2016/10/13
予約したPlayStation VR(PSVR)を受取りに有楽町のビックカメラに行った。その帰りにタクシーに乗った時のエピソード。その時の運転手さんはラジオDJのようなほんと軽快なトークで非常に楽しかったのと心に残ることがあったので思い出して書き起こした。
69歳のタクシー運転手さん(以下 タ)
GOROman (以下 G)
G 「ーーー(目的地)までお願いします」
タ「あー、そのビルだったら反対車線ですよ。遠くなるから、降りてあっちから乗った方がいいですよ。」
G 「そうですか。。。まあ、いいですよ。お願いします。」
タ「 いいの?じゃあこのまま真っすぐ行って遠くなっちゃうけど。」
(しばらくして、後ろをチラチラ気にする様子)
タ「お客さん、その紙袋の気になってるんだけど何??朝からそれ買って持ってる人みてるんだよ。」
G 「これですか?これは、バーチャルリアリティといって映像の中に入ってしまえるような機械です。プレイステーションにつないで、VRといって(以下、ながながと薀蓄)」
タ「あー、ごめん。お客さん。せっかく話してくれたけどぜんぜん理解できんかったわ・・・。」
G「 一言でいうとテレビの中に入れちゃう感じです。テレビは平面ですよね?」
タ「え?どういうこと3Dの映画とかテレビと違うの??どういう機械???」
G「3D映画はスクリーンがあって飛び出すだけじゃないですか、これは、本当に海の中とか旅行とかできちゃう感じです。上をむいたら空が見えるし、後ろも見える。」
タ「え!旅行できるの?それはどうやってつくるの?映像を買うわけ??」
G「 コンピュータの映像です。」
G「(パッケージを取り出しながら)こんな感じのです。メガネみたいに顔に被る感じ。」
タ「 へぇー、顔につけると映像が見えるの?(まったくよくわからない様子)」
タ「どっかで映像を撮るの?誰かが(テレビのイメージ)」
G 「そうそう。世界中で作ってる人がいます。コンピュータの映像です。」
タ「で、テレビのチャンネルみたいに一杯あるわけ??映画選んだり。」
G「そんな感じですね。この中でソフトを買ったり」
タ「あー、いろいろ買うんだ」
タ「この機械はいくらするの??」
G 「5万円くらいですね」
タ「へーーーーー」
タ「今日は朝6時位からこの辺走ってたわけ。でビックカメラのとこ通ったら」
タ「こちらは予約してる方のお並びの列ですとかなんとか、言ってるわけよ。それでまたごちゃごちゃって他に行く人もいて。それでなんだろうと思ってその時はわからなくて。」
タ「それでね、二回目も並んだの。8時半くらいかな。そしたらほら、買った人が乗るかと思って。」
G 「で、待ってたわけですか。」
タ「そしたらまた他の人が乗っかってて。で、今回、お客さんが乗ってきて、ほ?!っと見たら、持ってる!!これは、持ってる!と思って!」
G「ああ、これは聞いてみよう、と思ったんですね。これは何なんだ?!みたいなw」
タ「そう、いったい何なのか聞かなきゃ!と思ってw。何なんだ?!、って本当、何なんだ?!ですよ!!」
G「 朝いったい7時とかって何人くらいいたんですか?」
タ「あの、何人かっていうよりは、もう行列。ビッグカメラの信号あるでしょ?外堀きて。左へ曲がるとビッグカメラこうあるじゃないですか。で、僕はこうきてこう並んだから、ちょっとわからないけど、相当並んでた!!」
G「相当いたと言うわけですね。」
タ「それでね、もう二回目に並んだ時にはレジがあいてたの。まだそん時は全然10時前よ。9時くらいかな。レジが7台あった!・・・・でね、勘定したの!いくら儲けるんだ、これは、と。」
G「わはは!。どのくらい儲かるんだ、これは!と?1台いくらなんだ?!みたいな」
タ「 それで、こっちの方の親分みたいな、チーフみたいな人が、お一人様、こっちって案内して、で別の人間が、はいどうぞ、はいどうぞ、ってやるわけよ。そうすると、レジの前に、なんかぶら下がってるの。なんか紙みたいなやつが。その紙をとって、一緒に買う人がいるの。」
G「あれは、抽選券でしょうね。番号でやってたから。それは。」
タ「あ、そうなんだ!それでね。確かに、とにかく、とにかく、すげえ儲けだろうなって。」
G 「わはは」
タ「で、時間前だから、10時前だから、これはすっごいなあ〜と思ってさあ。」
G「多分今日のニュース番組とかで、いろいろ出ると思いますよ。」
タ「そう、そう、すごいのよ、カメラがね!」
G 「いっぱいいましたよねえ」
タ「フジテレビが来てて、あと、ZIP! (日本テレビの番組)が来てて・・」
G「あ、ZIP!いましたね、さっき」
タ「そうでしょ!いたでしょ!それから・・・、もういっぱい!とにかく全部来てた!。カメラを持ってるのと、マイクを持ってるのが、こうやっていて。だけどね、女のキャスターがいなかった。全部男ばっかだった。」
G 「あ、男性ばかりでしたか。」
タ「いつも女のこう若い子がいてねえ、それ見るのが楽しみの一つなんだけど、今日は女いない!みんな男!」
G「なるほど。まあこう言う新しもの好きは、男の人が多いかもですねえ。」
タ「 それ(PSVRのこと)、これからお客様は、そのままおうちに帰ってすぐやるわけ?」
G「いやいや、一回会社に行きますよ。」
タ「あ、これ置いて!」
G「はい、会社に。」
タ「まず大事なものを置いて!」
G「 そうですね。」
タ 「『ちょっと・・・タクシーが、事故やっちゃって』、って言って二時間くらいあけて、それやらないと!せっかく5万円で買ったんだから!!」
G「 わはは」
タ 「タクシーの運転手がなんだかぶつけちゃって、ちょっと遅れます!」みたいな。」
G 「『すみませーん!』みたいな」
タ「 なんかもう遅れる!って証言してあげるから。」
G「それで家でこれ(PSVRのこと)やってからね、会社にね(笑)」
タ「それで、『え、事故?誰の事故?』なんてね言っちゃダメですよ。会社の責任になる!」
G 「僕、これはね、20年くらい待ってたんですよね、やっぱり。いつか、映像の、テレビの中に入れると思ってたんですよ。いつの日か。」
(PSVRをポンポンと叩きながら)
タ「あ、もうそんな20年も前からそう思ってたんだ!」
G「そうそうそうそう。」
タ「 いつの日かテレビの中に入れると!」
G「そうそうそうそう!映像の中に入れる時代が来ると思っていて。」
タ「で、それが出たわけ!」
G「そう、そうなんですよ!」
タ「じゃあ、もう予約して。」
G「そう、そうなんです。嬉しいですよね。」
タ「そりゃそうでしょう!」
G「生きてるうちにねえ、全然違う世界に行けるわけですから。海の中でも宇宙の中でもどこでも旅行できちゃうわけですし。」
タ「 はぁ〜、すごいねえ・・・すごい時代だねえ・・・すごい時代ですよ!!!!!!」
タ「僕がね、45の時にね、いま69歳だから、えーと、45歳だと、25年前?」
G 「25年前ですね」
タ「25年前にね、会社でこう言われたのよ。”40過ぎた人間はいい。だけど40過ぎてない人間がコンピューターできなかったら辞めてもらうよ!”と。こう言われたの!」
G「おお〜。じゃ、けっこう、当時すごい進んでますね。」
タ「で、45だから、40過ぎてるから、やらなくてよかった。」
G 「わはは」
タ「で、やらないでいいから、今こうやっていろんなことを聞いて、で、娘に言われたのじゃないけど、「本当にガラパゴスね」、と。だから、スマホなんか使えないわよ。」
G「でも、その時代にこんなコンピューターを世界中の人が使うなんてなかなか思えないじゃないですか。」
タ「そう!!!そう!!!だから、要するに、コンピューターをバカにすることが僕らの一派の合言葉。」
G「ああ、あんなもんが・・・ってw」
タ「『コンピューター、コンピューター』って、バカか?!!と」
G「わはは、なるほど」
タ「で、野村が、野球のね、キャッチャーの。あれが、コンピューターなんとかってやり始めた時に、『バカだな!ああ、ノムももうこれで終わりだな!』と。」
G 「コンピューターとか言いやがって! みたいな」
タ 「『コンピューターで野球ができるか、バカやろう! 』って。ね、『だからヤクルトダメなんだよ! 』ってそんなことを言ってたの!」
G 「わはは。じゃあ、『まさか、まさかこんな風になるとは!』みたいなことなんですね。」
タ「その一派がけっこう多かったのよ。」
G「 なるほどなるほど。」
タ「 要するにだからさ、こんなにさ、すごい変革の時代に生きたのよ!僕は。」
G 「そうですね。まさに。」
タ 「そこに、乗り損なったやつが、ついていかない!」
G「 なるほどなるほど。」
タ「もう、こうなった以上、ついていかないことを、誇りに思っている!」
G 「わはははははは。あえて!」
タ「 そう、あえて!生涯、これ(ガラケー)だ!」
G 「いいと思いますよ」
タ「これ(ガラケー)だってさ、抵抗あったのよ、最初は。」
G 「ああー。「携帯なんて!」って?」
タ 「そう、全部うちスマホになったけどさ、俺だけは。女房偉いよねえ。ほとんど同じ年なんだけど、スマホやってこんなことやってるよ!」
G「 いやあ、あれですよ。今かえって、コンピュータが易しくなってるんですよ。人に近づいて、優しくなってるので。」
タ「 そう!だから、そういう風にね、頭じゃ、理屈じゃわかってるんだよ? 要するに、すごいことができて、簡単になってるって。だから、娘じゃないけど、『お父さんの使ってるこのガラケーの方がよっぽど難しいのよ』って。」
G 「ああ、そうですね。」
タ「ただね、覚えちゃうわけでしょ。一回、真剣に覚えたわけよ!」
G「ええ。そうなると、なかなか次のものに代わる、っていうのが難しいですよね。」
タ「 その通り!!!要するに、もう変えたくないのよ!人生をね!」
G「わかりますよ。大変じゃないですか?一からやり直すの。」
タ「 そう!!大変なのよ、いくら簡単になってもね!」
G 「『簡単』をやり直さなきゃですもんね。練習をし直さないといけないですからね。」
タ「 そう!!もうーやだやだ!!!。どうして、そういう風に言ってくれるようにならないのかな・・・うちの娘は・・・・。」
G「 はははは」
タ「けなすばっかりなんだよねえ。『全然、こっち(スマホ)の方が簡単で!すごくいい機能がいっぱいなのに!』って。」
G「それは、使ってみないとわからないですからねえ。結局。」
タ「ねえ。もう、いい。もうガラケーだけで死んでいきたい。」
G 「ははは」
タ「あ〜でも、そう、そんな風(VR)になってるの。じゃあ、倅(せがれ)も買ってるなあ。」
G 「これ(VR)は本当に、ラジオがテレビになったくらいの衝撃ですからねえ。ちょうどいいタイミングだと思いますね、今日という日は。」
タ「ああ、そう。そうなんだぁ・・・。あ、次の信号左ですよね。」
G 「あ、はい。ありがとうございます。」
タ「うーん・・・・(考え込む)」
G「本当、難しいんですよね。その、ラジオしかない時代に、テレビを説明するくらい、これを説明するのは。」
タ「あー、絶対わかんない!!」
G「だから、これをテレビで、ニュースで取り上げても、たぶんほとんどの人がポカーンってなると思いますよね。」
タ「ああー。これ、どこが作ったんですか?」
G「これ、ソニーさんですね。」
タ「また、ソニーの株が上がるんだ。」
G「どうでしょうねw。わかんないですけどw。ただ、あのソニーさん以外にもいろんな会社が今こういうのを作ってるので。昔、すごいパソコンが流行ったみたいな感じですよね。」
タ「ああ、そうなの!」
G「そうそう、20年くらい前に。」
タ「ああ、流行りましたよ!」
G「そうそう。テレビのCMがパソコンだらけの時が。」
タ「ああ、そうそうそうそう。」
G「それに近い感じがしますね。」
タ「そん時に、うちの会社もパソコン入れて。」
G「『もう今はコンピュータだ!』って言って?」
タ「そう、で「40過ぎてたらいい」「無理は言わん」と。」
G「 その代わり「40以下だったら、やりなさい」と?」
タ「そう!『やらなければ会社は辞めてもらう』くらいだったのよ。」
G「 ああ、そのくらいだったんですね。」
タ「そん時45歳だったから、セーフ!!!」
G 「セーフ!。「覚えなくて、済んだ!」みたいな」
タ「それがいいか悪いかわかんないだろう?」
G「 なるほど」
タ「覚えなくて済んだこと。それが、今となっては非常に悪くなっちゃったよね・・・。」「ここで止めていい?」
G「 はい、ありがとうございます。」
G「 支払いはコレ(SUICA)で」
タ「 はい。これも一生懸命覚えたんだよ・・・。」
「お客さん、ありがとう!」
最後に支払いをSUICAでしたんだけど、
運転手さんは巧みに機械を操作していた。
そうコンピュータ大嫌いで
頑なに拒否してきたはずが、
もうコンピュータは空気になって
生活に溶け込んでいたんだ。
ぜひVRも体験してほしいなあ。
おわり。
本が出ました
ミライをつくろう! VRで紡ぐバーチャル創世記
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