Location via proxy:   [ UP ]  
[Report a bug]   [Manage cookies]                
ニュース

世界最小のネイティブ4Kプロジェクター「DLA-Z7」「DLA-Z5」を見てきた

JVCケンウッドから、ビクターブランドの家庭用高級プロジェクター「DLA-Z7」「DLA-Z5」が発表された。メーカー希望小売価格は、それぞれ1,100,000円(税込)と880,000円(税込)。

左が「DLA-Z5」、右が「DLA-Z7」。本体はまったく同じ見た目だが、「DLA-Z5」のみ白と黒のカラーバリエーションが用意される

左が「DLA-Z5」、右が「DLA-Z7」。本体はまったく同じ見た目だが、「DLA-Z5」のみ白と黒のカラーバリエーションが用意される

ビクターブランドのプロジェクターとしては、2024年5月に「DLA-V900R」「DLA-V800R」という上位モデルが発表されたばかり。今回発表された2モデルはそれに続く弟機で、どちらも4K解像度のD-ILA(反射型液晶)素子を使った「ネイティブ4K」モデルだ。

「DLA-V900R」「DLA-V800R」の記事でも紹介したことだが、4K解像度の表示素子を使ったプロジェクターはきわめて珍しい。現在20〜30万円前後で購入できる「4Kプロジェクター」はあくまでフルHDかそれに準じた表示素子を使ったモデルであり、時分割で4K表示を実現したモデルであることは知っておいてもよいだろう。

シンプルな自照式リモコンが付属する

シンプルな自照式リモコンが付属する

非常にシンプルな背面端子。映像入力端子はHDMI入力2系統のみ

非常にシンプルな背面端子。映像入力端子はHDMI入力2系統のみ

“ほぼすべて”が新しい! 世界最小の「ネイティブ4K」プロジェクター

それでは、「DLA-Z7」「DLA-Z5」の特徴を見ていこう。外観としては両モデルともまったく同じ。両機ともにレーザー光源を搭載し、4K解像度の表示素子を使った「ネイティブ4K」プロジェクターとしては世界最小を謳う。

「ネイティブ4K」プロジェクターとしては小型な「DLA-Z7」と「DLA-Z5」。2016年発売の「DLA-Z1」と比較すると、体積は半分以下に抑えられている

「ネイティブ4K」プロジェクターとしては小型な「DLA-Z7」と「DLA-Z5」。2016年発売の「DLA-Z1」と比較すると、体積は半分以下に抑えられている

JVC/ビクターのプロジェクターをずっと見ている人からすると新鮮に映るルックスだろう。それもそのはず、外観だけでなく、レンズ、光学ユニット、回路基板を含めた“ほぼすべて”が新しいという新規軸の製品なのだ。とはいっても、別に驚くような新機能があるわけではない。

すべてをいちから考え直すことで明るい映像を実現しつつ、放熱、ファンノイズなどの諸問題をクリアした意欲作ということだ。吸排気の設計も前面吸気、背面排気に変更されていて、求められる背面のクリアランス(確保しておくべき余白)は50mmとのこと。背面端子にHDMIケーブルを接続することを考えれば、事実上考慮しなくてもよいレベルに収められている。

新製品で気になるのは、新しいポイントについて。「DLA-Z7」「DLA-Z5」ではほぼすべてが新しいという

新製品で気になるのは、新しいポイントについて。「DLA-Z7」「DLA-Z5」ではほぼすべてが新しいという

というわけで、「DLA-V900R」「DLA-V800R」に続く製品らしく、真っ暗な部屋で映像作品をじっくりと鑑賞するためのプロジェクターだと考えて間違いない。しっかり新機能はあるが、「DLA-V900R」「DLA-V800R」を踏襲したものだ。

HDR10再生時にほぼ情報のない暗部を沈めてコントラスト感を高める「Deep Black Tone Control」機能のほか、ビクター流の”映え”を演出する映像モード「ビビッド」を搭載した。両機の詳細と新機能については以下に列挙する。

「DLA-Z7」と「DLA-Z5」の主な違いはデバイスの世代

「DLA-Z7」のD-ILA素子は、「DLA-V900R」「DLA-V800R」と同じ最新世代デバイス。「DLA-Z5」のD-ILA素子は一世代前のデバイス。ここが両モデルの大きな違いだ。また、青色レーザーと蛍光体を使った光源「BLU-Escent」システムを採用することは同じだが、明るさは「DLA-Z7」が2,300ルーメンで「DLA-Z5」が2,000ルーメン。レーザーモジュールの数が異なるようだ。さらに、画質に関わる要素としては「DLA-Z5」では色の再現性を高めるためのシネマフィルターが省略されていることが違いとしてあげられる

「DLA-Z7」のD-ILA素子は、「DLA-V900R」「DLA-V800R」と同じ最新世代デバイス。「DLA-Z5」のD-ILA素子は一世代前のデバイス。ここが両モデルの大きな違いだ。また、青色レーザーと蛍光体を使った光源「BLU-Escent」システムを採用することは同じだが、明るさは「DLA-Z7」が2,300ルーメンで「DLA-Z5」が2,000ルーメン。レーザーモジュールの数が異なるようだ。さらに、画質に関わる要素としては「DLA-Z5」では色の再現性を高めるためのシネマフィルターが省略されていることが違いとしてあげられる

11群15枚 直径80mmの新レンズ

レンズの仕様は新製品で共通。1.6倍ズームと垂直プラスマイナス70%、水平プラスマイナス28%のシフト幅を持った電動レンズ。投写距離はやや短焦点になっており、3mで100インチを投写可能だ

レンズの仕様は新製品で共通。1.6倍ズームと垂直プラスマイナス70%、水平プラスマイナス28%のシフト幅を持った電動レンズ。投写距離はやや短焦点になっており、3mで100インチを投写可能だ

HDR10をさらにハイコントラストに再現する「Deep Black Tone Control」

HDR10の再生時、ほぼ情報のない暗部をあえて沈め込むのが「Deep Black Tone Control」。HDR関連の再生機能としては当然に「Frame Adapt HDR」にも対応。シーンやフレームごとにHDR信号のトーンマッピングをリアルタイムで最適化する。このHDR映像への取り組みは、ビクターのプロジェクターならではの大きな特徴であり、安価なプロジェクターでは実現できない部分のひとつだ

HDR10の再生時、ほぼ情報のない暗部をあえて沈め込むのが「Deep Black Tone Control」。HDR関連の再生機能としては当然に「Frame Adapt HDR」にも対応。シーンやフレームごとにHDR信号のトーンマッピングをリアルタイムで最適化する。このHDR映像への取り組みは、ビクターのプロジェクターならではの大きな特徴であり、安価なプロジェクターでは実現できない部分のひとつだ

SDRコンテンツを鮮やかに見せる「ビビッド」モード

これまではビデオ系の素材やアニメ作品などの視聴用には「ナチュラル」という映像モード(画質モード)が推奨されていたが、「ビビッド」モードを新設。色域を広げる方向で、より鮮やかに見せる趣旨だ

これまではビデオ系の素材やアニメ作品などの視聴用には「ナチュラル」という映像モード(画質モード)が推奨されていたが、「ビビッド」モードを新設。色域を広げる方向で、より鮮やかに見せる趣旨だ

「ビビッド」の色温度は6500Kではなく7500K。主に地上デジタル放送でのアニメ作品などを想定したモードだ

「ビビッド」の色温度は6500Kではなく7500K。主に地上デジタル放送でのアニメ作品などを想定したモードだ

なお、本体の大きさやレンズ設計以外で「DLA-V900R」「DLA-V800R」との差という意味では、「8K/e-shift」による8K相当表示に対応しないこと、4K/60pまでの入力に制限されることなどがあげられる。そのほか、細かい点ではあるが1080/60iの入力信号に対応しないこと、倍速の映像補間機能を持たないこと、3D映像の再生ができないことなど、省略されている要素があることには留意したい。

ビクターの「ネイティブ4K」プロジェクター4機種のスペック比較表。「DLA-Z7」と「DLA-Z5」は本体サイズと価格を抑えた弟モデルということになるが、細かい部分での省略も多い。ただし、ファンノイズは1dB抑えられているし、発光効率という意味では「DLA-Z7」が最も高い。このあたりが新製品の強みだ

ビクターの「ネイティブ4K」プロジェクター4機種のスペック比較表。「DLA-Z7」と「DLA-Z5」は本体サイズと価格を抑えた弟モデルということになるが、細かい部分での省略も多い。ただし、ファンノイズは1dB抑えられているし、発光効率という意味では「DLA-Z7」が最も高い。このあたりが新製品の強みだ

「DLA-Z7」も「DLA-Z5」も圧倒的な格調の高さ!

「DLA-Z7」と「DLA-Z5」をスタンフル製100インチ/ゲイン1.0マットスクリーンに投写

「DLA-Z7」と「DLA-Z5」をスタンフル製100インチ/ゲイン1.0マットスクリーンに投写

最後に、短時間ではあるが「DLA-Z7」と「DLA-Z5」を視聴できたので、そのインプレッションをお伝えする。まず再生されたのは「DLA-Z5」。ビクターの「ネイティブ4K」プロジェクター4機種の中では最廉価機ではあるが、強靱なコントラスト感が印象的だ。

Ultra HDブルーレイ「オブリビオン」を「DLA-Z5」単独で見る限り、何の不満もない。暗闇の中に浮かび上がるモーガン・フリーマンが生々しく、おかしな強調感なども感じられない。黒の黒らしさといい、自然な再現性といい、高級プロジェクター特有の格調の高さをしっかりと見せつけてくれた。

Ultra HDブルーレイ「ラ・ラ・ランド」でのグレインノイズは粒子が細かく、とても心地よい。ひと昔前のプロジェクターや有機ELテレビではフィルム撮影由来のグレインノイズが映像処理に干渉してしまうような見え方になってしまうこともあったが、「DLA-Z5」ではそういう違和感を抱かせないのだ。

「DLA-Z7」は、さらにすっきりと細かな情報が浮き上がってくるよう。従来モデル「DLA-V70R」との比較で投写されたのだが、明らかに「DLA-Z7」のほうが細かな情報がすっきりと再現され、より解像感があるとすら感じられた。「DLA-V70R」は「8K/e-shift」で8K相当の表示をしているのに!

スペックだけを見れば「DLA-V70R」は「8K/e-shift」に対応しているし、「15群17枚のオールガラスレンズ」を搭載しているので、画質的に有利なのではないかと思ってしまうところ。しかし、実際に視聴すると、より情報量が豊かに見えたのは「DLA-Z7」なのだ。新製品は「8K/e-shift」非対応なのか……とスペックを見たときにはややがっかりしたことを反省した。

本体の大きさを抑えて設置性を高める、という制約がある中で、「DLA-Z5」も「DLA-Z7」も非常にうまくまとめられた製品なのだ。暗室で映画を真剣に見るためのプロジェクターを探しているならば、どちらも最有力候補になるだろう。設置性の高さを含めて、とても高価という以外はネックになる部分はなさそうに思える。ライバルになりそうな機種が見当たらない、唯一の魅力を持ったプロジェクターだ。

悩むべき点があるとすれば、「DLA-V900R」「DLA-V800R」「DLA-Z7」「DLA-Z5」それぞれの画質差と価格差をどう考えるかだろう。8K入力が必要かどうかなど、機能的な差も含めて、それぞれに楽しく悩んでいただきたい。

柿沼良輔(編集部)
Writer / Editor
柿沼良輔(編集部)
AV専門誌「HiVi」の編集長を経て、カカクコムに入社。近年のAVで重要なのは高度な映像と音によるイマーシブ感(没入感)だと考えて、「4.1.6」スピーカーの自宅サラウンドシステムで日々音楽と映画に没頭している。フロントスピーカーだけはマルチアンプ派。
記事一覧へ
記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
SPECIAL
ページトップへ戻る
×