2024年11月にニトリが発売した“10万円を切るドラム式洗濯乾燥機”は、その驚異的な価格が注目を集めました。しかし、価格が安くても、洗浄・乾燥性能や搭載されている機能がいまいちでは価値がありません。そこで、ニトリの開発拠点がある大阪にて、気になる実機をチェックしてきました。
ラインアップは、洗濯・脱水容量10kg/乾燥容量5kgの「ND100KL1」(公式オンラインストア価格は99,900円/税込)と、洗濯・脱水容量12kg/乾燥容量6kgの「ND120KL1」(公式オンラインストア価格は129,900円/税込)の2モデル。どちらもホワイトとブラックの2色を用意しています。
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一般的に、価格を抑えるためには機能が削られます。「ND100KL1/ND120KL1」の場合、乾燥方式にヒートポンプ式ではなくヒーター式を採用したのが大きそう。ヒートポンプ式のほうが断然省エネ性能は高いですが、本体価格は10万円ほど高くなります。とはいえ、ヒーター式でもドラム式洗濯乾燥機は高価。「ND100KL1/ND120KL1」と洗濯・脱水容量が同じ他メーカー製品の発売当初の価格は20万円前後〜25万円以上が大半なので、10万円以下の「ND100KL1」はもちろん、12万円台の「ND120KL1」は圧倒的に安いと言えるでしょう。
ヒートポンプ式よりも高温で乾かすため、洗濯物がカラッと仕上がります。10kgモデル「ND100KL1」で乾燥させたタオルをチェックしてみると、パイルが立ってフワッと仕上がっていました
なお、ヒーター式には、乾燥に使った熱風をそのまま排出する「排気タイプ」と、槽内の熱風を水道水で冷やしてから排出するとともに、冷やした際に結露した水を排出口から出す「水冷除湿タイプ」という排出方法があります。「ND100KL1/ND120KL1」は水冷除湿タイプなので、洗濯機を設置してある部屋が蒸し暑くなりにくいでしょう。
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また、最近はミドルクラスの洗濯機にも搭載されている液体洗剤・柔軟剤自動投入機能も非搭載。これに関してはやや残念に感じましたが、価格を考えれば妥当な仕様とも言えます。
洗剤や柔軟剤は洗濯のたびに投入する一般的なタイプ
操作部のインターフェイスもシンプル。エントリーモデルに採用されていることの多い、タッチボタン式です。
操作もシンプルでわかりやすい印象
9〜12万円台で購入できるドラム式洗濯乾燥機で、これが搭載されているのはすごい! と思った機能を紹介します。
日本のドラム式洗濯乾燥機のほとんどに「乾燥フィルター」が搭載されており、乾燥運転を使うたびに取り外して掃除する必要があります。「ND100KL1/ND120KL1」は洗濯するたびに洗い流す「乾燥フィルター自動洗浄」機能により、乾燥フィルターのお手入れの手間ゼロを実現しました。
通常のドラム式洗濯乾燥機は本体天面に乾燥フィルターの取出口がありますが、「ND100KL1/ND120KL1」は内部で自動洗浄する機能を搭載しているため、フラットな状態。天面に脱衣カゴなどを置くことも可能です
さらに、多くのプレミアムモデルに採用されている「ドアパッキンの自動洗浄」機能も搭載。扉を開けた場所にあるシリコン製のパッキン溝に溜まるホコリなどを洗濯のたびに自動的に水で洗い流します。
1回洗濯した後のドアパッキンの水を確認したところ、自動洗浄機能のおかげか、なかなかきれいでした
洗い流された糸くずやホコリなどは、日本の洗濯機の場合、メッシュやクシ型の「糸くずフィルター」に溜まります。いっぽう、「ND100KL1/ND120KL1」には糸くずフィルターがありません。通常、糸くずフィルターのある部分には「排水フィルター」というパーツが配置されていますが、糸くずや髪の毛などのゴミをキャッチする形状にはなっておらず、基本的に糸くずなどは排水にそのまま流れます。
本体足元に排水フィルターを配置。手前にある黒いホースは排水フィルターを取り外す前に水抜きするためのものです
排水フィルターは一般的な糸くずフィルターとはまったく異なる形状。ゴミをキャッチする構造にはなっていません
日本ではなじみのない構造ですが、欧米などでは「糸くずは基本的にキャッチしない」仕様が大多数。週1回程度取り外してお手入れする点は同じですが、「ND100KL1/ND120KL1」の排水フィルターは構造がシンプルなので、簡単にお手入れできます。こうした手入れの楽さをメリットと考えるか、排水管への影響を気にするか、考え方によってこの仕様を長所と感じるか短所と感じるかは分かれるかもしれません。
人気の高い「温水洗浄」機能も搭載されています。水温の設定は常温/10/20/30/40/60度で選択可能。冬場の冷たすぎる水を少し温めたいときは「10度」または「20度」、皮脂汚れが気になる衣類は「40度」、熱湯除菌したい場合は「60度」というように、衣類や汚れの種類、目的にあわせて使い分けられます。
カレー、ケチャップ、コーヒーを付けて40度の温水洗浄で洗ったワイシャツ。油汚れや色素が沈着しやすい汚れがしっかり落ちています
温水洗浄は主に乾燥機能を搭載した洗濯機に搭載されていますが、すべてのドラム式洗濯乾燥機に搭載されている機能ではありません。また、プレミアムモデルでも35度前後の温水洗浄ににしか対応していないものもあるので、60度の水温で洗えるのは大きな魅力でしょう。
一般的なドラム式洗濯乾燥機と比較してコンパクトなサイズにこだわったのもポイント。本体サイズは10kgモデル「ND100KL1」が600(幅)×595(奥行)×857(高さ)mm、12kgモデル「ND120KL1」が600(幅)×664(奥行)×857(高さ)mmです。高さが大きく抑えられているので、古い家やマンションに多い「低位置の水栓」でも壁ピッタリに設置できる可能性が高いでしょう。
高機能なドラム式洗濯乾燥機は本体の高さが1mを超えることも珍しくないですが、「ND100KL1/ND120KL1」は86cm弱とかなり背が低め。写真を見ても、蛇口までの位置に余裕があるのがわかります
自宅で使ったわけではないため、使い勝手や実際のメンテナンス性、耐久性などはわかりません。とはいえ、実機で数回洗濯した印象としては、価格以上のクオリティだと感じました。企画・開発から製造、販売、流通まですべて自社でまかない、中間コストを削減できるニトリだからこそ実現したクオリティとコストパフォーマンスであると思います。
花粉や黄砂対策に家事負担の軽減など理由はさまざまですが、乾燥機能付きの洗濯機が欲しい人は多いでしょう。縦型洗濯乾燥機という選択肢もありますが、構造上、乾燥効率が悪く、そのうえ洗濯物がシワになりやすく、乾燥時間が長いため電気代がかかります。それでも、ドラム式洗濯乾燥機は高くて手が出ない……。そんな「洗濯から乾燥まで洗濯機に任せたいけれど、ドラム式洗濯乾燥機は価格で諦めていた」層にとって、ニトリ「ND100KL1/ND120KL1」は救世主になるかもしれません。