インタビュー: 次期衆院選で民主大惨敗の可能性=鳩山元首相

インタビュー: 次期衆院選で民主大惨敗の可能性=鳩山元首相
8月21日、民主党の鳩山由紀夫元首相は、ロイターのインタビューに応じ、このまま衆院選に突入すれば、民主党は大惨敗を喫するとの見通しを示した。都内で撮影(2012年 ロイター/Yuriko Nakao)
[東京 21日 ロイター] 民主党の鳩山由紀夫元首相は21日、ロイターのインタビューに応じ、このまま衆院選に突入すれば、民主党は大惨敗を喫するとの見通しを示した。
民主党政権に対する国民の期待が「既得権と闘う集団」であったにもかかわらず、民主党が変質し、「既得権側に立場が変わったこと」に最大の理由があると述べ、民主党の「自民党化」を批判した。
この責任の一端は、民主党を立ち上げた自身にもあるとし、「民主党をもう一度既得権と闘う集団に変えることができないか。これが私に残された最後のチャンスとして思っている」と指摘。野田佳彦首相が政治生命をかけるとした消費増税法案に反対し、その是非を問う内閣不信任決議案採決で欠席しながらも、党にとどまる選択をした理由を説明した。
<代表選の結果にかかわらず離党を否定>
鳩山氏は「党のなかにとどまって、民主党をもう一度、結党の原点、政権交代した時の考え方に戻す努力をしたい」と強調。9月21日の代表選に向けて、同様の考えを持ち「次代を担う覚悟をもった同志が出てくることを期待する」と述べた。
野田首相(民主党代表)再選の場合には、鳩山氏の主張が政権運営に反映されない可能性が高まる。その場合の行動について「決めていない」としながらも、「民主的な手続きで、代表が決まり、そこで負けたから、ならば、党を離れるというのは潔い判断ではない。負けたから悔しいから外に飛び出すというのは、なかなか理解が得られない。むしろ、そうではなく、そうであっても、常に民主党の原点を取り戻す戦いを行動で示していくことだと思う」と述べ、代表選の結果にかかわらず、民主党を離党する考えがないことを示唆した。
<遅くとも年内解散、民主・自民の大連立をけん制>
衆院解散・総選挙の時期については「遅くても年内だと思う」とし、10月解散・11月総選挙も「ひとつの可能性としてあるかもしれない」と語った。
ただ、「このまま選挙に突入すれば、大惨敗になる」と見通し、反対する消費増税について「一度成立した法案だが、そのことに対して、次の選挙で何を訴えるかだ」とし、「選挙の時に、民主党として、デフレから脱却していないにもかかわらず、経済が低迷しているにもかかわらず、消費税を上げることはしないと言えるかどうかだ」と述べた。背景には「次の選挙では、(一体改革関連法の)凍結・廃案を訴えていく方向性と、消費増税堅持に分かれる」とみていることがある。
選挙後の政界再編の可能性に関連して「『友愛』は意見が違っても、皆一緒にやっていこうではないかということ。意見が違う人は出ていけばよいという発想が、執行部に相当強く出ている」と現執行部を批判した。さらに、「われわれは自民党と闘う集団を作りたかった。それが、いつのまにか、自民党と一緒になってもいいよという集団に変わってしまったことが最大の問題だ。自民党は政治のなかでの既得権だ。その既得権と闘って政権交代を遂げた民主党がいつのまにか自民党と一緒に歩んでいくということであれば、国民からみれば、誰を信じてよいのかとなる」と、民主・自民の大連立をけん制した。
政権交代して3年。民主党は次の総選挙で再び野党に転落する可能性も指摘される。政権運営のあり方では「意思決定の民主的プロセスを作るのが下手だった」とした。さらに、民主党は、自公政権時代の頻繁な首相交代を批判してきたが、民主党政権でも頻繁な首相交代は変わらず、3年間に3人の首相が入れ替わった。鳩山氏は「根底には、自民党、民主党とも、そのトップでは選挙が戦えないという発想があると思う。ただ、民主党の場合、皆で代表である総理を支えていこうという意識より、党の状況が悪くなった時には、トップを代えて、次は自分にチャンスが近づいてきているとの発想がカルチャーとしてある。(首相を)守るというより、むしろ、次のチャンスを得ようという発想で行動する人が多いこと」にも原因があると総括した。
<日中・日韓関係の緊張、首脳同士の信頼関係を疑問視>
一方、鳩山氏は、首相当時に「東アジア共同体」構想を打ち出し、中国や韓国、アセアンを含む東アジアとの協力関係に腐心した。昨今の日韓関係、日中関係の緊張化について「野田政権になって、東アジア構想自体を口にしなくなった。日米同盟重視で、アジアよりも日米が大事だというイメージがかなり強くなり、アジアが軽視されていくのではないかとの思いが出てきたのではないか。首脳同士の信頼関係が必ずしも結ばれていないことが今回の事態を招いた」と分析した。
(ロイターニュース 吉川裕子、リンダ・シーグ;編集 内田慎一)

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