妻とのセックスレスに悩む男に41歳俳優が適役だといえるワケ。うつろな表情の“お願い”姿が
風間俊介にとってテレビ大阪ドラマ初主演である『それでも俺は、妻としたい』が、毎週土曜日深夜24時から放送されている。
風間は売れないシナリオライターで、妻とのセックスのことばかり考えている夫を演じる。これが、かなり面白い。全編が映画的でもある。
イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、脚本家が描く脚本家のドラマである本作を解説する。
家族生活の拠点であるリビング風景が、ワンショット目としてパッと映される。カメラが引じりを作るのにも苦労するくらいせせこましいように見える。でもこの狭い空間ひとつ映せば、3人家族の生態を把握するには十分である。
夫・柳田豪太(風間俊介)は、なんともいえない表情で食器洗い。息子は、ソファにだらだら寝そべり、大好きなどぶろっくの動画を見ている。食器洗いの音は慎ましく、「大きなイチモツをください」という動画内の音はやたら響く。
妻・柳田チカ(MEGUMI)は、湯船につかり、週刊誌のページを素早くめくっている。『それでも俺は、妻としたい』第1話冒頭場面では、家族関係とそれぞれのキャラクター性が、少ない情報量で的確に描かれている。
簡潔な状況説明がされたあと、売れないシナリオライターである豪太が、ぼそりとつぶやく。「今こうして皿を洗っている俺は、今晩妻とセックスをしたいのだが、そのお願いをどのようにしようかと、今日の夕方からずっと考えている」。息子が見ている動画からさかんに響く「大きなイチモツ」と絶妙にリンクするこのモノローグ。
それをどこか人懐こいが、虚ろな表情を浮かべて、豪太の切実な「お願い」を表現する風間俊介がうまい。あぁ、そうか、この作品は基本的にこの「お願い」だけで押すつもりなのね。と、本作全体のトーンを風間の顔が規定する。
状況説明が的確で簡潔なだけでなく、主人公を演じる俳優の顔ひとつで、視聴者を誘導する丁寧な描き方である。しかもその盤石な語り方は、映画的な設計に基づいている。そりゃそうである。原作、脚本、監督を兼任するのが、足立紳なのである。
少ない情報量で的確に描く冒頭場面
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風間俊介の顔が作品トーンを規定
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