第一章中盤まで読了した時点での感想です。
作品のキャッチコピーと内容の温度差(?)に驚いたのですが、丁寧で趣深い語彙によって紡がれた中華風ファンタジーを彩る世界観と、瞼の裏に浮かび上がってくるような各登場人物の容姿や心情の描写が緻密で素晴らしく、作者様の文学に対する造詣の深さが垣間見えます。
(他方で、当該作品は、中華風世界観を十分に理解するために一定程度の予備知識を求められます。固有名詞や難解表現には十分な説明が付されておらず、中国の文化や歴史に疎い僕のような人間にとっては非常にハードルの高い作品です。)
そんな作者様のことですから、独自の哲学に基づいた文章構成があるのでしょう。釈迦に説法だと理解しつつ、老婆心ながら申し上げると、個人的には平仮名が多くてかえって読みづらいと感じました(小中学生でも知っているような漢字が使われない一方で、難読漢字はルビを振って用いられているのに違和感がありました)。
ハッピーエンドを約束された少女が、これからどのような運命を辿り、恋焦がれる相手と結ばれていくのか──今後が非常に楽しみです。ゆっくりと拝読させて頂きます。
本格派中華ファンタジー。
その世界観で登場するのは華美な王宮、煌びやかな衣装を纏った麗人、眉目秀麗な皇太子。
だが、それ故にその美しい情景を描く文章にも品格と技術が求められるもの。
本作は、その難しい要求を易々と超える文章力によって描かれています。
選び抜かれた言葉、読みやすいながらも洗練された文体、流麗な文章によって描写された本格中華ファンタジーの世界が本作最大の魅力。
主人公は、特異な生い立ちにして戦場の覇者ともなる強大な力を有する女性、冰遥(ヒョウヨウ)。
そして彼女に思いを寄せる皇太子、躘(リョウ)。
二人が織りなす恋模様を背景にして、後宮に渦巻く陰謀に敢然と立ち向かう冰遥の姿を美しい文章によってご堪能ください。
中華風ファンタジーといえば
陰謀・絢爛・皇位継承……時に妖術など、愛憎渦巻きそして美麗な活劇が魅力ではないでしょうか。とっぷりと浸れるのがこの作品。
架空世界の為、ジャンルとしては異世界ファンタジーの区分にあたるのかもしれませんが、中華風の特質として歴史・伝記的な背景を併せ持ち、しっかりした知識に基づく世界観を構築していないとどこか上滑りしてしまう、難しい分野でもあります。
この作品ではその世界が見事に描き上げられています。
主人公・沙華は美貌だけでなく教養があり上品でいて、作中視点であっても皇子に並ぶに相応しい女性です。それでいてしかし、庶子的な、読者に近い感覚も垣間見せ、読んでいて決して置いてけぼりにならないバランスの良さがあります。
溺愛、とタイトルにもありますように序章では天龍の表す皇子・躘と、紅い花の表す主人公・沙華が結ばれることが示唆されています。
そして互いを運命的に想い合うことが序盤からひしひしと伝わってくるのですが――その過程から目を離せないのは、立ちはだかる後宮の陰謀、出自の秘密がありましょう。これを「最強」ヒロインがどう切り抜け、そして結ばれるのか。
美しい描写表現と共にご堪能頂ければと思います。
私は、物語に色を感じることがあります。
自分で拝読させていただいて、クオリティの高い作品にそう感じる傾向があります。
この作品に、赤をベースにした艶やかな色を感じました。
極彩色に彩られた王宮を舞台に、女たちの愛と欲望、そして張り巡らされた陰謀を描く中華風ファンタジーです。
作品説明に「世界観がガチガチに固められたなかでの本格派中華ファンタジー」とありますが、読むにあたって肩肘張る必要はまったくありません。それは言い換えれば『しっかりした世界観に基づく作品』と言えると思います。
逆に言えば、中華ファンタジーに興味のある方であれば、普段そのジャンルを読まれない初心者の方であっても安心して物語に心を委ねられるということです。
また、そのしっかりした世界観は、様々な呪術などの表現・描写に対する説得力という後ろ盾になり、違和感なくそれらを受け入れることが出来ます。
何よりも、色を感じさせる丁寧な描写と美しい表現が物語を美しく彩っており、読む度に頭の中に美しいのそのシーンが浮かび上がります。
そして、もうひとつ、胸が苦しくなるような恋物語も、この作品の数ある魅力のひとつです。
中華ファンタジーに触れてみたい方であれば、こちらの作品をオススメいたします!
一度物語の世界に入ってしまえば、そこには色艶やかな美しい明涼国が待っていますよ。
初めに、僕は中華ファンタジーというのを初めて読ませて頂いたのですが……独特な名詞や知識がなくとも、作者様の綺麗な情景描写と緻密かつ重厚な物語に、そんなことは関係ないと言わんばかりの勢いで、一気に引き込まれてしまいました。
さらに、この作品に登場するキャラクターたちの個性がそれぞれ光っていて、人間関係の部分でも、読んでいて楽しいところです。
物語の核となるミステリー部分も言わずもがな(個人的にこのミステリー要素も、未知のファンタジーに入り込めた1つの要因であると思います)。
文体も硬すぎず本当に読みやすいので、中華ファンタジーを読んだことがない人こそ、ぜひ読んでみてほしい作品です。
異世界ものや冒険ファンタジーとは、また世界が違いますので、楽しめると思います。
情景描画が大変丁寧で美しい「中華風ファンタジー」作品です。
最近の異世界ファンタジーは、背景描画の手間を省くために世界観=中世ヨーロッパで固定した作品が非常に多いです。
読者としては共通化されたテンプレートのお陰で世界観にすんなりと入り込める利点があるのですが、それは逆にいうとその世界の風景やそこに住む人々の生活を想像する愉しみが無いとも言えます。「はいはい、お城があって、煉瓦造りの建物で、騎士とか馬とかが居るんでしょ」と。
そんな思考停止状態で本作を読むと非常に新鮮に感じると思います。
洋服、建物、役職、そして色にわたるまで、全てが新鮮であり、その都度『それってどんな景色かな』と想像させてくれる愉しさに溢れています。これこそが本来ファンタジー小説の醍醐味ではないですしょうか?
そんな美しい世界の中で繰り広げられる、甘々でありつつも重厚なロマンス・ミステリー。
皆さんもまだ見ぬ世界に飛び込んでみてはいかがでしょうか!
王子に溺愛される系作品は良くありますが、この主人公と皇太子の場合、情感たっぷりに想いあってるのが伝わってくるので、それだけで既に大勝利していると言えます。
それに絡まってくる後宮の陰謀!面白くなってくるのは当然です。
陰謀は重いものを感じさせますが、主人公がはっきりしていて気丈なため、周囲には味方になってくれるであろう人が増えてきます。
そのため「私、重いのは精神的につらいから読めない……」って人でも比較的入りやすいのではないでしょうか?
また中華ファンタジー系に詳しくない方でも、二人の恋愛モノを主軸として入れる内容だと思います。
先が楽しみな作品です。