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『広告ビジネス次の10年』刊行記念コンテンツ

米オムニコムと仏ピュブリシス、合併解消からの示唆/『広告ビジネス次の10年』発売直前アップデート

 9日、米オムニコムと仏ピュブリシスは2013年7月から進めていた対等合併の計画を撤回すると発表した。『広告ビジネス次の10年』発売直前に飛び込んできたニュースについて、現時点までの情報を元にその背景を考えてみたい。

世紀の合併、まさかの撤回

日本市場におけるピュブリシス・オムニコム・グループの余波は電通とWPPを通じてもたらされる可能性が非常に高い

 上記は拙著『広告ビジネス次の10年』で述べた予想だが5月8日のニュースで早速「より一歩現実に」進むことになった。

 先週5月8日(ロンドン/ニューヨーク)で発表された「仏ピュブリシスグループ、米オムニコムグループの合併計画解消」のニュースが業界を走った。その理由や是非に関しては発表記事に任せるが、業界史上最大のグローバル合併だっただけに要因は想像の域を超える。中国を含む世界各国当局の審査を通過し、対等合併(片方による吸収買収ではなく)というアイデアを実現させつつグローバル税務をクリアにし…と過去に経験値の少ない複合的な要因が背景にあり、簡単に私達には語られないのが現状だ。

 ニュースの中で印象に残った言葉を抜き出してみる。業界1位の座が確保できた英WPPのマーティン・ソレルCEOは

I don't think it was a surprise. It was probably somewhat surprising that it came so quickly.
「驚くほどの事ではない想定内。むしろあまりにも予期していた事が早く実現した事が驚き」

 と牽制しているがオムニコムのジョン・レンCEOは

As you know a good concept is worth nothing unless it can be brilliantly executed in a timely way.
「素晴らしいコンセプトというものは、見事に時間内に着々と実施された時だけが陽の目を浴びる」

 と述べピュブリシス、モーリス・レヴィCEOは、

The fact that we are not realizing a dream doesn't mean that we have no dream.
「描いた夢が実現しなかったからと言って、夢が消えた訳ではない」

 と前向きなコメントを残している。週末に発表された結果、株価の動きも限定的で両者合併発表時より高い価格のまま週末に突入した。

 水平統合であるホールディング会社同士の合併よりも、テクノロジーを含む成長分野の取り込みが必要との論もある。行き着く先はデータ獲得競争を睨んだことであるのは間違いなく、モーリス・レヴィCEOもそう語っている。

 グーグル、フェイスブックを始めとしたマーケティングテクノロジー企業との競合、協業に始まり、メディア企業、通信キャリア企業、コンサルティング企業までをも含む業界を超えた座組が待っている。日本でも広告同業同士の結合として1996年にDAC(デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム)等の水平統合の時代があったが、今は業界外のパートナー選びの手腕が問われている。

一連の動きから感じられること

 広告・マーケティング業界として学びたいことは、前出CEO達やグループは「見えぬその先」を考え、自ら模索し行動していることだ。

外野の声をもろともせず対等合併に挑戦したのも業界の外を見据えてのこと。さらに風当たりの強い「解消」を9か月間で選んだこと。これらは闇雲な動きではなく、トレンドとテクノロジーに関してCEO自らが指針を語り組織とコミュニティーを動かしている点を学びたい。日本の広告・マーケティング業界でこれだけの知識を日々修得し、リーダーシップを発揮できるトップが率いる企業は何社あるだろう。

 決して1社、1人で解決できるファクターではない。ピュブリシス、オムニコムでさえ「勉強中」なのだ。デジタル&グローバル時代において、世界の潮流に日々接しつつチームを引っ張るリーダーに求められる素養とは何か。この合併発表と合併解消の「余震」はデジタル化、グローバル化が進む中で求められつつある、新たな事業モデルの構築から個人のスキルセットまで、あらゆる取り組みが「震源」となってることを感じたい。

 自分、自社の「次の」アクションを考えてみるテーマとして今回の発表は示唆に富む素晴らしい発表であった。5月14日発売の『広告ビジネス次の10年』では2013年末までの情報を元に合併発表の背景について収めている。今回の発表と照らし合わせ、ぜひじっくりと読んでいただきたい。

担当編集より

『広告ビジネス次の10年』
著者:横山隆治、榮枝洋文
1,800円+税 翔泳社

 担当編集の押久保です。『広告ビジネス次の10年』発売直前にオムニコムとピュブリシスの合併解消のニュースが飛び込んできました。びっくり!だったのが正直なところですが、書籍の内容をフォローする意味で合併解消についての見解をもらえないかと横山さん、榮枝さんにお願いし本記事を掲載しております。

 合併発表の背景について本書でたっぷりと書かれております。今週14日、15日あたりから書店さんに並びはじめる予定ですのでぜひご覧ください。アマゾンSEshopなどで予約も受付中です!

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この記事の著者

横山 隆治(ヨコヤマ リュウジ)

横山隆治事務所 代表取締役
ベストインクラスプロデューサーズ 取締役
トレンダーズ 社外取締役

1982年青山学院大学文学部英米文学科卒業。同年、旭通信社(現・アサツー ディ・ケイ/略称:ADK)に入社。インターネット広告がまだ体系化されていなかった1996年に、日本国内でメディアレップ事業を行う専門会社「デジタル...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2014/05/13 14:00 https://markezine.jp/article/detail/19935

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