたが、後にSocket 478を採用し、これが主流となる。
- ソケット423版
最高動作周波数(供給クロックx内部逓倍数) コア数 FSB周波数 2次キャッシュメモリ容量 TDP (ステップ=プロセス・ルール改訂番号) 2.00GHz (100MHz x20) 1 400MHz 256KB 71.8W 1.90GHz (100MHz x19) 69.2W 1.80GHz (100MHz x18) 66.7W 1.70GHz (100MHz x17) 64W 1.60GHz (100MHz x16) 61W 1.50GHz (100MHz x15) 54.7W(B2/C1) 57.8W(D0) 1.40GHz (100MHz x14) 51.8W(B2) 54.7W(C1) 1.30GHz (100MHz x13) 48.9W(B2) 51.6W(C1)
- ソケット478版
- ソケット423版に比してインテグレーテッド ヒート スプレッダ(IHS)が大型化され、インターポーザ(サブストレート)のほぼ全面を覆うようになり、以後LGA775版(コアを問わず)を含めこの形状が主流となる。
最高動作周波数(供給クロックx内部逓倍数) コア数 FSB周波数 2次キャッシュメモリ容量 TDP (ステップ=プロセス・ルール改訂番号) 2.00GHz (100MHz x20) 1 400MHz 256KB 75.3W 1.90GHz (100MHz x19) 72.8W 1.80GHz (100MHz x18) 66.1W 1.70GHz (100MHz x17) 63.5W(C1/D0/E0) 67.7W(SL62Z) 1.60GHz (100MHz x16) 57.9W(C1) 60.8W(D0/E0) 1.50GHz (100MHz x15) 57.9W(C1/D0/E0) 62.9W(DP) 1.40GHz (100MHz x14) 55.3W
Northwood(ノースウッド)
編集2002年1月8日にリリースされた第二世代のPentium 4。Willametteのルビーをそのまま130nmプロセスルールで製造した製品。製造プロセスの微細化による消費電力低減とL2キャッシュメモリの倍増(256KBから512KB)による多少の性能向上を実現している。最大動作周波数は2004年2月販売開始品にて3.4GHzを達成した。 2002年11月にはXeonプロセッサに引き続きハイパースレッディング・テクノロジー(HT:Hyper-Threading Technology、同時マルチスレッディング)が利用可能なPentium 4がリリースされた。このHTに対応したチップセットとしてIntel 865/875シリーズが開発された。 後継製品のPrescottと比較してTDPと処理能力のバランスが良いとされ日本の自作パソコンユーザーにはPrescott登場後も根強い人気があったが、2005年3月をもって製造を終了した。
最高動作周波数(供給クロックx内部逓倍数) コア数 FSB周波数 2次キャッシュメモリ容量 HT対応 TDP (ステップ=プロセス・ルール改訂番号) 3.40GHz (200MHz x17) 1 800MHz 512KB ○ 89W 82W(D1) 3.20GHz (200MHz x16) ○ / ×(SL792) 82W 3.06GHz (133MHz x23) 533MHz ○ 81.8W 3.00GHz (200MHz x15) 800MHz ○ / ×(SL78Z) 81.9W(D1) 82W(M0) 3.00GHz (100MHz x30) 400MHz × 80W 2.80GHz (200MHz x14) 800MHz ○ 69.7W(D1) 75.1W(M0) 2.80GHz (133MHz x21) 533MHz × 68.4W 2.80GHz (100MHz x28) 400MHz 2.66GHz (133MHz x20) 533MHz 66.1W 2.60GHz (200MHz x13) 800MHz ○ 69W 2.60GHz (100MHz x26) 400MHz × 62.6W 2.53GHz (133MHz x19) 533MHz 59.3W(B0) 61.5W(C1/D1) 2.50GHz (100MHz x25) 400MHz 61W 2.40GHz (200MHz x12) 800MHz ○ / ×(SL6WR) 66.2W(D1) 75.1W(M0) 2.40GHz (133MHz x18) 533MHz × 57.8W(B0) 59.8W(C1/D1/M0) 2.40GHz (100MHz x24) 400MHz 57.8W(B0) 59.8W(C1/D1) 2.26GHz (133MHz x17) 533MHz 56W(B0) 58W(C1/D1/M0) 2.20GHz (100MHz x22) 400MHz 55.1W(B0) 57.1W(C1/D1) 2.00GHz (100MHz x20) 52.4W(B0) 54.3W(C1/D1) 43.7W(SL62Q) 75.3W(SL6SP) 1.80GHz (100MHz x18) 49.6W(B0) 66.1W(C1/D1) 40.9W(SL62R) 68.4W(SL6QL) 1.60GHz (100MHz x16) 38W(SL62S) 46.8W(SL668)
Prescott(プレスコット)
編集2004年1月1日にリリースされた90nmプロセスで製造される第三世代のPentium 4。L1データキャッシュを16KBに増量し、L2キャッシュメモリを1MBに増量し、さらなる高クロック化を想定してキャッシュアクセスのレイテンシとパイプライン段数を増加している。
パイプライン段数の増加による性能低下を抑えるため、間接分岐予測ユニット追加及び、トレースキャッシュBTBエントリー数の増量による分岐予測精度の向上、ストア - ロード・フォワーディングの強化、ハードウェアプリフェッチの強化などを行っている。このような改良を行ったものの、パイプラインの段数増加によって、1サイクルあたりの平均処理命令数は低下するため、同じ最大動作周波数のNorthwoodと比べると僅かながら性能は劣る。SSE2の拡張版にあたる「ストリーミングSIMD拡張命令3 (SSE3)」の他、一部製品ではバッファオーバーランを利用した攻撃プログラムの実行を防止する「エグゼキュート・ディスエーブル・ビット(XDビット)」や、AMD64互換の64ビット拡張である「Extended Memory 64bit Technology(EM64T、のちのIntel 64)」といった機能が追加されている。 初期の製品では従来のSocket 478に対応する製品も投入されたが、発売早々に775接点のLGAパッケージを採用するLGA775に移行している。LGA775はSocket Tとも呼ばれている。このTは次世代Pentium 4として開発していたTejas(後述)に由来する。Tejasではより消費電力が増えることから、電源供給ラインのコンタクト数を増加する目的でSocket Tの採用が予定されていたが、Prescottで既に同程度の消費電力になってしまったことに対する措置である。Prescottコアで発生したプロセッサの消費電力と発熱の問題を受けインテルはロードマップを大幅に変更した。以降、従来の動作クロックそのものの向上を重視する戦略から、1サイクルあたりの性能の向上を重視する方向へと開発方針を転換している。その時期を同じくして、製品名称に最高動作クロックを付けることを止め、代わりにプロセッサー・ナンバーを導入している。
対応するインテル チップセットは、
- Intel 955X
- Intel 945シリーズ
- Intel 925Xシリーズ
- Intel 915シリーズ
- Intel 875P
- Intel 865シリーズ
である。
ソケット478版
最高動作周波数(供給クロックx内部逓倍数) コア数 FSB周波数 2次キャッシュメモリ容量 HT対応 XD-bit対応 Intel 64対応 TDP (ステップ=プロセス・ルール改訂番号) 3.40GHz (200MHz x17) 1 800MHz 1MB ○ × × 103W(C0/D0/E0) 89W(G1) 3.20GHz (200MHz x16) ○ / ×(SL88K) × / ○(SL7QB) 103W(C0/SL7PN) 89W(D0/G1/SL88K) 3.00GHz (200MHz x15) ○ / ×(SL88J) × 89W 2.80GHz (200MHz x14) ○ 2.80GHz (133MHz x21) 533MHz × 2.66GHz (133MHz x20) 103W(C0) 89W(E0) 2.40GHz (133MHz x18) × / ○(SL7FY) 89W 2.26GHz (133MHz x17) 512KB ×
- LGA775版
プロセッサ・ナンバ 最高動作周波数(供給クロックx内部逓倍数) コア数 FSB周波数 2次キャッシュ容量 HT対応 XD-bit対応 Intel 64対応 TDP 571 3.80GHz (200MHz x19) 1 800MHz 1MB ○ ○ ○ 115W 570J × 570 × --- ○ 561 3.60GHz (200MHz x18) ○ 560J × 560 × --- ○ 551 3.40GHz (200MHz x17) ○ 84W 550J × 550 × 115W --- ○ 541 3.20GHz (200MHz x16) ○ 84W 540J × 540 × --- ○ 103W 524 3.06GHz (133MHz x23) 533MHz ○ 84W 519K × 519J × 519 × 531 3.00GHz (200MHz x15) 800MHz ○ ○ ○ 530J × 530 × 517 2.93GHz (133MHz x22) 533MHz ○ ○ 516 × 515J × 515 × 521 2.80GHz (200MHz x14) 800MHz ○ ○ ○ 520J × 520 × 511 2.80GHz (133MHz x21) 533MHz × ○ ○ 510J × 510 × 506 2.66GHz (133MHz x20) ○ ○ 505J × 505 ×
Prescott-2M
編集2005年2月20日にリリースされた第四世代のPentium 4。開発を中止したTejas(後述)の代替として、上位製品であったXeonシリーズのうち、2次キャッシュメモリを2MB実装した製品を流用して商品化した。Prescottとの比較では、2次キャッシュメモリを1MBから2MBへ倍増し拡張版 Intel SpeedStep テクノロジ(EIST:Enhanced Intel SpeedStep Technology)に対応させたものと考えてよい。XDビットも実装された。プロセッサー・ナンバーは600番台となる。
また、コンピュータの仮想化技術であるインテル バーチャライゼーション・テクノロジーを実装した製品(プロセッサー・ナンバーは6x2)も発表された。
対応するインテル チップセットは、
- Intel 955X
- Intel 945シリーズ
- Intel 925Xシリーズ
- Intel 915シリーズ
である。
プロセッサ・ナンバ 最高動作周波数(供給クロックx内部逓倍数) コア数 FSB周波数 2次キャッシュメモリ容量 VT対応 HT対応 XD-bit対応 Intel 64対応 ソケット TDP (ステップ=プロセス・ルール改訂番号) 672 3.80GHz (200MHz x19) 1 800MHz 2MB ○ ○ LGA775 115W 670 × 662 3.60GHz (200MHz x18) ○ 115W(SL8QB) 84W(SL8UP) 660 × 115W 650 3.40GHz (200MHz x17) 84W 640 3.20GHz (200MHz x16) 630 3.00GHz (200MHz x15) 620 2.80GHz (200MHz x14)
Tejas(テハスあるいはテジャス)
編集2004年リリースを目標に第四世代のPentium 4としてIDF Spring 2003にてコンセプトが公開[2]され、低消費電力で発熱量を抑えた静かなコンパクト筐体を実現できる[3]とされたが、リーク電流増大による熱問題が解決できず、「デュアルコアの利点が以前より明確になった」として開発中止[4]になった。
Tejasは以下の特徴[5][6]を持ち、Hyper-Threadingの拡張によってTPC(Threads per Cycle)を高める方向であったと考えられている。当時、次世代Hyper-Threadingとしてシングルスレッドのアプリケーションでもヘルパースレッドと呼ばれる投機スレッドを実行し、前もってキャッシュにデータをコピーさせ、パイプラインストールの時間および回数を軽減することで処理性能も向上させる構想[7]が発表されていた。
- 90nm
- 4.4GHz~
- シングルコア
- 拡張版Hyper-Threading
- 大容量キャッシュ
- 8個の新命令 (Tejas New Instructions)
- FSBの高速化
- LGA 775
- TDP 100W
- 213mm2
Tejas開発中止の代替として、市場への新製品投入スパン維持をPrescott-2Mが担い、それをMCMによってデュアルコアとしたPentium Dが投入された。
CedarMill(シダーミル)
編集2006年1月5日にリリースされた第五世代のPentium 4。CedarMillはTejasの製造プロセスルールを微細化したものとして計画されていたが、Tejasが開発中止となったためPrescott-2Mをそのまま65nmプロセスルールに微細化したものに変更された。性能や機能はPrescott-2Mと同等で、プロセッサー・ナンバーも同等性能のPrescott-2Mよりも1大きいものに留まっている。Pentium Dの下位製品として位置付けされた。Prescottと同じく消費電力は多かったが、後に改良によって他社製品と特に変わらない程度まで低下している。その上価格もPrescottより大きく引き下げられており、コストパフォーマンスが高い商品となった。しかし事実上の後継製品であるIntel Core 2への市場移行を速やかに促すべく、大きく宣伝されることは無く終息を待つこととなる。
ステッピング(製造プロセス・ルール改訂)によって消費電力が大きく引き下げられた物は、Prescottに比べて優れたオーバークロック耐性を持つ事が知られている。
対応するインテル チップセットは、
- Intel 955X
- Intel 945シリーズ
- Intel 925Xシリーズ
- Intel 915シリーズ
である。