お嬢様の華麗で凶悪な顔つき、たまらないです「絶対服従お嬢様」
七竃アンノ先生の「絶対服従お嬢様」は極めて分かりやすいジャンルのマンガです。
表紙のとおり。幼女体型のお嬢様に振り回されたい人向けと、超明確な作品。
内容は、基本変に裏切ること無く、読者側が求めるている「お嬢様に服従させられます!」像を描いているので、そういうのを求めている人には文句なしにおすすめできる安全牌です。つまりぼくとか。
・・・と、たんなる安牌だったら別にそこまで「これすごい!」と言わなくてもいいんですが、本作は「お嬢様に服従」というベースを使いながら、極度に個性の強い絵柄を活かすことに長けています。
読んだあと、絵一つ一つが印象に残る、コマ一つ一つがイラストとして精度が高い。
加えてデフォルメされることによってブーストのかかった表情の描き方がとにかくうまい。
表紙だけみると、そのデフォルメされた表情が載っているのでアクが強い感じしますが、中身は動きも相まってもっとかわいいですよ。
ね! かわいいのよ! うーん、ヒトコマでは伝わらない・・・。
そして読み終わったあとに全部を理解して「あーこの凶悪な顔いいよね」となる仕組み。このやりかた、ウマイけど表紙買いで躊躇う人も多いかもしれないですね、SとMが表に出まくっているので。
個人的にはモチーフとしての「服従」に興味がある人、マンガの描きこみに興味がある人には、一冊完結なのでおすすめしたいのです。
たとえば、扉絵ですがこれ見てください。
イメージシーンですが、まーすっさまじいですよ。
特にヒロイン橘杏の体の少女的フェティッシュの描きこみは尋常じゃないです。
イメージシーンじゃなくても、アクションシーンとかかなーりテクニカルなことをしています。
どうしてそこまでテクニカルなの!ってくらい、アングルや背景に凝りまくってます。
ちょっとしたシーンでもこんな感じ。魚眼ですね。
基本主人公目線で動きますが、映画のようにパタパタとアングルや見せ方が切り替わるので、常にテンションはアッパー気味な雰囲気を醸し出しています。
ここまでアッパーにすることで、ストーリーが「日常の非日常」を描くことに成功しています。
主人公の柳田久仁夫は両親をなくし、妹と二人暮らしで両親の3000万の借金を背負った身。
彼がこのどうにもならない借金を返済するために、大富豪の娘である「橘杏を殺せ」と言われることになります。上の子ですね。
しかしそんな人殺しがうまくいくわけがなく、逆にいつでも爆破できるスイッチのついた爆弾を飲み込まされるハメになり、彼女の下僕生活がはじまります・・・ん?
そもそも「殺せ」といったのはどういうつながりなんだろう。
橘杏はなぜ下僕にしたんだろう。
色々謎は出てきますが、まーそれどころじゃない。だって機嫌そこねてボタン押されたら腹がドカンです。
いつ死んでもおかしくない極限の下僕状態。でもなぜか橘杏に惹かれて彼女を守ることになる柳田。
そりゃ、ピリピリ精神張り詰めてアッパーにもなりますわな。
アッパー的展開の一例。
見ての通り、黒と白のコントラストの使い方(黒髪キャラのベタがすごい画面で強い!)、画面の面積をびっちり埋めるかのような描き込みがずーっと続くので、一冊まるまる躁状態。
ジャンルとしては一応コメディなんですが、鬼気迫るなにか別なものが感じられます。
なんてったって、生きるか死ぬかとの戦いが常時続いていますからね。
この作家さんどこかで見たなーと思ったら、本井広海+本澤友一郎先生なんですね。
「本澤友一郎@七竈アンノ」のプロフィール [pixiv]
「モトイヒロウミ@七竈アンノ」のプロフィール [pixiv]
二人で「七竃アンノ」という名前に合体。
「すてんばいみ〜!」や「オニギリ!!!」はもう絵がすごいツボで即表紙買いだったんですが、どおりで惹かれるわけだよ!
女の子の骨格と筋肉の描き方に対する執着心がハンパじゃない漫画家さんです。
ここまでライフワークのように女の子の身体描写にこだわるんだもの、作品での少女オーラが尋常じゃないのも当然ですわ。
こだわりまくっているため逆に1Pごとのアッパー感が強すぎるのも事実。なので、「お嬢様に振り回されたい!」という願望ない人には読んでいてキツめな部分もあるかもしれません。
しかしそれはいい意味のふるいになっていて、「振り回されたい人」にはもうドストライクなわけですよ。
お嬢様お背中ながさせてください!
柳田の立場であれば、恨んだり憎んだりもしそうなもんですが、どうにも彼女の「覚悟」に近いものに引き寄せられる感覚。
命のキケンのタイトロープを渡りつつも、めちゃくちゃな展開の中で日常を保とうとする彼の中に、何かが芽生える感覚。
もう一人のヒロイン寺里の存在もあり、読者側と柳田の感情がうまくシンクロし、どんどん躁になっていくのを楽しめる作品です。
一巻で終わっているのがもったいない感じがしますが、この作家さん他の作品もそうなんですがとにかく一冊が極めてアッパー系麻薬のような書き込み量と刺激の強さなので、ちょうどいい気もします。
むしろ見られるんなら、この作品の尺を薄めて伸ばすよりも、二人の続きが見たいなあ。
いやあほんと……幼女体型ドSっ子はいいものですね。