突然「盗作」疑う通知文 イラストレーター襲う「トレパク冤罪」
イラストレーターの花邑(はなむら)まいさんの元に、女性漫画家の代理人弁護士から「通知文」が届いたのは2019年6月のことだった。
「作品が花邑さんにトレース(なぞり書き)されている」
初めは、すぐに解ける誤解だと思っていた。しかし、事態が訴訟に発展し、仕事も失うはめになるとは想像だにしていなかった。
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女性漫画家から覚えのない指摘
花邑さんは美術系の短大を卒業後、入社したゲーム制作会社でデザインを担当。13年にフリーのイラストレーターへ転身した。トラブルに巻き込まれたのは、画集も発売し、順調なキャリアを歩んでいた頃だった。
女性漫画家から届いた通知文には、花邑さんが描いたゲームのキャラクターのイラスト300点以上を検証したとあり、線の重なりといった女性漫画家の作品との類似点が挙げられていた。
アニメやイラストの世界で、他人の作品をトレースして、パクる(盗作)ことを指す「トレパク」の訴えだった。
花邑さんにとっては全く身に覚えのない指摘でショックを受けた。
通知文は、花邑さんがかつて働いていたゲーム制作会社の親会社にも届いていた。親会社はトレパクを否定したものの、女性漫画家は聞く耳を持たなかった。
「何とか誤解を解きたい」。わずかな望みをかけ、花邑さんは19年10月、女性漫画家の前で直接イラストを描く機会を持った。
仕事もキャンセルに
自信を持って描ききったつもりだった。しかし、女性漫画家は一方的に「トレースせずに描く画力がない」と断定。ブログやツイッター(現X)に一連の経緯を書き込んだ。
ネット上で花邑さんの名前は「Hさん」と匿名化されていたものの、すぐに…
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