🎄🎄
子どもの頃、サンタクロースを信じていたわたしの話だ。
小学四年生の頃、友だちの家にはスーパーファミコンがあり、遊びに行くとよくやらせてもらっていた。
うちはお金持ちじゃなかったから、ようやくフリーマーケットでファミコンを買ってもらえたくらいで、ゲームを手に入れるのは簡単じゃなかった。
そんなある朝、目を覚ますと、紺色のカバンの中に『セーラーV』の漫画とゲームボーイが入っていたのだ。
ゲームボーイがあって飛び上がるほど嬉しくて、ありがとう! サンタさん!! と。
だが早速遊ぼうとしたとき、ハラリと説明書が落ちた。
裏側には近所のおもちゃ屋さんの印鑑が押してあった。
「お母さん、これ〇〇で買ったやつ?」
と尋ねると、母は
「しまった!」
という顔をして、急いで取り上げ、
「あ、サンタから手紙も来てるからね!」
と慌てて渡してきた。
そこには汚い字で、わたしの悪いところが並べられ、
「もっといい子になりましょう」
と書かれていた。サンタに幻滅し、悲しい気持ちで手紙をしまった。
それ以来、わたしはサンタについて何も言わなくなった。
今、親となって思う。
あの時の親の行動は当時子供の頃の私にとっては悲しい思いをしたけど親となった今、親の気持ちはわからなくもない。
子育てはトライアンドエラーの連続だ。子供に、いかに夢を与えるか、でも現実を知らせるときはいつか来る。
でもその伝え方は本当に難しいもので。子供によっては同じ伝え方でも「そうなんだね」と納得する子もいれば、「嘘だ」と傷つく子もいる。
じゃあこうだ、とやったところでダメだったり意外とよかったり。
うちの両親もきっと話し合って考えたことだろう。手紙の件。説明書のお店の印鑑は想定外だったと思う。
ああすれば私はサンタなんて信じなくなりおもちゃをせびってくることもないだろう、子供から大人への一歩になるだろうと。
だが私はショックを受けてしまった、親の願い虚しく。私がそれに対応してなかったのだ。
てなことで。そのサンタにまつわる思い出があるからこそ、自分の子どもには嫌な気持ちをさせたくない。
サンタはいないと伝えるタイミングも、慎重になってしまう。
幼稚園でも、普段とは違う外国人の先生をサンタに仕立てるくらい、子どもたちの信じる気持ちを守ろうとしているのだから。
先日、わたしがプレゼントを置くところを見てしまった子どもたちには、
「玄関までサンタが運んできたのを、ママが運んだんだよ」
と伝えると、
「そうなんだね!」
と納得してくれた。
でも、
「今年はずっと起きてるからねぇ〜」
とニヤニヤしていた。
そう言えば先日、義父が
「今年はじいちゃんのサンタの代わりにじいちゃんが買ってあげるからなー」
と言っていた。子供はそう高いものを選ばなかった。
なるほど……。そういう方法もあるのか、と思った瞬間だ。これは来年使わせてもらおう。
かつてサンタを信じていたわたしが、今はサンタについて子どもにどう伝えるか悩むようになるなんて、子育てとは本当に奥深いものだと感じている。
常にトライアンドエラー、エラーエラーばっかりだけどそうやって親も成長していくのだ。
終
サンタはやってくる?(カクヨムコン10短編部門) 麻木香豆 @hacchi3dayo
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