スポーツサーモスタットについていろいろ考えていたのですが、だんだん話が大きくなってきたので、記録に少しまとめておきます
冷却水の水路の途中にはサーモスタットがあります
水温によって冷却水の水路の塞いだり開いたり
まずはなぜサーモスタットが必要かという話です
水冷エンジンはエンジン内に冷却水を流してエンジンを冷やしています
エンジン始動時は冷却水はほぼ外気温程度
しかしエンジンには設計時に想定した適正温度があります
金属類は熱により膨張収縮しますから、エンジンの温度により金属どうしのクリアランスが変化します
想定した温度になったときにベストになるように設計されているわけです
適正温度を大きく外れたところで使用すると、クリアランスが広かったり狭かったりして異常な磨耗が起きたり、想定以上に燃焼室からガソリンなどがオイルに落ちたりします
また燃焼効率も適正温度で一番良くなるように調整されています
水温が適正温度をはずした状態では、ECUからの補正が入り、燃費が悪化したりパワーが抑えられたりもします
燃料が濃い状態で走れば、カーボンが溜まりやすかったりもします
ですからエンジンをかけたら早く適正温度まで上げたいわけです
しかしここでラジエーターに冷却水を流してしまうと、せっかく暖まった冷却水が冷えてしまいなかなか適正温度まであげられません
なので冷却水の通路を設定された温度まで塞いで循環を止め、水温上昇を早めてやろうというのがサーモスタットです
アリストの2JZは整備書によるとサーモスタットの開き始め温度は80~84℃
その温度に到達するまでは冷却水はラジエーターを循環せずバイパス側を通っています
ノーマルだと平均的水温は90℃ぐらいですね
92℃付近まで上がると電動ファンが回り、それ以上水温が上昇することを防いでいるようです
つまりメーカーが考える適正温度は90℃ぐらいのようです
サーモスタットはラジエターへ流れる冷却水の量を調整して適正温度を維持しているわけです
これがサーモスタットの基本的な役目です
ではスポーツサーモスタットとはどんなものなのか
純正のサーモスタットは開き始め温度は80℃~、そして全開に開くのは94℃となっています
通常ではなかなか92℃付近から上回らないので、弁が全開にならないということになります
全開にならないということは、ラジエターの能力を100%使い切っていないということでもあります
スポーツサーモスタットは開弁温度・全開温度ともに10℃ぐらい引き下げられています
70℃ぐらいで開き始め、80℃ぐらいで全開になります
普通に走っていれば、常にサーモスタットは全開ということになります
ノーマルサーモスタットでは半開で90℃ぐらいを維持しようとしますが、スポーツサーモスタットでは早い段階からLLCをフルでラジエターに循環させ、冷却率を上げます
つまり水温を下げる効果があるということになります
ただし弊害もあり、開弁温度が下がるためエンジン始動後早くからラジエターに循環を始めてしまいます
このため水温の上昇が遅くなり、若干ですが暖気運転が長くなってしまいます
また元々ラジエターの容量に余裕のない車(常にサーモスタット全開)では交換してもメリットはありません
残っている余力を使って水温上昇速度を抑えるだけなので、ラジエターそのものの冷却効率が上がるわけではありません
街中程度の負荷ならば水温は下がると思いますが、本格的に負荷をかけたときはノーマルと全く変わらず水温が上がります
ちなみに2JZのサーモスタットの位置ですが、ロアーホースのエンジン側接続部にあります
通常の車ではアッパー側にあることが多いですが、温度の低いロア側にあることで、さらに開きにくくなっていると思われます
水温計はアッパー側で見てますから、ロア側が80℃を越えるのはかなり後になってからのはずです
ラジエターの下側で塞がれているわけですから、開くまでは循環しない高温の水がラジエターのアッパータンクに溜まっています
この辺りがラジエターのアッパータンクを変色させる原因かもしれませんね
仮に水温計が94℃を越えたとしてもロア側はその温度以下ですから、サーモスタットはまだ全開になっていなことになります
そういう意味ではスポーツサーモスタットに替えるメリットはありそうですね
ついでにラジエターの話
アリストのターボの場合、エンジンを冷やす以外にも仕事をしています
1つはエンジンオイルの冷却です
ターボには純正でオイルクーラーが装着されています
とは言ってもオイルフィルターの根元にある小さなもので容量もあまりありません
しかも冷却水を使用した水冷ですから、水温より冷えません
でもこれのおかげで過度に温度が上がることは防がれています
しかしエンジンオイルの熱を冷却水が吸収してしまうため、ラジエーターは余計な仕事をしなければならなくなっています
2つめはATFオイルの冷却です
ラジエーターのロアタンク部分にはATFクーラーが入っていて、ATFオイルはラジエーター内を循環しています
これもエンジンオイル同様の水冷式ですから、ATF油温を冷却水に移すことで冷やしています
冷却水はこの分だけ余計に熱を吸収しているので、ラジエーターの負担は大きいと言えます
普通に飛ばしているときは問題ありませんが、高負荷で連続走行すると水温は上昇し始めます
これを解決するにはラジエーターの熱交換率を上げるしかありません
2層や3層タイプのラジエーターへの交換です
ただし単純に容量だけ上げてしまうと、必要以上に冷却してしまいエンジンの適正温度を外れてしまいます
もちろん冷えすぎればサーモスタットによって水路は塞がれ水温降下を抑えられますが、塞がれてしまうとウォーターポンプが抵抗になりますからあまりよくありません
なので自分の走り方(エンジンの発熱量)に合わせた選択が必要だと思います
逆を言えば暖気の部分だったり通常走行だったりなど、どこかを切り捨てて走りに合わせるというような選択になるかもしれません
また別の方法としてラジエーターの容量は増やさず、エンジンオイルクーラーやATFオイルクーラーを装着し、個別に冷却してやることでラジエーターの負担を軽減する方法もあります
ターボ車の場合オイルの負担は大きく、油温上昇によるオイルの劣化はタービンプローにも繋がるので、エンジンオイルクーラーは付けても損はないパーツだと思います
ただし単純に取り付けるとエンジンオイルのオーバークールが起きる可能性がありますから、サーモスタット付きのオイルブロックを使用したほうがいいかもしれません
設定した温度より下のときはオイルクーラーへ流れないようになっています
エンジンオイルも適正温度を±30℃はずした状態で使用すると一気に劣化が進むといいますから、こちらもやはり適正温度が大切ということになります
サーモスタットだけでなく、ラジエターも含めた話になってしまいました
よかったら参考にしてください
※毎度のことですが、自分の知識と独断で書いてますので、間違ってたらごめんなさい