「旅の始まり」/インド・カルカッタ(1日目)
1975年3月1日
インド・カルカッタ
ダムダム空港から市街へ向かうバスの窓から僕は故郷の新潟のような遠く広がる水田を眺めていた。旅に出る直前、インドから帰ってきた大学の先輩に聞いていたカルカッタの空港から市街まで延々と続いていたという難民居留地がない。街に入る少し前にようやく黒いテントの塊が見えた。
グレートイースタンホテルの前でバスを降りるとボロ布をまとった人たちに囲まれた。難民なのか乞食なのかわからない数十人の人壁ができ、人以外何も見えない。褐色の顔の強烈な眼差し、別世界に降り立ったSF映画のようだ。
飛行機の中で声をかけ合い、若いバックパッカーが9人集まった。みんなで空港のタクシーの客引きと値段の交渉をして、35ルピーでバス1台を借りきることになった。見るからにオンボロのバスだが、インドに着いた実感が涌いた。1ドル305円、空港で12ドルを91.8ルピーと両替した。1ルピー約40円。予定をしていた安宿のホテルパラゴンは満室で、向かいにあるモダンロッジに泊まることができた。
ホテル近くにある美術館に行った後、レストランで初めてカレーを注文した。アルミ皿の上のライスにはハエが集っていてビビッていると、ボーイの少年がスプーンでアルミ皿をパーンと叩いた。ハエがびっくりし飛んだ瞬間、さっとスプーンですくって食べる。どうだと言わんばかり彼は自信たっぷりに微笑んだ。カレースプーンは熱湯の入ったコップに入れられている。衛生的だとアピールしているけれど、ギャグだ。結局、僕は食べる勇気がなく諦め、露店でオレンジを買い夕食にした。
インドでは値段の表示がなく、一々交渉しなければならない。それが面白い人はいいけれど、僕は疲れる。何も言わず1ルピー札を出すとオレンジを3コ渡された。僕の後にいた現地の人はやはり1ルピー札を出し同じオレンジを10コほど受け取った。ツーリストプライスは仕方ない。
(kondo)
‐
*ルート
Tokyo Japan → Bangkok THAI
→ Calcutta INDIA
-
*カルカッタ
=現/コルカタ
(インドの西ベンガル州の州都)
*ダムダム空港
=現/ネータージー・スバース
・チャンドラ・ボース国際空港
(O/補足)
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