ビル用水法<船井総研>1962年制定、建築物用地下水の採取の規制に関する法律、地盤沈下、建築物用地下水、井戸、ストレーナー、掘削深度、揚水量、罰則など
ビル用水法<船井総研>
以前のコラムでは、環境基本法の「環境保全上の支障の防止等」と8分類 ~ 『農用地土壌汚染防止法』『土壌汚染対策法』『騒音規制法』『振動規制法』『悪臭防止法』『工業用水法』を紹介しました。
※環境基本法の「環境保全上の支障の防止等」と8分類※
環境基本法の「環境保全上の支障の防止等」には、❶典型7公害、❷化学物質対策、❸土地利用等、❹廃棄物/リサイクル、❺自然環境、❻地球環境、❼その他、❽他分野の分類があります。今回は❶典型7公害の中から「ビル用水法」をご紹介します。
■ビル用水法■
ビル用水法は、正式名称を「建築物用地下水の採取の規制に関する法律」といい、1962年(昭和37年)に制定されました。この法律は、特定の地域において、ビル用の地下水の採取による地盤沈下を防止し、国民の生命および財産の保護を図ることを目的としています。
高度経済成長期には、都市部におけるビルの建設ラッシュが起こり、冷房やトイレなどに大量の地下水が使用されました。しかし、地下水の過剰な汲み上げは、地盤沈下を引き起こし、建物の傾斜や道路の陥没などの被害をもたらしました。ビル用水法は、このような地盤沈下による被害を防止するために制定されました。
<対象>
・指定地域: 地盤沈下の状況などを考慮し、政令で指定された地域(現在、東京都、埼玉県、千葉県、大阪府の一部地域が指定されています)
・建築物: 指定地域内にある、地下水を採取する建築物
・建築物用地下水: 冷房設備、水洗便所、消防用水など、建築物の用に供する地下水
・井戸: 建築物用地下水を採取するための井戸
<法律の概要と特徴>
【地下水の採取の規制】
・許可: 指定地域内において、一定規模以上の建築物用地下水を採取する場合は、都道府県知事の許可が必要です。また、地盤沈下を防止するため、井戸の掘削深度や揚水量、ストレーナーの位置などが規制されます。
・採取の制限: 都道府県知事は、地盤沈下を防止するため、地下水の採取を制限することができます。
【地盤沈下対策】
・観測: 都道府県知事は、地盤沈下の状況を観測する必要があります。
・対策: 地盤沈下が認められる場合は、都道府県知事は地盤沈下を防止するための措置を講じる必要があります。(例えば、地下水の汲み上げ制限、地盤沈下防止工事など)
【経過措置】
法律施行前にすでに地下水を採取していた建築物については、一定の条件のもとで許可が不要となる経過措置が設けられています。
【監督処分】
都道府県知事は、許可を受けた者が法律に違反した場合、許可の取消しや停止などの処分を行うことができます。
<具体的な基準値>
・井戸の掘削深度: 地域の地質構造や地下水位などを考慮して、都道府県ごとに基準が定められています(例えば、東京都では、原則として150m以浅に制限されています)
・揚水量: 地盤沈下を防止するため、井戸1本当たりの揚水量に制限が設けられています(具体的な制限値は、地域の地盤状況や地下水の利用状況などを考慮して、都道府県ごとに定められています。)
・ストレーナーの位置: ストレーナーは、地下水を採取するための井戸の部品で、地盤沈下防止のため、一定の深さに設置することが義務付けられています。
<違反した場合の罰則>
ビル用水法に違反した場合、以下の罰則が適用されます。
・無許可採取: 1年以下の懲役または100万円以下の罰金
・採取制限違反: 10万円以下の罰金
・報告義務違反: 10万円以下の罰金
・立入検査の拒否・妨害: 10万円以下の罰金
<法律の目的と効果>
ビル用水法は、建築物用地下水の採取による地盤沈下を防止することで、国民の生命および財産の保護を図ることを目的としています。この法律の施行により、地盤沈下の発生は抑制され、都市部における地盤沈下による被害は減少しています。
しかし、近年では、気候変動による水不足や地下水汚染など、新たな課題も発生しています。
<今後の展望>
ビル用水法は、水資源の状況や社会情勢の変化に応じて、改正が繰り返されています。今後も、より効果的な水資源の利用と保全を図るために、法律の見直しや新たな規制の導入などが検討されていくと考えられます。
特に、近年では、雨水や再生水の利用促進、節水技術の導入、地下水の水質モニタリングなどの取り組みが重要視されています。これらの取り組みを推進することで、持続可能な水資源の利用を実現していくことが期待されます。
以上、どうぞよろしくお願いいたします。
■環境基本法の「環境保全上の支障の防止等」と8分類■
❶典型7公害には、
・大気汚染防止法・自動車NOx/PM法・水質汚濁防止法・浄化槽法・海洋汚染防止法・農用地土壌汚染防止法・土壌汚染対策法・騒音規制法・振動規制法・悪臭防止法・工業用水法・ビル用水法があります。
❷化学物質対策には、
・ダイオキシン類対策特措法・PCB特措法・化審法・PRTR法・フロン排出抑制法があります。
❸土地利用等には、
・国土利用計画法・都市計画法・建築基準法・工場立地法・公有水面埋立法があります。
❹廃棄物/リサイクルには、
・循環型社会形成推進基本法・廃棄物処理法・資源有効利用促進法・容器包装リサイクル法・家電リサイクル法・建設リサイクル法・食品リサイクル法・自動車リサイクル法・小型家電リサイクル法・放射線物質汚染対処特措法・バーゼル法・特定産業廃棄物支障除去特措法・プラ資源循環法・食品ロス削減推進法・再資源化事業高度化法があります。
❺自然環境には、
・自然公園法・鳥獣保護法・温泉法・生物多様性基本法・種の保存法・外来生物法・海岸漂着物処理推進法があります。
❻地球環境には、
・地球温暖化対策推進法・オゾン層保護法・省エネ法・FIT法/再エネ法・CCS事業法・水素社会推進法があります。
❼その他には、
・環境再生保全機構法・中間貯蔵/環境安全事業法・水銀汚染防止法・経済安全保障法があります。
❽他分野には、
・労働安全衛生法・電気事業法・消防法・高圧ガス保安法・PFI法があります。
■環境法令の体系と5つの分類■
■環境法令の体系■
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