BANDAI SPIRITSから発売されているアクションフィギュア「S.H.Figuarts」シリーズと言えば、自然な造形と圧倒的な可動性で、マニアの間では話題。なかでも「ボディくん/ボディちゃん」シリーズは、人物デッサンに使える可動フィギュアということで、イラストレーターや漫画家といった多くのプロから支持を集めています。
その「ボディくん/ボディちゃん」シリーズに、待望の新ラインアップが発表されました。今作は「スポーツ」がテーマということで、従来よりもはるかに激しい動きとポーズに対応しているとのウワサ! そこで、まだ発売前ですが特別にデコマスを借り、「実際どれぐらいの激しいポーズが可能なのか?」「スポーツ感のある動きができるのか?」を検証してみました。
ということでお借りしたのが、「S.H.Figuarts ボディくん -スポーツ- Edition DX SET (Gray Color Ver.)」および、同「ボディちゃん -スポーツ- Edition DX SET (Gray Color Ver.)」です(以下、「スポーツEd」)。
デッサン用の素体フィギュアということで、見た目にはマネキンぽい印象しかないんですが……これがまぁ、実際にいじってみると、めちゃくちゃ動く!
2023年6月発売予定の「S.H.Figuarts ボディくん -スポーツ- Edition DX SET (Gray Color Ver.)」(写真左)および「「S.H.Figuarts ボディちゃん -スポーツ- Edition DX SET (Gray Color Ver.)」(写真右)
そもそも「S.H.Figuarts」シリーズ自体が「きちんと骨格から造形されているフィギュア」ということで、どんなポーズをさせても、割と自然な雰囲気になるのは知っていました。
しかし、それはそれとして、「こういうポーズを取らせたらかっこいいかな?」と考えながらカチャカチャいじったのが、違和感なく「ビシッ」と決まったときの気持ちよさと来たら、もう。
新しい多段構成の腹筋により、本当に人間っぽい動きに!
従来のデッサン用フィギュアでは難易度の高かった「腰のねじれ」なども違和感なく決まります
「ビシッ」とポーズが決まる最大の要因は、この「スポーツEd」から大幅にアップした関節可動域の広さ。特に腹筋周りと股関節に追加された可動域の効果は絶大で、前モデル「S.H.Figuarts ボディくん/ボディちゃん -ワイヤーフレーム-」(以下、「ワイヤーフレーム」。現在品切れ)と比較してみると、その違いは一目瞭然です。
前モデル「ボディくん -ワイヤーフレーム-」(写真左)との比較。一見すると、同じぐらい自由にポーズが付けられそうですが……?
試しにブリッジさせてみたら、違いは歴然! シンプルに「ひゃー、こんな進化してんの!?」と驚きました
腹筋周りの分割の差がきいています
足の付け根にも新たに1軸増えており、お尻から股関節にかけての可動域が大幅アップしているんです
ぶっちゃけ、1万円以下のお値段でここまで自然な「体育座り」のポーズができるフィギュアって、そうそうないのではと思います。ポージングの自由度はケタ違いといっても過言ではありません。
「スポーツEd」(写真右)は、体育座りをしたうえに、さらに丸まった姿勢にすることが可能。「ワイヤーフレーム」(写真左)も同じ姿勢を取らせてみようとしたものの、写真のとおりの結果でした
さらにうれしいのが、「スポーツEd」ならではの多彩な交換用手首&スポーツギアが付属するところ。付属品は「ボディくん」と「ボディちゃん」でそれぞれ内容が異なります。
「S.H.Figuarts ボディくん -スポーツ- Edition DX SET (Gray Color Ver.)」のセット内容は、本体(全高約150mm)、交換用手首(左6種、右8種)、テニスラケット、テニスボール、バスケットボール、サッカーボール、バット、野球ボール、グローブ、専用台座一式、収納ボックス、手首ホルダー、ミニブック
「S.H.Figuarts ボディちゃん -スポーツ- Edition DX SET (Gray Color Ver.)」のセット内容は、本体(全高約135mm)、交換用手首(左右各8種)、レシーブ用手首、バレーボール、バドミントンラケット、シャトル、卓球ラケット、卓球ボール、フィギュアスケート靴、専用台座一式、収納ボックス、手首ホルダー、ミニブック
交換用手首だけでもこのバリエーション。見てるだけでもテンションが上がります
個人的にハマッたのが、「ボディちゃん スポーツEd」に付属しているフィギュアスケート靴。これを本来の足首から付け替えることで、可動域の広大さをフルに体感できるフィギュアスケートポーズが自由自在に付けられます。
専用台座を組み合わせれば、ビールマンスピンだろうが、ジャンプ直前の予備動作のタメ感だろうが、なんだって美しく決まります。うわー、正直、これはエグいぐらい楽しい……。
スポーツの躍動感ある動きが自由自在。付属の専用台座を使うと、表現の幅が広がります
イラストや漫画を描くにあたって、デッサン用フィギュアを使うケースと言えば、大体が「市販のポーズ集(さまざまな人物のポーズ写真を集めた資料書)でも見つからないポーズ」もしくは「ハチャメチャに描くのが難しいポーズ」を描くときでしょう。
権利者のいる写真やイラストを元にして描くと、どうしても著作権上の問題が発生しますので、参照先のオリジナリティーは常に気を配っておきたいところ。ですが、ポーズフィギュアを元にして描けば、まずそういった問題は起き得ないわけです。
そういったことも含めて、「実際、ポーズフィギュアとしての実力は?」と気になっている人も多いのでは。そこで改めて、プロの目線で実用性をチェックしてみましょう。ということで、少女漫画家の栗原まもる氏(筆者の妻です)が実際に触って試してみました。
少女漫画家の栗原まもる氏が「スポーツEd」が実際に触って、使い心地をチェック。まずはポージングからです
今のペイントソフトには3Dデッサン人形機能も搭載されてるんですが、やっぱり自分の手で直感的にポーズをつけられたほうがラクかも
描きたいポーズが決まったら、次は撮影です。撮影時には角度や方向、できれば照明の向きまで考えておくと、あとからラクなはず。基本的にはスマートフォンでいろいろと試しながら、パシャパシャ撮っちゃうのが手早いです。
描きたい構図を念頭に置いて、写真を撮影します
撮影データをペイントソフトに取り込んで、トレスしていきます(写真では「CLIP STUDIO PAINT」を使用)
ポーズが破綻なくナチュラルに決まるので、あとはただ写真をトレスするだけで絵になる感じ。かなりいいね
そして、できあがったのがこちら。想像だけで描くと「このポーズ、本当にこれで合ってんのかな?」と不安になりそうですが、キチンと人間の動きがトレスできるフィギュアを使えば、悩むこともなさそう。
完成!
昔の木製のポーズ人形から比べたら、とんでもない進化ですよね……。とは言え、リアルな動きができるハイグレードなフィギュアはまだかなり高いし。1万円以下でこのクオリティーなら不満はまったくないですよ
思うがままにポーズを付けて遊ぶだけでも楽しく、十分モトが取れそうですが、プロ用ツールとしても十分に使えるクオリティーなのは確実のよう。描くことを趣味にしている人はもちろん、イラストレーターや漫画家などプロとして活動されている人にも、ぜひ試してみてほしいところです。
●イラスト/栗原まもる