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[寄稿]ガザ地区についての真実を言うタイミング

登録:2024-02-08 06:58 修正:2024-02-08 19:42
スラヴォイ・ジジェク|リュブリャナ大学(スロベニア)、慶煕大学ES教授
昨年11月2日(現地時間)イスラエル軍がガザ地区の国境地域を空爆している/AFP・聯合ニュース

 ほとんどの人にとって、真実とは事実に合致する陳述を意味する。「私は今、セントヘレナ島でナポレオンの邸宅を見ている」という言葉が真実となるためには、その人が本当にそうしていなければならない。一方、ポストモダン哲学者は、真実/非真実は陳述そのものの属性ではないと主張し、それ自体は真実でもなく偽りでもないある言説が、いかなる真理で構成されているのかを歴史的に調べることが重要だと考える。科学は実験的な手続きを通じて、明確に公式化された用語で特定の命題を真理として確立する。宗教は複雑な修辞学的な方式によって、私たちが慈悲深い神的な存在の統制する世界に住んでいるという経験を生成することで、いわゆる「真理」を確立する。

 真実に対する一般的な観点とポストモダンの歴史主義的な相対主義の間には、別の道があるのだろうか。精神分析学がヒントを与えてくれる。精神分析家は、真実(来談者の症状を説明する解釈)を適切な時点で話さなければならない。精神分析家は、自身の話を通じて、来談者が自分に対する抑圧された真実を受け入れることが可能だと確信できるとき、それを言わなければならない。真実を適切でないときに話せば、来談者はその話を自分とは関係ないことだと感じて無視するだろう。

 真実がそれを伝えられる人たちに影響を及ぼすようにするためには、それを言うタイミングが重要だ。ガザ戦争に対する政治的な陳述も明らかにそうだ。昨年10月7日のガザ戦争勃発直後、ハマスの攻撃によって火で焼かれたユダヤ人の遺体とされる写真が大きく報道された。イスラエル政府は1カ月後、その写真はユダヤ人ではなくイスラエル軍によって焼かれたハマス側の人たちの写真であることを認めた。ハマスによる子どもの斬首疑惑も翻った。2つの偽りは「ファクト」として登場して世界的に大きな注目をあびたが、イスラエル政府の是認は大した注目を集めなかった。つまり、イスラエル政府は、全世界的に強い影響を及ぼす瞬間には偽りを言い、自分たちの話がささいな訂正程度として受け入れられることになった時点で真実を言った。

 多くの人たちは、真実を発言することで実際的な影響を及ぼしそうなときは、それを言わない。そうして、どんなふうに言ってもそれが及ぼす効果が無意味で何の違いも生まなくなったとき、真実を自由に語る。イスラエル諜報機関のトップを務めたアミ・アヤロンもそうだった。彼は昨年初めに、「イスラエルはパレスチナ人が希望を持つときだけ安全保障を確保することができる」と述べたが、それは、すでに彼が引退して発言が特に反響を起こさなくなった時点でのことだった。

 先月18日、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は「イスラエル国家は川から海まで全地域を支配する」と約束した。「川から海まで」(ヨルダン川から地中海まで)は、パレスチナ人と左派がパレスチナ解放を要求する際に使うスローガンだ。それまで右派は、このスローガンがユダヤ人に対する虐殺を意味するという偽りの主張を繰り広げて真実をねつ造し、イスラエルはそれまで、パレスチナ人ではなく自分たちが支配権を「川から海まで」拡大しようと考えていることを否定していた。ところが、いまではイスラエル首相がそれを公に示している。政治言説の恥ずべき醜悪さを示す明確な事例だ。

 ネタニヤフは、パレスチナ人を旧約聖書でイスラエル民族を全滅するよう命じた民族である「アマレク」にたとえ、「『アマレク』がしたことを忘れるな」と演説したことがある。宗教的原理主義で民族浄化を正当化したのだ。この虐殺的思考は、一部の遺伝学者がパレスチナ人がアマレク人の子孫だと主張し、一部の考古学者がアマレク人が子どもを犠牲にして拷問するほど残忍だったという証拠を発見したと主張したことで、最も低劣な地点に達した。神よ、偽りを正当化するために真実を探る者たちから我らを救いたまえ。

//ハンギョレ新聞社

スラヴォイ・ジジェク|リュブリャナ大学(スロベニア)、慶煕大学ES教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1127160.html韓国語原文入力:2024-02-04 18:40
訳M.S

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