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どんなパンが届くかを考える「わくわくする時間」を届ける。会員数3万人のパンスクが語るユーザー体験で「情緒的価値」を大事にする理由。
パンのサブスク「パンスク」さんを取材しました。
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「パンスク」について教えてください。
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矢野:
全国のパン屋さんからパンが届くサブスクサービスです。会員数は3万人を突破していて、全国の85店舗のパン屋さんと提携しています。
最初の5,000人まではクチコミやPRを起点に、3万人まではそこに加えて広告も活用しながら、地道に伸ばしてきたという感じです。
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パンスクを「スタートした経緯」を教えてください。
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矢野:
パンスクをはじめる前に、原料などをカスタマイズできる「オーダーメイドパン」のEC事業で、失敗したときの経験がもとになっています。
そのときの発見としては、オーダーメイドパンよりも、余ったパンを詰め合わせた「おまかせセット」が、売れていると気づいたことです。
いろんなパンが送られてきて、冷凍庫をガサガサしながら「今日はどのパンを食べようか」と考える体験が、すごく楽しいのだなと思ったんですね。
オフィス向けサービスからはじめたときも「毎回種類が変わって楽しい」「社員の会話のきっかけになる」という声も多かったです。
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ユーザー体験で「大事にしているポイント」があればぜひ教えてください。
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矢野:
パンスクの体験として、機能的価値より「情緒的価値」に良さを感じる方が多いんですね。なので、わくわくする時間をつくることは意識していて。
例えば、メールで「そろそろ発送しますよ」とは連絡するものの、直前までどのパン屋さんかは明かさない。すると「どのパン屋さんから届くのかな」とわくわくしてもらえます。
また、箱を開けてはじめてパンがわかる。すると開封時に「どの順番で食べようか」と考えるので、そこにもわくわくする時間が生まれます。
パンの種類を選べないことで「こんなパンがあるんだ。こんなに美味しいんだな」と、パンの世界が広がっていく体験もしてもらえます。
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逆に、どのパンが届くかを言ってしまうと、そこからあとは「食べるだけ」で想像できてしまうので、開封体験が作業化してしまうんですよね。
というので、ただパンを届けるだけじゃなくて、パンについて考えている時間も楽しめる設計にすることで、情緒的な価値を提供しています。
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パンスクでは、パン屋さんにメッセージも送れるのですが、実際にそれを見ても情緒的な価値に触れてくれるユーザーさんが多いですね。
例えば「家族が住んでる町のパン屋さんで懐かしい気持ちになった」とか「ベーグルってこんなに美味しいと知らなかった」みたいな感じです。
もし「高クオリティのパンが届く」という、機能的価値だけに良さを感じていたら、利便性に対するコメントばかりになると思います。
パン屋さんはどのように開拓したのでしょうか?
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矢野:
はじめのパン屋さんの開拓は、新しいサービスということもあって、なかなか理解してもらえなかったので、丁寧に足を運んで説明をしました。
店長さんは店に立っているか、パンをつくっているか。電話しても忙しくて聞いてもらえないので、忙しくない時間にお店にいっていました。
発見としては、お伺いして「空き時間で売上が上がります」というと、その言葉を出した瞬間に怪訝な顔をされることがすごく多かったこと。
パン屋さんは売上を伸ばすよりも、美味しいパンを食べてほしくて経営しているお店が多いためです。商人気質よりも職人気質なんですね。
そのため、「美味しいパンを地域外の方にも届けましょう」とか「安定した継続的な発注ですよ」と提案したほうが話を聞いてもらえました。
また外部からのこうした話って「卸の提案」が多いんですよ。パン屋さんにとってはクライアントビジネスで、面倒なものという印象も強い。
昼頃までに納品が必要だったり、人を増やしたら短期で打ち切られたり、手間や負担が増えるし安定しないものという先行イメージがあった。
売上アップ=負担も上がると思われてしまうので「そうではないんですよ」というのを伝えるところに、最初は苦労がありましたね。
【取材協力】
株式会社パンフォーユー:https://panforyou.jp/
パンフォーユー 矢野さん(@ynkenta)
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