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円錐振り子とは|解説と代表例題

この記事では力学の代表例題として,円錐振り子を扱います。円錐振り子を考察するには,力を正しく考えることができるか,円運動を正しく考察できるかなど,初心者が身につけるべき物理の力がバランスよく求められます。よって大学入試でもしばしば出題されます。

円錐振り子とは

円錐振り子

円錐振り子とは一般的には上のような系になります。すなわち,天井に一端を固定されたひもに質点を結び,適当な初速度を与えて点線のように円運動させたものです。ここで,ひもは伸び縮みしない,質点は同一平面上を運動する,という束縛条件があります。

円錐振り子の系では,円運動を考察することが必須になります。円運動については以下の記事を参照してください。
円運動とは|円運動における加速度・向心力・遠心力

円錐振り子の運動を解く

円錐振り子の力 円錐振り子の運動を考察するには,当然まず運動方程式を正しく書くところから始めなければなりません。質点にはたらく力は上図のようになります。

糸の張力と重力がはたらいていますが,まず考えるべきはどの方向の運動方程式を立てるかということです。ここで質点は同一平面内を円運動するのが円錐振り子であるという条件を使います。このことから,鉛直方向の力がつりあっていることがわかります。また,鉛直方向と直交する円運動の向心方向を考えれば,円運動の運動方程式が立てやすいこともわかります。以上より,運動方程式を立てるべきは,鉛直方向と向心方向であることがわかりました。よって張力をこれらの方向に分解するのが定石になります。

よく張力と平行な方向の力がつりあっている,と考えてしまう人がいますが,これは誤りです。円運動を考えてみると向心方向(=張力と平行な方向の成分を持つ方向)に加速度があるので,その方向には力がつりあっていないことがわかります。

以上のことを踏まえて,以下では例題を通して円錐振り子の系を理解していきましょう。

円錐振り子の例題

例題1

長さ ll の糸で吊るされたおもりが,糸と鉛直方向との角度を θ\theta に保ちながら水平面内で等速円運動している。円運動の周期 TT とおもりの速さ vv を求めよ。 円錐振り子の例題

この問題が最も基本的な円錐振り子の例題です。前節の考察を踏まえて,鉛直方向と向心方向の運動方程式を立ててみます。張力を SS とおくと,

鉛直方向: 0=Scosθmg(i)0=S\cos\theta-mg\qquad (i)
向心方向: mlsinθω2=Ssinθ(ii)ml\sin\theta\omega^2=S\sin\theta\qquad (ii)

ここで円運動の半径は lsinθl\sin\theta であることに注意してください。
(i)より S=mgcosθS=\dfrac{mg}{\cos\theta} がわかります。これを(ii)に代入すると, ω=glcosθ\omega=\sqrt{\dfrac{g}{l\cos\theta}} を得ます。

よって求める周期 TT と速さ vvT=2πω=2πlcosθgv=lsinθω=lgsinθtanθ T=\dfrac{2\pi}{\omega}=2\pi\sqrt{\dfrac{l\cos\theta}{g}}\\ v=l\sin\theta\omega=\sqrt{lg\sin\theta\tan\theta} がわかります。

例題2

垂直抗力による円錐振り子 上の図のような半球型の容器上で,質量 mm の質点が点線のように半径 rr の等速円運動をしている。半球面と質点の間に摩擦はないとする。ここで図のように角度 θ\theta を定める。

(1)質点が半球面から受ける垂直抗力の大きさ NN を求めよ。

(2)等速円運動の周期 T(θ)T(\theta) を求め,前問の周期と一致することを確かめよ。

(3)limθπ2T(θ)\lim_{\theta\to\frac{\pi}{2}}T(\theta) の値を求め,その値に対し,物理的考察を与えよ。

一見円錐振り子に見えない系ですが,これも円錐振り子の亜種とみることができます。なぜなら,半球面から質点が受ける垂直抗力が,一般的な円錐振り子における張力の代わりをしているからです。考えてみると,この問題で質点が受ける力は,円運動の中心軸上のある点に向かう垂直抗力と、重力のみであることがわかり,張力が垂直抗力であること以外は,円錐振り子と全く同じになります。

よって前問と全く同じ考え方が使えます。まず運動方程式を立てると,

鉛直方向: 0=Ncosθmg(i)0=N\cos\theta-mg\qquad (i)
向心方向: mrω2=Nsinθ(ii)mr\omega^2=N\sin\theta\qquad (ii)

となります。(i)より N=mgcosθN=\dfrac{mg}{\cos\theta},これを(ii)に代入して,ω=grtanθ\omega=\sqrt{\dfrac{g}{r}\tan\theta} がわかります。得られた ω\omega から T(θ)T(\theta) を求めると, T(θ)=2πrgtanθ T(\theta)=2\pi\sqrt{\dfrac{r}{g\tan\theta}} となります。r=lsinθr=l\sin\theta とおきなおすと,前問の結果と一致することがわかります。

また求めた結果で単純に θ=π2\theta=\dfrac{\pi}{2} とおいてはいけません。なぜなら,rrθ\theta に依存するからです。
正しくは,前問の結果を用いて limθπ2T(θ)=limθπ22πlcosθg=0 \lim_{\theta\to\frac{\pi}{2}}T(\theta)=\lim_{\theta\to\frac{\pi}{2}}2\pi\sqrt{\dfrac{l\cos\theta}{g}}=0 とするのが適切です。θ=π2\theta=\dfrac{\pi}{2} の時は垂直抗力が鉛直方向成分を持たないため,重力とつりあう力が存在せず,このような結果になると考えられます。

円錐振り子を通して,力学で基本的なことがたくさん学べます!