趣味でラーメンを作っているのですが、自作ラーメン仲間のマダラさんという方から、液体も詰められるフードシーラー(袋内部の空気を抜いて圧着する便利な道具)、「フードシールド 業務用真空パック器 JP290」という商品を熱くすすめられました。
家庭で液体が真空パックできるということは、自家製ラーメンセットを業者っぽくパッキングして送れるんですよ。これぞ自作ラーメン愛好家の夢ですよね。みんなで集まってラーメンを作れない今、せめて宅配ラーメン屋さんごっこを極めようと購入したレポートをお届けします。
実はすでに真空パックにする家庭用の機械なら持っているのですが(しかも2台目)、片面が凹凸加工された専用袋(これが結構高い)が必要だったり、うまく圧着できないことがあったり、水分のあるものは難しかったりで、残念ながら出番は限られていました。
かといってフリーザーバッグに詰めて冷凍しただけだと、どうしても空気が入ってしまったり、いつのまにかふくらんで袋内に霜が降りていたり。もちろん私が不器用だからであり、いつまでも冷凍していないでさっさと食べろという話なのですが。
これまで使っていた真空パックの機械。特殊な凹凸加工の専用袋がないと脱気ができません
短期間の冷蔵や冷凍ならフリーザーバッグでもいいのですが、長期保存すると劣化してしまいます
そこで教えていただいた「JP290」を調べると、「専用袋がいらない」「汁物対応」「高耐久熱線(圧着するための熱線が幅広で丈夫)」と、私が望んでいたことがすべてかなう理想の仕様です。
そんなうまい話があるのだろうかと友人に確認すると、「とりあえずこのYouTubeを見て!」とURLが送られてきました。そこにはメーカーの社長と思われる方が実演している動画がズラリ!
これが話で聞く以上に魅力を伝えてくるんですよ。このチャンネルを食い入るように見まくり、オープニングで必ず言う「はい、こんにちは。ジェネティックのミズグチです」を私も一緒になって言うようになった頃、「使いこなしたら便利そう」というよりも「使うことが楽しそう」という気持ちで注文していたのです。
業務用にも使える本格的な機械とはいえ、値段はこれまで使っていた家庭用の倍くらいです。
友人から「液体をやるなら大容量集水カップ搭載が便利」とのアドバイスがあったので、ベーシック版ではなく容量が大きいスタンダード版をセレクト
本体後ろ側の透明ケースが集水カップで、ここが大容量なのがスタンダード版です
さっそく電源を入れると、なにやら本体中央からカメレオンの舌みたいなパーツがニュイーンと出てきました。このノズルから空気を抜く構造のようです。
ほら、かっこいい
これまで所有していた真空パックにする機械にはなかったノズル
この「JP290」で推奨されている袋は、業務用真空パック用ナイロンポリ袋とアルミ蒸着袋。アルミだと中身が見えないので、今回はナイロンポリ袋を用意します。
メーカー推奨は福助工業の「ナイロンポリ」やクリロン化成の「彊美人(きょうびじん)」という商品で、例のYouTubeによると、強度なら福助工業、透明度なら彊美人とのこと。将来的には自作の干物などもパックしたい私としては、強度優先で福助工業のナイロンポリ袋をセレクト。
対応サイズは幅26cmまでなので、大物用に26×38cmを100枚、小物用に12×20cmを100枚、そして商品っぽさがアップするスタンドチャックタイプの15×26cmを50枚購入しました。1枚当たりの単価は、それぞれ22円、6円、32円くらいです。
あと5種類くらい揃えたいですね
これらの袋は「JP290」が届く前に、あまり深く調べず注文したのですが、福助工業のナイロンポリには規格がいくつもあり、「新Lタイプ」は耐熱温度100℃で湯煎、ボイル殺菌ができるもので、スタンドチャックの「Cタイプ」は湯煎不可でした。
「JP290」と一緒に送られてきたメーカーからのお知らせには、福助工業なら「TLタイプ」がおすすめとのこと。この袋選びはなかなか奥の深い世界のようで、あれもこれもと欲しくなります。
ちなみに完全な真空や強度を求めなければ、業務用ではない一般的なポリ袋なども使えるようで、メーカーがみずからYouTubeでさまざまな検証をしていて頼もしい限りです。こちらも後ほど試してみましょう。
それでは本体とナイロンポリ袋が揃ったところで、実際に真空パックにしてみましょう。
パックするのは特売価格の100g150円で購入した、アメリカ産ステーキ用牛肉です。
安かったので2パック買いました。ひとつはすぐに食べて、残りを冷凍してみましょう
本体はボタン4つだけのシンプル設計。「短縮」「延長」のボタンは脱気時間の話ではなく、袋を圧着する時間を調節するものです。
厚い袋を使う場合は圧着時間を長くします。どれくらいがベストなのかはトライアンドエラーで探りましょう
デフォルトが目盛り4つ(4.5秒)で、袋の厚みは70μを想定しており、それよりも厚みがある場合は長く、薄い場合は短くします。袋の厚さを調べたところ、新Lタイプは60μ、Cタイプは135μ、そしてメーカー推奨のTLタイプは70μでした。
まず使うのは60μの新Lタイプなので、目盛りはデフォルトの4から3に調節してみました。4のままが正解のような気もしますが、せっかくなのでいじってみたい気持ち、わかりますよね。
袋に肉を入れたらノズルを差し込み、本体に押し付ける感じで袋の位置を調整します。
無事に脱気できるのか、胸がドキドキ、心がダッキダッキしてきました。私は何を言っているのでしょう
このノズルが出た状態のまま、上蓋を下ろして左右を押し込んでガチンガチンとロックします。かなり手ごたえは硬いです。
そして脱気する際は、「ノズル付近の袋をダブらせてください」と注意書きがあったので、空気の通り道ができるようにします。
ダブらせるというのがちょっとわからないのですが、左右からつまんで袋にシワを作る感じでいいですかね
空気が抜けるシワができれば大丈夫かな
それでははりきって運転スタート!
「開始・停止」ボタンを押すと、すぐに脱気が始まりました。
脱気スタート!
おおお、数秒で肉はぺちゃんこになり、脱気が完了しました。さすが最大-80kPa(まったくピンとこない数値ですが)の真空率ですね。
終了させるときは隣の「ノズル出入」ボタンを押せば脱気が終わり、自動で圧着されます。
ついつい「開始・停止」ボタンをまた押してしまいそうになりますが、それだとノズルは入ったまま脱気が停止するだけで、圧着がスタートしてくれません。
赤い目盛りが減っていき圧着が終わると、ピーピーと終了を知らせるブザーが鳴りました。
ちゃんと圧着されたでしょうか
ロックを外して取り出してみると、まさに業務用という感じに肉が真空パックされています。やりました、成功です!
しっかり真空パックできました
これまで使っていた家庭用の機械よりも、なんというか「手応え」がいいですね。気のせいや思い込みかもしれませんが、使っていて気持ちがいいんですよ。
今回はあえて2枚の肉を同時にパックしてみましたが、その隙間もしっかりと空気が抜けています。圧着具合もバッチリ。これは楽しい!
圧着部分は5mmと厚めなので、とても信頼感があります
この肉を冷凍庫で数日間冷凍保存してから、パックのまま氷水に漬けて解凍して(魚屋さんに聞いた冷凍マグロの解凍法)ステーキを焼いてみたところ、買ってきてすぐとほぼ変わらない仕上がりとなりました。
冷凍した肉。もちろん空気は入ってきていません
解凍してもドリップはほとんど出ませんでした
このように冷凍保存が可能なら、特売で安かったのでもっと買えばよかったです
さあここからが本番です。「JP290」の基本的な使い方を学んだところで、憧れの宅配ラーメン屋さんごっこを始めましょうか。
とりあえず寸胴で豚骨と豚肉を煮込みます
まずは麺の生地を作るのに、メーカー推奨のナイロンポリ袋ではなく、高密度ポリエチレン袋の「アイラップ」を使ってみましょう。厚さはわずか9μですが、大丈夫でしょうか。
これが使えるとランニングコストは大幅ダウン
水と小麦粉を合わせたものを袋に入れて脱気することで、水分を粉の隅々までしっかりとなじませます。圧着時間はもっと短くてよかったですね
強度不足で穴が空くかと思いましたが、意外と大丈夫でした。圧着もできています。
伸縮性があるので意外と破れないですね
もちろん厚みのあるナイロンポリ袋のような安心感はないので代用品とはなりませんが、今回のように小さな穴が空いたとしても別に困らないという条件であれば(そんな機会はあまりないとは思いますが)、なんとか使えそうです。
続いて冷蔵保存用の安いストックバッグ、ポリエチレン製で厚みが40μのものを同じように試してみたところ、こちらも大丈夫でした。
袋に厚みがある分、やっぱり安心感がありますね。
すごい吸引力ですね
脱気して寝かせた生地を使って、中華麺を頑張って作ります
はい、できました
できあがった自家製麺は、家にあったワタナベ工業の「お料理パック」という高密度ポリエチレンの袋に入れて、つぶれないようにあまり脱気をせずに封印してみました。このように空気の抜き加減を自由にコントロールできるのが便利なポイントです。
ただ、麺のように液漏れの心配がなく、数日中に食べるので空気を抜く必要もあまりなく、冷凍するわけでもなければ、安いポリ袋に入れてキュッと縛るのと変わらないかも。しかし、贈答用であればちゃんとパッキングしたくなりますね。なんでも適材適所ということで。
25μなのでアイラップよりは厚い高密度ポリエチレン袋
ほどほどの脱気でストップしました。売り物の麺っぽい!
自宅用であれば、普通に袋を縛るだけでいいですね
ラーメンに必要なのは麺だけではありません。具やスープもどんどん真空パックにしていきましょう。
これまでもラーメンを友人に送る機会はあったものの、具に関してはパッキングが面倒なので、受け手側に用意してもらうことが多かったのですが、「JP290」があればその問題が一気に解決。ふるさと納税の返礼品にあってもおかしくないクオリティで、一式送ることができるようになりました。
煮込んだ豚肉を熱いまま袋に入れて、醤油ダレを少々入れてスタンドチャックの袋に入れて脱気してみます
空気はしっかり抜けましたが、せっかくの高いスタンドパックなのに、微妙なサイズの固形物を入れると立たなくなりますね
まだ熱い状態なので、このまま水で冷やしてから冷蔵しました
後日作ったキノコの煮物は、しっかりとスタンドしてくれました。意外と容量が大きいので、もうひと回り小さい袋も買わなくては
肉をスライスしてから小さい袋に入れると、商品っぽさがすごいです
湯煎対応の袋なら、このまま温めてラーメンにトッピングが可能
細かい具を袋に入れるには、穴の大きい漏斗が便利でした
液体もパッキングできるので、タレを小袋に入れることもできちゃいます。脱気は一瞬なのでストップするタイミングがちょっと難しいですが
そうこうしているうち濃厚な豚骨スープが仕上がりました
これを熱いままパッキングして、水につけて冷やしましょう。本体を少し高い位置にセットして、袋を立てかけるようにすると使いやすいようです。スープを入れるときに袋を立てるスタンドがないとひっくり返しそうになるなど、オペレーションの上達が今後の課題ですね
ということで、スープ、麺、タレ、煮豚、辛子高菜、キクラゲをパッキングした、自家製の豚骨ラーメンセットができあがりました。これをよく冷やしてから、万が一の液漏れに備えて念のため厚手のビニール袋に入れて、段ボールに梱包してクール便で送れば、宅配ラーメン屋さんごっこのミッション完了です。
紅ショウガとニンニクは入れ忘れたので、鮮度が大事なネギと合わせて用意してもらいましょう。
きれいに真空パックできて大満足です
そして友人から後日送っていただいた画像がこちら! 完璧!
もちろん無菌ルームとかではなく一般家庭の台所で作ったものだし、パッキングしてからボイル殺菌をしたわけではないので(一応可能ですけど)、市販のラーメンほど、日持ちはしないでしょう。それでも大満足のごっこ遊びとなりました。
このように私はあくまで趣味として使いますが、コロナ禍でテイクアウトや宅配を始めた飲食店にとっても、少ない初期投資で使える道具なのかもしれません。そもそもが業務用の機械なので当たり前の話ですね。
このラーメンセットを担当編集者のしえるさんにも送り、そのレポートをいただきました。
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玉置さんの手作りラーメンといえば、とある界隈では非常に有名で、いつかは食べてみたいと思っていました。そしてこの企画が立ったとき、それとなく“食べたいな〜感”を出してみたら、「よろしければしえるさんにもお送りします」と言ってもらえたのです。やったー!
届きました。え? これ、お取り寄せセット?
見た目は完全に売り物です。ふるさと納税で頼んだカニやハンバーグと同じような真空パックになっていて、とても個人が作ったものとは思えません。
だって、開け口やチャックまで付いているんですよ?
この時点でまったく匂いが漏れていないのも“商品感”があります。
ではさっそく、玉置さんに教えてもらった作り方に沿って、スープを温め、麺をゆで、チャーシューを切ります。ラーメンって、「タレ」とスープを混ぜて作るんですね、初めて知りました。ちなみに、湯煎対応なのでスープを袋のままお湯につけてもびくともしませんでしたよ。
完成! 麺類は個人的に“具なし派”なので、シンプルに仕上げました
いざ実食……やはりこれは、売り物なのでは? お店で食べるようなどっしりとした豚骨の味がします。チャーシューもしっとり♪ 麺も、こういう生タイプの麺あるよね、というもちもち感。麺だけをすすったり、チャーシューと麺を一緒に食べたり、高菜と麺を一緒に食べたり、全部一緒に食べたり、スープだけを飲んだり。存分に楽しみました。
真空パックの袋を開けるときってちょっとわくわくするんですが、手作り品だと思うと一層楽しいですね。
在宅勤務のごほうびランチとなりました。ごちそうさまでした!
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ここまでは楽しい話ばかりでしたが、最後にちょっと気が重いメンテナンスのお知らせです。液体を扱えるということは、その吸い込んだ部分を掃除する必要があるんですよね。この後始末をやらないと故障の原因になるので、しっかりやらないといけません。
「JP290」は、空気と一緒に吸った液体が集水カップにたまる仕組みです。入り口であるノズルから出口となるカップまでをていねいに掃除していきましょう。
ラーメンのタレや油がたまった集水カップ
まずは付属のヘラでノズル内を掃除します
固まった油などを取り除きましょう
続いて50℃に温めたお湯を専用ノズルで吸わせます。汚れがひどそうな場合は、お湯に食洗器用洗剤などを溶かしておくといいようです
吸わせたお湯が集水カップにたまりました
この集水カップは左右に分かれているので、片側がいっぱいになったところでストップさせるとあふれさせる心配がありません。あふれるとどうなるかは怖いので試してません
これで終わりかと思いきや、さらにもう1か所掃除するところがあります。
ノズルを収納してから本体を裏返します
フィルターボックスを開けて掃除をします。慣れるまでは少し面倒に感じるかも
このように使った後の掃除がまあまあ大変なので、液体系はなるべくやらないのが正解かもしれません。乾いたものをしっかりパッキングできるだけでも十分便利です。個人的にはこの後処理の面倒くささを含めて、「JP290」の存在が愛おしく感じてきましたが。
「少し煮物が余ったからパックしよう」みたいなノリで気軽には使えませんが、「気合いを入れてラーメンを20人前作るぞ!」といったタイミングなら心強い味方になってくれそうです。こうなると次は超低温大型冷凍庫が欲しくなりますね。私はどこに向かっているのでしょうか。
ちょっと特殊な使い方の紹介となりましたが、釣りに行って大漁だったとき、畑で旬の野菜が取れすぎたとき、燻製や干し肉を大量に作りたくなったとき、25kgの業務用小麦粉を共同購入して小分けするときなど、利用したいシーンはたくさんあるのでどんどん活用していきたいと思います!