17回目:村守透<祝福の聖剣>
女神の祝福。それは、異世界転生者に与えられる闇を滅するための力。身体能力や魔力容量の向上、戦闘技術や魔導技術の習得、再生能力や言語能力の付与など、その内容は様々だが、何を転生者に授けるかは異世界転生術を使用する女神次第だ。なかには、身体能力の向上だけに絞った祝福を授ける女神だっている。
さて、今回の私は、女神の祝福を一本の剣に注いでみることにした。ああ、もちろん、言語能力くらいは転生者に与えておく。これを忘れると、異世界の住人たちと意思の疎通すらままならないのだから。
そして今、女神が創造した祝福の聖剣を
「見渡す限りの草原、雲ひとつない空。そして、一振りの剣。これが異世界、か?」
彼のいるウィツアニア大陸は比較的平和で、生息している魔物の数も少なく、強くもない。そんな場所を転生先に選んだのは、彼に授けた聖剣の力が凄まじいものであっても、それを扱う本人が満足に戦えないようでは意味がないからだ。まあ、聖剣が彼自身の身体能力を向上してくれるし、魔力防壁が自動で展開して敵の攻撃を防いでくれるから無用な心配かもしれないけれども。
「とりあえず、向こうに微かに見える村らしきところに行くとするか」
そう言って
「なんだ!?……これが、魔物か?」
狼のような頭部を持ち、小柄な体は長い体毛で覆われている。右手には、どこかで拾ってきたのだろうか、ひどく
私が
しばらくして
「……くる!」
身構える
「ぐぬ、あ?……おい、抜けないぞ、これ!」
聖剣を抜こうと悪戦苦闘する
「ぐごぅあぁっ!」
何故、こうなってしまったのか。私はありとあらゆる可能性を考え、やがてひとつの結論に至った。私は、
そう考えた私の頬を、一筋の涙が伝った。
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