ある女性の死がきっかけで、怨みと妬みの連鎖が始まって繋がっていく様子が恐ろしくもやるせないです。とある一名以外はなにも非がなく、ごく普通の人間だっただけに、ふとしたことから悪意を覚えてしまい、ささいな言動を経て一気に奈落の底に堕ちてゆくのは人間の業をこれでもかと容赦なく、それが逆に物語が持つ辛辣な切れ味になってます。
個人的に好きなのはキクナの怨。つらい生い立ちゆえに自己肯定感が低くて卑屈ながら、まっすぐに夢を見て努力を重ねる彼女に襲いかかった悪意から、徐々に狂い出していく様子はこのシリーズのなかでいちばんやるせないし、悲しいです。
同じくただ青春を楽しんでいただけなのに、想いを踏みにじられて裏切りにあった「彼女」も、悲惨というほかありません。
また唯一悪意を持たず、優しく全員を見守ってくれていた彼も、徐々に奈落の底へと誘われてしまいます……。
彼女たちに地獄をもたらした直接的な悪意は、ちいさな悪意や怨みに妬みも加わり、制御できないほど強大になっていきます。やがて取り返しのつかない末路が待っていました。
この連鎖が断ち切られるのはいつか?願わくば救いが早く訪れますように。祈らずにはいられません。
情報は広がるもの、良し悪し関係なく。
この作品の特徴は、昨今ではも日常に溶け込んだSNSを上手く利用していること。
情報を得るにも、拡散するにも、馴染みすぎている。
特に人間というのは善意より悪意のほうが染みわたりやすい負の面が強い。
良い思い出よりも悪い思い出のほうが記憶に残りやすいのがいい例である。
いや、怖い怖い。本当に起こりそうで、ありえそうな話。
ありえそうで、ありえないのがホラーの定番だが、先が読めないより底が見えないし測れない面が何より濃い。
知るべきではない、見るべきではない。聞くべきではない。
けれども知りたい見たい聞きたい人間、誰もが持つ欲が行動を誘発する。
その果てに何があるのか、分からず……ああ、人とは何とも恐ろしいものだ。