0歳-目標

目を覚ました俺は、「赤ちゃんポスト」という文字に驚いたが、すぐに納得することにした。

転生のせいで新しい命を奪うことになるのは良くない。

これは、新しい人生を始めるための必然的な結果なのだ。


「まあ、今更新しい親ができても困るしな。こちとら元30歳のおじさんだし。」


そう考えると、この生まれはある意味ラッキーだともいえる。

そんなことより、現代日本で生きていくには身長を高く設定しすぎたことに気が付いた。


「2m28cmなんて、目立ちすぎるだろ…。もっと普通の身長にしておけばよかった。」


そんな後悔の念にかられている間にも、周囲からは大人たちの声が聞こえてくる。

俺を捨て子だと思っている院長や看護師たちが、同情の声をかけてくれた。


「この子、まだ生まれたばかりじゃないか。かわいそうに…。一体どんな事情があったんだろう?」


「生後1か月にもなっていませんね…辛かっただろうに。」


優しい声が耳に届き、俺は少し安心した気持ちになった。


それからの日々は、ほとんどを眠って過ごした。

ミルクを飲む時間がやってくると、看護師が優しく世話をしてくれる。

しかし、あまりにも眠すぎて頭がほとんど働かない状態が続いた。


気がつけば、1年が過ぎていた。

自分が眠っている間にどれだけ成長しているのかを知ることはできなかったが、周囲の声から察することができた。


「この子、成長曲線のはるか上を行っているわ。このまま順調に育ってくれれば、将来が楽しみね。」


「本当ですね。驚くべき成長速度だ。」


「でも、あまりにも大きくなると、普通の生活が難しくなるかもしれないわね。」


俺はその言葉に少し不安を感じたが、それでも自分が特別な存在であることを再認識した。 


ある日、ミルクを飲んでいる最中に、院長が話しかけてくれた。


「元気に育っているね。君にはきっと、特別な使命があるんだと思うよ。」


その言葉に俺はハッとした。


「そうだ、せっかくの新しい人生、何か特別なことを成してみたい。」


俺は前世、しがないプログラマだった。

不自由のない人並みの人生だと思って納得していたが、どこかつまらないとも考えていた。


「(そうだ、NBA選手になろう。)」


これでも前世では中学高校とバスケ部に所属していた。

身長が170cmしかなかったのでプロになろうという気は起きなかったが、これでもチームのエースで県大会に行く程度の実力はあったのだ。

2m28cmの身長があれば、どこでだって無双できるだろう。


俺は今世の目標を決めた。

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