第16話 バイク

田舎に住んでます。

ムスメは田んぼと畑に囲まれた高校に通ってました。

ついでにいうと小学校も中学も畑の中でしたし、もちろん家の周りが畑しかない子も沢山いました。

こうなると困るのが家庭訪問用に書かなければならない地図です。

とにかく目印がないんです。まだナビがメジャーでなかった頃のこと、お母さん達が苦肉の策で書いたものは…ビニールハウスでした。

しかし先生からビニールハウスは目印ではありません、とのお達しがありますます悩ましくなってしまいます。

確かに2つ目のビニールハウスを左に曲がり次のビニールハウスを右に曲がり2つ目のビニールハウスを左と…か訳がわからなくなってしまうわけです。

先生も不安倍増です。

仕方なく次にお母さんたちが目印にしたのは同じ学校の友達や上級生の子の家でした。

そして先生はコナンのように証拠を集めてなんとか家庭訪問にこぎつけるわけですが、なかにはサトシ君の地図には茜ちゃんの家が目印として書いてあり茜ちゃんの地図にはサトシ君の家が目印になってたりしてカオスな現象も起こっていたようです。


娘の6年生の先生はバイクで家庭訪問にみえました。

結構細い道が多いので正解ですね。

私はお見送りはしないタイプなんですが先生が玄関のドアを開けた時にちょうど娘と幼馴染のタツキ君が家で遊ぼうと戻ってきて玄関でかちあいました。

「先生バイクで来たのー?」

「すごい〜」

「カッコいー」口々にカッコいーを連発する子供達に先生もまんざらでもない感じ。

「じゃあね」と子供達に声をかけこちらに会釈をして颯爽とエンジンをかけて…パス、と音がしました。

全員があれ?という顔。

何度かエンジンをかけ直してましたがそのたびにパスン、パスンとエンスト音がします。

パス、パスン…。

ちょっと焦る先生。

気、気まずい…。

つい顔を出してしまった私も引っ込める訳にもいかずお見送りするつもりの子供達もビミョーな顔です。

「いやあーまいっちゃったなあ」と言いながら先生は真っ赤な顔で呟きながら私達が見守る中、何度目かのふかしでエンジンは無事にかかりました。

その後無事にさよーならーとお別れした訳ですが、タツキ君が「先生帰れなくなったらどーなっちゃうかと思ったあー」って真顔で心配してて可愛かったです。

普段はポーカーフェイスの先生が焦る顔も面白かったですね。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る