舞台は岡山倉敷美観地区。白壁の良き時代を感じる人気スポットに在る不思議な土産物を売るお店での物語。連なる白壁や格子窓の町並に枝垂しだれ柳の並木道。淡い橙色の光彩が夜景を幻想的に包み込む。古民家を再生した昼間は土産屋店舗。夜になるとその場は一変するというが……。
その土産物屋「まほろば堂」の一角で夜な夜な行われる魂の契約書のやり取りとは……。
冥土の土産に最後の望みを叶えてくれる。という摩訶不思議な契約書があるという。
死の淵に出会うと人は何を思い、何を選ぶのでしょうか?魂を引き換えにして何を望むのでしょうか?
死生観に訴える物語の結末に待っているモノは、優しい嘘のシナリオとある種のトリックによって成立する驚きのヒューマンドラマがギッシリと詰まってます。
感動のラストは清々しさを含んだ大団円。続編が読みたくなる。そんな一作です。
派遣切りにあい、親の借金を背負い、先が見通せなくなった女性が主人公。
ネガティブ思考の主人公はその日、駅のホームで不思議な少年と出会い、人生が大きく変わる。チンピラに絡まれたところを助けてくれた「くのいち」のような女性に連れられ、ある土産物店に入り、そこで白髪で着流し姿のイケメン店長に出会う。その土産店は倉敷土産を昼の観光客に売る一方で、夜には訳アリのカフェバーとなっていた。
ある出来事がきっかっけでネガティブ思考に拍車がかかった主人公は、店長に自分の生い立ちを話すことで、徐々に気持ちを外に出せるようになっていくのだが、店長には人に言えない過去があった。
果たして、「冥途の土産屋」とはどういった店なのか?
主人公の未来はどうなってしまうのか?
そして店主が抱える秘密とは?
個性豊かな『まほろば堂』の面々とのやり取りは軽妙で、事実としての重みはありながら、それほど重くならずに読むことが出来ました。
また、岡山や倉敷の蘊蓄が満載で、まるで自分が『まほろば堂』にいて、主人公たちと同じ目線で物事を見たり考えたりすることが出来ます。
一話一話の分量や展開も計算しつくされていて、ページを捲る手が止まりませんでした。
是非、御一読下さい。
ようこそ、倉敷美観地区へ!
ここ『まほろば堂』では、地元岡山のお土産を数多く取り扱っております。
名産品に詳しいイケメン店主もおりますよ。ちょっと蘊蓄話が長いですけど。
おや、あなたは『夜のお客さま』ですね。
現世と幽世の狭間にいらっしゃるあなたには、冥土の土産をご用意いたしましょう。
さあ、あなたの願いは何ですか——?
倉敷の文化にグルメに観光地。読むだけでまるで小旅行したような気分になれる物語です。
ひょんなことから辿り着いた不思議な土産物店『まほろば堂』で、人生に悩む限界派遣社員・望美は、いったい何を見つけるのでしょうか。
自分の生きる意味。家族への本当の思い。そして淡い恋心。
どこか闇を引きずりながらも優しいトーンで紡がれるヒューマンドラマは、最後の最後に驚きの展開が待っています。
望美にとっての『居場所《まほろば》』はどこにあるのか。
ぜひ、最高のラストシーンを見届けてください。
タイトルから「お、地元の話?」と惹かれて拝見させて頂きました。
そして第一話。
のっけからJR岡山駅が出てきた時点で「来たー!」とニヤっとしたのですが、その後も出てくる出てくる、地元ネタ。『まほろば堂』店主真幌さんのうんちくを聴きながら、うんうん頷いてしまいました。
岡山は地味県と言われますが(笑)、このお話であらためて、地元のよさをしみじみと感じました。
そして話の中では、ヒロイン望美ちゃんがかわいらしい。引っ込み思案だった彼女がしだいに顔を上げてゆくさまが、さわやかでした。真幌さんとの今後がとても気になる!
ちょっとへこんだときに元気をもらえるような、明るくあたたかいお話でした。皆さんもこのお話片手に、ぜひおいでんせぇ岡山。
派遣切りに遭い借金を抱え、死を考えたOLの主人公がたどり着いた、不思議なお土産屋さん☆
ここは昼の顔と夜の顔を持つ、謎多き店。
イケメン店長に、男勝りの美人ライダー、生意気な少年という個性的なキャラクターが、ヒロインに絡み合い、お店の謎に迫ります。
そして、店長の粋な接客も見ものです。
またヒロインの悲しい過去に心を痛めながらも、想像を覆す意外なクライマックス。
読者を楽しませる要素が凝縮された、ちょっと不思議なミステリーです!
個人的には、2時間映画を観ているような感覚で、楽しませて頂きました。
読後感もすっきりで、ハートウォーミングなストーリーに癒されます。
書籍化も果たされている、確かな実力の持ち主の作家さんです!
オススメです!
近年の女性向けジャンルで人気の高い、「ご当地お店物」の作品です。
広義のあやかし要素というか、死神物のテイストもミックスされており、作者さんが非常にトレンドをよく研究してらっしゃることが伝わります。
不幸な身の上の主人公・望美が思い掛けない経緯から、ちょっと不思議な土産物屋の「まほろば堂」で働きつつ、自らの過去や家族の問題と向き合う物語でした。
穏やかな物腰だけどミステリアスな店主・真幌をはじめとし、土産物屋に関わる人々との奇妙な交流は魅力たっぷり。
また、エピソードが進むにつれ、次第に一連の出来事から意外な真相が明らかになっていきます。
文体も読みやすく、綺麗にまとまったお話ですので、ライト文芸系小説がお好きな方は是非。