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ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
NADPHから転送)
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸
識別情報
CAS登録番号 53-57-6 (NADPH), 53-59-8 (NADP+)
PubChem 5884 (NADPH)5885 (NADP+)
KEGG C00005 (NADPH)
C00006 (NADP+)
MeSH NADP
特性
化学式 C21H29N7O17P3
モル質量 744.413
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリンさん、nicotinamide adenine dinucleotide phosphate)とは、光合成経路あるいは解糖系のエントナー-ドウドロフ経路などで用いられている電子伝達体である。化学式:C21H21N7O17P3、分子量:744.4。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドと構造上よく似ており、脱水素酵素補酵素として一般的に機能している。略号であるNADP+(あるいはNADP)として一般的にはよく知られている。酸化型 (NADP+) および還元型 (NADPH) の2つの状態を有し、二電子還元を受けるが中間型(一電子還元型)は存在しない。

かつては、トリホスホピリジンヌクレオチド(TPN)、補酵素II、コエンザイムII、コデヒドロゲナーゼIIなどと呼称されていたが、現在はNADP+に統一されている。別名、ニコチン酸アミドジヌクレオチドリン酸など。

NADP+の構造や諸特性

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NADP+の構造は基本的にはNAD+とほとんど同じであり、ニコチンアミドヌクレオチドおよびアデノシンからなるが、アデノシンのヌクレオチドの2'位にはヒドロキシル基ではなくリン酸基が付属している。また還元様式もNAD+の場合と全く同じである。

ヌクレオチドを含むために、波長260nmの紫外線に吸収極大を示し、NADPHのみ340nmの紫外線もよく吸収する。酵素活性測定法はNAD+の場合と全く同じで、基質として扱うNADP+のみが異なる。なお、NADP+依存性脱水素酵素はNAD+には全く活性を示さず、この場合は別のEC番号が与えられている。

NADP+およびNADPHの生理学的意義

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NADP+およびNADPHはNADP+と同様、生体内の電子伝達に寄与しているが、中でも有名なのが光合成の電子伝達物質としての役割である。また、解糖系のエントナー-ドウドロフ経路や脂肪酸ステロイドの生合成系にも機能している。還元物質NADPHを生産する系は以下の通りである。

光化学系複合体Iによって生じる還元型フェレドキシンから、フェレドキシン-NADP+レダクターゼ (FNR) によってNADP+への電子伝達が行われ、還元物質NADPHが生じる。この反応は電子非循環的光合成のみで発生し、電子循環的光合成の場合は、フェレドキシンからプラストキノンへ電子伝達が行われる。酸素非発生型すなわち光合成細菌型の光合成ではNADP+は使用されず、NAD+が用いられている。

エントナー-ドウドロフ経路とエムデン-マイヤーホフ経路の共通経路においてはNAD+が使用される。また古細菌特有の非リン酸化エムデン-マイヤーホフ経路においては、NADP+が使用されることもあるが、NAD+の場合もあり、どちらともいえない。ただし、以下の反応にはNADP+が使用される。

またメタン菌の酸化型不完全クエン酸回路においてもNADP+が使用される。

NADPHの酸化経路には、光合成の暗反応すなわちカルビン-ベンソン回路がある。

  • 1,3-ビスホスホグリセリン酸 + NADPH → グリセルアルデヒド3リン酸 + NADP+ + Pi

以上の反応はグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素によって触媒される。他にも脂肪酸生合成系で酸化を受ける。

  • アセトアセチルACP + NADPH → βヒドロキシブチリルACP + NADP+
  • クロトニルACP + NADPH → ブチリルACP + NADP+

そのほか、C4型光合成CAM型光合成でも別の経路で使用されている。おもに植物で使用されていると考えられており、動物における生理学的役割はNAD+とは異なっていると考えられている。

グルタチオンによる酸化還元

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詳細はグルタチオンを参照。

  • 酸化型グルタチオン(GSSG) + 還元型(NADPH) → 還元型グルタチオン(GSG) + 酸化型(NADP+)

NADP+の合成

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NADP+の基本骨格はNAD+と同じであるために、NAD+の項を参照。そしてNAD+のヌクレオチドの2'へのリン酸基の付加は以下の反応にて行なわれる。

NADPHの合成

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関連項目

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外部リンク

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