被災者の命と健康を守るため、対策を再点検する必要がある。
能登半島地震で災害関連死と認定された人が247人となった。2016年の熊本地震の222人を上回っている。
地震発生直後の建物の倒壊などでは助かったものの、避難生活による疲労や精神的なストレスなどで心身に負担がかかって亡くなった。適切なケアや支援があれば防ぐことができたはずだ。
とりわけ高齢者は環境の変化によって体調を崩しやすく、リスクが高い。能登地域は高齢化が進んでおり、年齢が公表された関連死の約8割を80代以上が占める。
被災直後の避難所などの劣悪な環境や、仮設住宅に入居してからの孤立などが要因となることが分かっている。
今回の地震で開設された避難所も、1人当たりのスペースは狭く、衛生状態に問題が多かった。仮設住宅での孤独死も確認された。
政府のワーキンググループが先月まとめた報告書は、避難所における生活環境の改善が欠かせないと指摘した。開設時からの簡易ベッドの設置や温かい食事の提供、仮設トイレの確保などの取り組みを求めている。
1995年の阪神大震災以降、災害が起きるたびに関連死をどう防ぐかが課題となってきた。今なお状況が改善していない現実を深刻に受け止めなければならない。
東日本大震災の際には、医療関係者らが定期的に仮設住宅へ通って「お茶会」を開き、住民の悩みや健康相談に耳を傾ける活動が実施された。
こうしたきめ細かなケアが必要だが、能登地域の現場では人手が不足している。保健師やボランティアが仮設住宅などを巡回し、声をかけている。ただ、一人一人のケアにかけられる時間は限られているのが現状だ。
9月には記録的豪雨に見舞われ、再び甚大な被害を受けた。地震から立ち直ろうとしていたところへ新たな打撃を受ける形となった。避難生活も長引いている。
被災地は本格的な冬を迎えた。寒さも高齢者にとって負担になる。これ以上、関連死を増やさぬよう、国や自治体は、これまでの教訓を踏まえて支援体制を見直さなければならない。