07.ご馳走様でした

 ホムラはまず中が空洞で上底がやや長い円錐台えんすいだいの物体をモデリングする。


 そして、粗鉄の短剣を手に持ち、その物体のことをイメージする。


 すると、


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 スキル:モデリングの発動条件を満たしています。


 素体:粗鉄の短剣 → 生成:バケツ


 実行しますか?

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(……おぉ、できた)


 想定通りの結果を得られた。


 ホムラは一旦、モデリングを実行し、バケツを生成する。


「お……」


(気持ち……元のバケツよりさびが取れて綺麗になってるな)


「そして、これを……」


 今度は短剣をイメージする。


 ***************************

 スキル:モデリングの発動条件を満たしています。


 素体:バケツ → 生成:粗鉄の短剣


 実行しますか?

 ***************************


(よしよし……モデリングの変形は3Dモデルさえあれば〝可逆性〟だ。これは正直、非常に助かる)


 ホムラは思わず軽くガッツポーズする。


(お次は……)


 今度はその辺から拾ってきた木の枝を手に持ち、短剣をイメージする。


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 スキル:モデリングの発動条件を満たしています。


 素体:木の枝 → 生成:???


 実行しますか?

 ***************************


(やはり、初回は何が生成されるかわからないんだな……でも同じモデルでも別のものが生成できる……!)


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『木の短剣』が生成されました。

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(よしよし、想定通りだ……)


 そんなことを思いつつ、その後、ホムラは木の枝をモデリングくんでデザインして、木の短剣を木の枝に戻せるかを試してみた。

 しかし、これはうまくいかなかった。


(……これは人工物は生成できるけど、自然物は生成できないってことかな?)


 ホムラは一旦、そのように仮定する。


(……さてと)


 次に、ホムラは棒の先に三角形がついたような物体をモデリングくんでデザインする。


 そして、バケツを手に持ち、それをイメージする。


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『粗鉄のスコップ』が生成されました。

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(よしよしよし……今度は逆に同じ素材でも別のモデルを用意すれば、別のものを生成できた)


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【スキル『モデリング』について追加でわかったこと】


 ①可逆性である


 ②自然物は生成できない


 ③同じモデルで素材を変えれば別のものが生成できる


 ④同じ素材でモデルを変えれば別のものが生成できる


(③と④の例)

 バケツ ┳ 粗鉄の短剣(モデル短剣)

    ┣ 粗鉄のスコップ(モデルスコップ)

    ┗ 粗鉄の???(モデル???)


 木の枝 ┳ 木の短剣(モデル短剣)

    ┣ 木のスコップ(モデルスコップ)

    ┗ 木の???(モデル???)

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(スキル『モデリング』の特性、なんとなくわかってきた……。これは色々モデルを作ったり、素材を変えたりして、何が生成されるか試してみたくなってくるな……)


 ホムラは少々わくわくしてきた。すると……、


 ぐぅうう。


 ホムラのお腹が鳴る。


「その前に腹ごしらえだな……」


 ホムラは木に吊るし、血抜きしていたウサギを回収しに行く。


 別の生物に横取りされているかもしれないと思ったが、幸い、そのままの状態で残っていた。

 そしてウサギを家に持ち帰る。


「えーと、どうしようかな……」


 家に着いた。

 しかし、このウサギはウサギと言っても大型犬くらいはある。


「とりあえず、これをさばかないとだな……」


 ホムラはとりあえずウサギをキッチンに搬入する。


 そして、町で買ったナイフを取り出す。


「うーん……こんな感じかな……」


 ホムラは料理が得意というわけではなかった。

 だが、ネットの情報を頼りに下手なりになんとか捌いていく。


「よし……なんとかできたぞ……あとはこれを……」


 豪快に焼く。


 まだ火を室内には持ち込めていないので、もちろんアウトドアだ。

 フライパンとかないので、木に刺して、直火で焼く。

 今はそれしかできない。


 十分に火を通したら、町で買っておいた調味料を取り出す。


(これも貴重だから大切に使わないとな……)


 そんなことを思いつつ、ホムラは結構、豪快に振りかける。


 なんだかいい匂いがしてくる。


(だめだ……もう我慢ならねえ……)


 ホムラは焼きウサギにかぶりつく。


「っっっ……」


 ホムラは言葉を失う。


(…………うめぇ…………めちゃくちゃうめぇ……何がどうとか説明できないがとにかくうめぇ……)


 それはまるで身体に直接浸透していくかのような感覚であった。

 異世界に来て、初めて自炊したそのシンプルな焼きウサギ。

 お腹が空いていたことや、厳しい状況だったこともあるかもしれない。

 しかし、その味はホムラにとって、これまでの人生で味わったことがないほど美味しかった。


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