概要
母の死をきっかけに外の世界に飛び出してみるが、世の中のことを何も知らない。
これから住む家は? おまんまは? 着物は?
何も知らない彼が出会ったのは大名主のお嬢様。
天と地ほどの身分の差ながら、同じ目的を持つ二人は『同志』としての将来を約束する。
クールで大人びた少年と、熱い行動派のお嬢様が、とある絵師のために立ち上がる。
『柿ノ木川話譚』第4弾。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!市井の大河ドラマ化希望。
遊郭で生まれた、見目麗しい男の子「悠介」。彼の武器はその賢さ。齢十に満たないとは思えぬほど聡い彼は、その遊郭で二番人気だった母親の死をきっかけに遊郭の外──つまり外界に出ることとなります。
目の前に広がるのは初めて見る世界。しかしどう生きれば良いかわからない。今まで彼の世界は遊郭の中だけだったのだから。
これはそんな悠介が、一人の人間として生きていく成長物語です。
と、あらすじはこんな感じなのですが、とにかくこの物語、吸引力が凄いんです。しかも脳内で映像が鮮やかに再現され、上質な時代劇を見ている気分になれるんですよね。
素晴らしい物語って、頭の中で想像がすぐに出来るんですよ。…続きを読む - ★★★ Excellent!!!矜持があれば人は少し強くなれるのです
みなさま、お初にお目にかかります。蜜柑と呼ばれております。
此度はわたくし、実の名を佐倉奈津、と申しますの。
この佐倉の家に幼少より兄妹と等しく育ちましたある少年のお話を、未熟ながら三味線の音を伴に吟じとうございます。
かの少年は幼いながらたいそうな苦労と悲しい経験をしたにもかかわらず、
本人は大人も驚くほどに達観し、生活を自らの手で成そうと佐倉の家に参りました。
とても聡く、なんとも素晴らしい芸の才を持つ少年にございます。
絵筆をとればそれはいかなる巨匠といえど舌を巻きましょう。
彼のその才は果たしてどこから来るのか、
その秘密が分かった時にはもう、もう一つの災禍がこちらに手を差し伸ば…続きを読む - ★★★ Excellent!!!一癖も二癖もある登場人物だからこそ、大いに活きる物語。
女郎宿で生まれた男の子。
もう始まって一行目でドラマチックなんですね。
物語は物語ならではの「現実とは思えない」活躍譚が好みなので、もう一行目から夢中です。
平凡なエピソードはひとつとしてなく、次が気になる引きが強い。
そんな物語がよく映えるのは、登場人物たちの生い立ちや決意、「生き様」がとりどりだからと感じました。
女装男子、癖のあるお嬢様、熊殺し、有名絵師、小物から大物の悪役に至るまでひとりひとりの魂がある。
彼らがそれぞれの矜持でもって動くから、物語がよりドラマチックになる。
楽しませて頂きました。
ドSが大大大好きなので、総攻めのはずの自分も悠介に惚れ込みました。
嫌だよ悠さん………続きを読む - ★★★ Excellent!!!廓育ちの少年の未来は、大きく広がる。
女郎宿で生まれ、廓の中で育った少年、悠介。
しかし母の死とともにそこから飛び出し、新しい世界に飛び立つこととなりました。
そして、彼の世界を広げるターニングポイントがもうひとつ。
ふとしたことで出会った、大名主の娘、お奈津。
天と地ほど身分の違う二人ですが、お嬢様と使用人として過ごしながらも、悠介のことをとても慕い、一人の人間として信頼していきます。
そして、ずっと心に秘めていた、やりたいことを打ち明けるのですが……
ここまで書くと二人が恋仲になりそうな雰囲気ですが、そういう関係にはなりません。
ですが恋とは違っていても、同じ志をもつ同士として、見事な相棒感を出しているのです。
なら…続きを読む