年末恒例、「ふるさと納税」の返礼品選びがヤマ場を迎えている。税金を納める代わりに寄付をすれば特産品がキックバックされる、公設民営のカタログショッピング。ふるさとも納税も関係ない。「実質無料」のネット通販……。やゆする言葉はたくさんあっても、存在感は増すばかりだ。だが、ちょっとした違和感があって悩ましい。今年度分の締め切り(今月31日)まで残り2週間となり、考えた。本当にオトクなのかな?
<故郷にふるさと納税してますか>
11月15日の本紙朝刊「仲畑流万能川柳」の掲載句だ。作者は神奈川県の荒川淳さん。もちろん反語だろう。大多数が返礼品目当てで故郷以外の自治体に寄付している現状を風刺した句に違いない。
「ふるさと納税」は大まかにいえば、居住地以外の自治体に寄付した金額から2000円を除いた分が、主に住民税から控除される。つまり、実際には納税にはあたらない。旗振り役は元首相の菅義偉氏だ。
故郷や世話になった地域、応援したい地域の力になる制度、という触れ込みだった。「納税先を選べるようになれば税の使われ方を考える」「自治体が地域の取り組みをアピールすることで地域のあり方を考えるきっかけとなる」ともいわれた。
制度が始まると、各自治体の返礼品を見やすく並べた仲介サイトが林立する。品ぞろえが充実するにつれ、利用者が増えてきた。総務省によると、2023年度に初めて1000万人を超えた。返礼品は規制の上限、寄付額の3割が当たり前だ。仲介サイトから付与される特典ポイントが「自己負担」相当の2000円を上回るケースもある。
納税額に応じ、ほぼ無料で特産品を入手できる。だからオトクだと思ってしまうが……。
「本当にオトクかどうかは、マクロとミクロの両面で考える…
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