森友学園への国有地売却問題:識者はこうみる
3月12日、学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り、国会が揺れている。自民党の森山裕国会対策委員長は12日午前、同学園への売却を巡り「決裁文書にどうやら書き換えがあったようだという報告を政府から受けた」と明かした。写真は、森友学園の建設現場。大阪府で昨年4月撮影(2018年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
[東京 12日 ロイター] - 学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り、国会が揺れている。自民党の森山裕国会対策委員長は12日午前、同学園への売却を巡り「決裁文書にどうやら書き換えがあったようだという報告を政府から受けた」と明かした。国会内で記者団に語った。
市場関係者の見方は以下の通り。
●個人が円売りに二の足、ドル103円か
<YJFX マーケティング部FXエバンジェリスト 遠藤寿保氏>
報道では何人か政治家らの具体的な氏名も上がり始めており、根深い問題となりそうだ。安倍首相や麻生財務相の辞任までは現時点で見通しづらいが、政局が不安定化していくことは確かで、円が買われやすくなると想定している。
円高の経路は2つ。安倍政権が推し進めてきた円安株高政策が進まなくなることと、政治的混乱を警戒したリスク回避的な動きだ。どちらが表面化するかは不明だが、今後の政府の対応が焦点になることは間違いない。
為替市場では、そうした混乱を海外勢がどう捉えるかが最大の鍵となる。個人投資家はもう少し円安水準でドルを買い込んだ向きが多いようで、現時点ではあまり買い意欲が強くない。
政治不安を背景とする円高見通しが強まれば、ドル買いに二の足を踏む個人が増えるだろうし、逆に買い一辺倒だった以前とは違って、ドル売り/円買いを狙う向きも出てくるだろう。ドルは103円ぐらいまでの下げがあり得るのではないか。
●材料視されず、米「適温」経済が日本株支援
<マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木隆氏>
「森友問題」が相場の悪材料になると見ている投資家は、今のところいない。日本株市場のテーマとなることは、これまでなかったし、先行きも政権が揺らぐような事態にでもならない限り、テーマにはならないだろう。
日本株は最終的に米経済の動向が重要だ。この点、先週末の米雇用統計で、株式市場にとって米経済環境は非常にいいバランスだとわかった。雇用増から景気の強さがうかがえる一方、インフレが上がってこない。米国の利上げペースは速まらない「適温状態」が続いていくとの見方が強まった。
先週には、北朝鮮を巡る地政学リスクの緩和やトランプ政権の関税政策が当初の見込に比べて厳しくならない可能性も出てきていた。市場のマインドが改善してきたことで、出遅れ感のある日本株が買われるのは不思議ではない。先週の日本株は、取引時間中に大幅高になる場面があっても、戻り売りに押されて引け値が振るわなかった。
先行きも日本株の上昇シナリオに変化はない。ただ、これまで今年末と予想していた日経平均3万円への上昇時期は、年初からの3カ月にわたって相場が足踏み状態となったこともあって、来年度末へとその時期は後ずれすることになりそうだ。
●麻生財務相の辞任リスクを意識
<みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト 上野泰也氏>
政治的な問題として根が深い感じだ。マーケットの立場から言えば、アベノミクスの先行き不安につながるかがポイントになる。
書き換え疑惑に関する調査結果がきょうにも報告されることで、財務省の本省の関与が明らかになりそうだ。本省の理財局の責任問題に波及してくるので、どこまで監督責任が問われるかというと、麻生太郎副総理兼財務相の辞任リスクをマーケットは意識せざるを得ない。
細田派と麻生派で支えてきた安倍内閣のため、麻生財務相が辞任するようなことになれば、政治情勢の流動化を意識せざるを得ない。
市場への影響に関しては、海外投資家がアベノミクスの終了リスクを織り込む形で、ある程度売買する可能性がある。
*内容を追加しました。
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