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普遍と平熱

かつてけっこう本気バンドをやっていて、途中で透析が始まったひとの平熱くらいの温度感の話

1,000円の壁ってことじゃなく、折り合いってことですわな

たぶん、透析患者の中でも関東ランク上位でラーメンを食べていると思う。透析患者にとってラーメンはあまり推奨されるものではないが、食べ方の問題であって、禁止されているものではない。もちろん、自分の身体ときちんとお付き合いしながらであればということであるし、スープは控えめにしているけれども。

そういうことから職場に出社をするとついついラーメンを食べてしまいがちだ。昨日も散々お昼ご飯に迷った挙句、ラーメンであれば安牌であろうとしばらく行っていたなかったラーメン屋に意気揚々と向かった。

よくぞ思い出した!我ながら名采配!と、迷った挙句のナイスジャッジで足取りも軽い。しかし、こうしてばしっと決まったと思えているときこそどんでん返しというのは起こるものである。お店は営業していなかった。カワセミの捕食時の水面へのダイブくらいに直角にテンションが下がった。

激しくうろたえてしまったものの、お昼休みは有限である。リカバリーに努めなければならない。そういえばここに来る途中、前々から少し気になっていたものの、今日行く予定だった目当てのラーメン屋を捨ててまで入るほどではないなと思っていたお店があることを思い出した。

そのお店のラーメンは醤油や塩。今日行こうとしていたのはとんこつラーメンのお店。ふだんとんこつを選んでしまいがちなので、ジャンルは違うがむしろこういうときでないと行かないんじゃないかなと気持ちを切り替えてそのお店に行くこととした。

転進先のお店は券売機制であった。初めてのお店では変な色気を出さず、スタンダードだと思われるものをオーダーするようにしている。だいたいそういうのというのは券売機左上のボタンに配置されている。視線を券売機最左上のボタンへ。

醤油ラーメン 1,200円

し…醤油ラーメンが1,200円…だと…!?もしかしてトリッキーなボタン配置でこの醤油ラーメンこそこのお店のスペシャリテなのではと券売機を隅々まで舐め回すように再確認したが、やはり奴さんはスタンダードメニューのようであった。なんなら1番安い。

まったくの凪の気持ちで挑むにはハードルが低いとは言えない。しかし、ここからの他のラーメン屋へのリカバリーはもはや不可能。ここはひとつ決心しようじゃないか。ふだん食べている価格帯のラーメンと値段分の差が出るに決まっている。そうに違いないと券売機のボタンを強めに押し込んだ。

入店し、食券を渡し着席。待つこと数分。

なるとかわちい

なると、かわいいよね。「の」とか言っちゃって。あとなんかのりピーを思い出すよね、酒井法子のりピーというかのりピーマンだけど。マンモスかわいい(のりピー語)。

なんと言って良いかわからなくてつい話を逸らしてしまった。いや、おいしかった。おいしかったのよ。それはそうなんだけど…1,200円かなあ…と。ラーメン1,000円の壁をゆうに超えているだけに何か特別なものを求め過ぎたのかもしれない。むしろその”特別”はきちんと存在しているものの、僕はそれに気づけるほど上等な舌を持ち合わせていなかっただけであるという可能性は大いにある。というかたぶんそうなんでしょうね。

素直に向き合えてはいないものの、前述の通りおいしいことには違いないので食べ終わる頃にはおなかも気持ちも満たされた。

とは言いつつも、釈然としない気持ちもあって、でもなあ、なんかなあと職場に戻った後に一連の出来事を同じ島で働く姐さんに伝えたところ、「たっか!エビとかトリュフとか入ってたんじゃない?」と、めちゃくちゃ雑に高級に結びつけていた。でもそういうわかりやすさ、大事だよなとも思った。滋味深く華やかさを欠く食べ物が想定以上の価格だとこの日のような感想を抱いてしまうのだろう。

この出来事を糧に舌をビルドアップし、人間としての器のサイズアップを心に誓うのであった。

ちなみに、最初に行こうとしていたラーメン屋は閉業していたそうな。ショック…!!