アマプラで映画視聴245作品目は「怪物」でした。個人的レーティングは8です。しかし12月は話題作が次々アマプラにやってきますね…追いつけるかなと思いつつも話題作をおっかけていきます。
大きな湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子供たち。それは、よくある子供同士のケンカに見えた。しかし、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した―。©2023「怪物」製作委員会
まぁさすがに話題作です。僕の基準では見始めたら止めずに最後まで一気に見た作品は全部8以上。「怪物」もまさにそうで、見始めたら一気に最後まで持っていかれました。この作品については僕にとってはストーリー的なものより映像的なもののが大きかったです。あとから振り返って「怪物だれだ?」っていうあのシーンはじわっときますね。怪物は誰か?とずっと考えながら見ていると完全にその予想の裏をかかれる映画でした。
以下、解説とネタバレありなので、見る予定の人はパスしてください。
シングルマザーですが、子ども思いのがんばるいい母親という視点でずっとみていくのですが、かなりすすんだ段階で少し違和感も持たされるようになっています。無意識の善意で子どもに自分の価値観を押し付け、苦しめているのは誰?っていう視点です。そう思うと、途中の学校で母親が教師と対峙するシーンも少し違ってみえてきます。教師たちの態度は母親からみた姿であって、「現実」では少しない可能性がみえてきます。母親の家族観の押し付けは、同性愛的感情を持つ息子にとっては重荷でしかないわけです。そう考えると怪物候補になります。ちなみに夫は不倫中に事故死しているのですが、彼女はずっと夫を愛する妻を演じています。
校長先生は、最後までよくわかりません。子どもを守る気持ちはもっていたとしても、誣告と知りつつ教師一人を犯罪者に仕立て上げるのはさすがにヤバイのでは?ここはちょっと謎の人物のまま。スーパーで子どもにわざと足をかけるシーンもあり、怪物の一人なのかもしれない。
中心人物の教師。彼は怪物候補として登場するわけですが、最後までみると一番まともな人物でした。最後誤りにいくのも含めて…ただ非常に思慮が浅いという欠点があります。
その他教師たち。ストーリー上はモブ的位置づけですが、やっていることは怪物です。この学校にいるまともな教師は辞めさせられた人だけでした。
子どもの父親。同性愛を病気と捉える学歴思考に汚染されたゆがんだ人物で、虐待もしています。普通に怪物でした。
シングルマザーの子ども。思春期にたぶん好きな子(同性)のいじめを目の当たりにして揺れます。みんなの前ではいじめに加担しながら、密かに彼との友情を秘密基地ではぐくみます。そのことに悩みつづける。ただ彼が自分の気持ちを誰にも言えず、状況に流されて真実を語らなかったことが、常に大きな悲劇を生んでいます。
いじめられている子ども。父親を憎み、建物に火をつけた彼もまた、被害者でありつつも恐ろしい無邪気な内面をもっています。
と、いろいろ考えていくと、見ている視聴者である自分の中の「怪物」を見つめるという作品に仕上がっている名作です。ちなみに最後のシーンで二人は死んだのか?死んでないのかは?ぼかされていますが…途中母親と先生が廃電車に助けにきているところまでは確定していますから、死んでいるとするとあの時点で亡くなっていないといけないことになります。逆に生きているとすれば、あの時点ででてこないとおかしいことになります。なので、僕の解釈は二人は救出されたが、あれは意識を失った二人が見た共通の「夢」ではないかな?という解釈です。だから「何も変わらない」という発言につながっているのではないかな…。