序盤から勢いのいい戦闘が始まり、敵も味方も関係なく全員が血祭りになるブラッディな現代バトルアクション。戦いに終わりが見えない極寒のディストピアで、人ならざる少年少女たちが敵を蹂躙する物語。
敵を嬲り、潰し、殺し尽くす“力強く”も“ヴァイオレンス”な戦闘シーンは、疾走感のある文章で描写され、息吐く暇さえ与えません。合間に挟まれる人物の心理描写が、読み手に更なる熱を加えます。
非日常という世界で戦えば、やはり目の当たりにする、自分たちの同じ者達の残酷な末路にも、作者の文章力が加わり悲壮感が増しています。
それでもそうした非日常の中、“ただの人間”として過ごす彼らの日常には、和やかな雰囲気が流れ、戦いから離れた彼らの安堵感が読み手にまで伝わってくるようです。
ただ、難しい漢字や読みにくい漢字にルビを振るといいと思います。特に登場人物の名前などは、各話ごとに最初はルビを振った方が読み手に優しいのではないかと……(生意気すいません)。
早い更新再開を祈っています(´・ω・`)
氷河期が訪れ、人類の天敵が出現した未来の話。
神の手によって、食物連鎖のピラミッドのおいて、人類より上に置かれたと思しきフィンブルに対して、人類が切った対抗のカードは、フィンブル因子を植え付けた子供たちで構成されたフィンブル殲滅部隊「ワイルドハント」。
獣性を与えられ、大人たちに反抗しつつも、運命に抗いきれず化け物を追って、雪原を走る幼い獣たちの物語。
ラノベに逃げることなく、かといってSFに踏み込むこともなく、あやうい境界の上を、少年少女たちのドラマで紡いでゆくポジショニングが見事。
また本作の最大の魅力は、全体に流れる雰囲気。
夜の暗さ、冬の寒さ。静かに流れる音楽が耳に浸透してくるように、悲しみや怒りが皮膚感から伝わってくる。
文明の灯が消え、怪物が跳梁跋扈する極寒の地、北海道。
怪物を狩るのは、同じように異形の力を身に宿した少年少女たちである。
主人公たちもそんな怪物狩りのチーム『ワイルドハント』として、北の大地を征く。
未来への道標もない日々を、生き残るために生きる。
だからこそ、少年少女の何気ないやり取りと日々が切り取られ、
この世界の淵で輝くのを感じさせてくれる。
それは戦いの中のチームワークであったり、日々の何気ないやり取りであったり。
第一話で一つのミッションを終え、次に彼らが向かう先、たどり着くは、はたしてどこか……。
滅茶苦茶に面白かったので、多くの人の目に留まってくれると嬉しいです。以下、その理由。
・アクションが格好いい
半人半怪というモチーフ自体に目新しさはありませんが、獣性を秘めているという設定を十二分に活用したアクションシーンは、無駄な動きがないことも相まって、非常にスタイリッシュで格好がいいです。武器の取り回しもお気に入り。チェーンソーは、実に趣味に振り切っていて好みです。
・世界観が重く格好いい
氷河期後の荒廃しつつある日本が舞台ということで、全体的に閉塞感があり、読み味は重たいです。しかし、地の文に過不足がなく軽快なので、もたれることはなく、すいすいと重厚な世界観を楽しめます。
・キャラクターが格好いい
四人の主人公の価値観や考え方がぶれず、それぞれが独立したキャラクターとして生きています。また、台詞一つ一つもシャープかつ独特の言い回しが決まっています。何よりも、主人公たちの心情描写に大袈裟な演出などの押し付けがましいものがなく、スッと入ってきます。だからこそ、悩みや悲しみに素直に共感できるし、応援したくなります。
・煙草の扱いが格好いい
未成年者の喫煙を促進させそうなほど、煙草の扱いが格好いいです。泣いた。
・総括すると格好いい
とにかく、格好よさに満ち溢れた作品です。痺れるような格好よさを味わいたい方は、是非。
戦いの日々に先は見えず、帰る所も覚束ない。
廃墟と化した凍てつく大地の情景は、主人公らワイルドハントが置かれた立場に重なって見えます。
人類の盾となって戦う身でありながら、社会においてはむしろ居場所がなく、怪物との殺し合いは命と精神を磨り減らす。
……読者としては、だからこそ彼らから目が離せず、未だ描かれていない未来に想像を巡らせては希望と不安を抱く楽しみが持てるのですが。
主となる登場人物たちの魅力も、その感情をより大きなものにします。
いわゆる「良い子」ではないけれど、どこか放っておけない人間味と危うさを持った若者たち。
彼らが見せる世界への向き合い方は、無意味に意地を張っているようでありながら、しかし同時にどうしようもなく尊い。
そういった機微がするりと伝わる、細かなところまで神経の行き届いた描写もまた、読んでいて感じ入ったところでした。
願わくばこの先の道行きにおいて、彼らが多くの暖かいものに触れられることを。
北海道から人類が撤退した世界。氷河期の厳冬に覆われた大地では、フィンブルと呼ばれる新生物が息づいていた。
北海道を舞台に四人の少年少女が人間サイズのモンスターと戦うというあらすじですが、メインキャラ達のそれはあくまで「労働」というスタンスが現代的です。この辺りはSF的でもあり、文明出身者達が日々の生活の為にファンタジックな地へ冒険に駆り出されるというのが悲哀を誘います。
また主人公が自らの所属する社会に対してささやかな抵抗をしつつも、大意には従わざるを得ない状況は閉塞した心情描写に繋がっています。
作品内で特に注目するのは敵との遭遇シーンで、戦闘の大半が味方の肉体損壊か敵を虐殺する描写で埋め尽くされてます。
端から見れば建物に潜り込んでは雑魚敵を一掃し、ボスが出現すればボコボコにする残虐行為をしてるだけなのですが、主人公達も全員なんらかの特殊能力を持つので、ダンジョンで雑魚敵を倒す爽快感がありますね。
全体的にネガティヴな心理描写が続くのですが、それを塗りつぶす戦闘シーンが文章に迫力と夢を与えてます。
あと、効果として見逃せないのが『敵の弱さ』ですね。
いや、実際の敵味方双方の実力の強弱の事ではなく、作中の設定としてフィンブルが「倒されるべき敵」という位置付けなんですね。
彼らからしたら彼らなりの生活をしてただけなのに、突然やってきた化け物(主人公)に虐殺され、蹂躙される。チェーンソーで体を引き裂かれ、穴だらけにされ、皆殺しにされる。サンプルとして研究される。
フィンブル側も決して正義というわけではなく弱肉強食の世界のようなので、倫理的なものは感じません。むしろ出てきてはポコポコ殴られて死んでいく彼らには愛おしささえ感じます。その辺りで感じるのは、まんまRPGの雑魚キャラ狩りですね。
一度主人公達から逃げ果せるも、血痕から追跡されて仲間もろとも惨たらしく殺されたレッドキャップには、作者様の意図はともかく個人的にほっこりしました。
正直、ひたすら絶望に満ちた世界観で、彼らフィンブルの存在はゾンビ映画におけるゾンビのような「ある種の癒し」です。
例えばこの先人語を解したり、キャラクターが立つフィンブルが出たり煙草を吸ってても、その位置は揺るがないようにも思います。
作中におけるファンタジー要素はつまるところ彼らに収束してるわけですからね。
余談ですが、現時点で一番可哀想だと思ったキャラクターは一般的なフィンブルの強さの例えとして殴り殺されたライオンさんです。フィンブル研究のモルモットだったんでしょうか。