Location via proxy:   [ UP ]  
[Report a bug]   [Manage cookies]                

Linux版「TwinCAT」登場へ、半導体製造やロボット業界などの採用拡大狙うベッコフハノーバーメッセ2024(1/2 ページ)

Beckhoff Automationは、同社のPCベース制御ソフトウェア「TwinCAT」について、オープンソースOSである「Linux」対応版を追加する予定だ。従来のWindows版では採用に課題のあった半導体業界や、Linuxユーザーが中心のロボット業界、アカデミアなどでの利用拡大を狙う。

» 2024年08月23日 12時00分 公開
[永山準MONOist]

 ドイツのBeckhoff Automation(ベッコフオートメーション/以下、ベッコフ)は、同社のPCベース制御ソフトウェア「TwinCAT」について、オープンソースOSである「Linux」対応版を追加する予定だ。従来のWindows版では採用に課題のあった半導体業界や、Linuxユーザーが中心のロボット業界、アカデミアなどでの利用拡大を狙う。2024年第3四半期の市場投入を予定している。

 世界最大級の産業見本市「ハノーバーメッセ(HANNOVER MESSE) 2024」(2024年4月22〜26日/ドイツ・ハノーバー)で発表した。

Linux対応版TwinCATの展示[クリックで拡大] Linux対応版TwinCATの展示[クリックで拡大]

Windows版では難しかった業界へ

 TwinCATはWindowsがインストールされた産業用PC向けとして展開し、多くの実績を持つ。ただ、同社によると、半導体業界などではハードウェアやソフトウェアの変更があった場合事前に報告する必要があるため、頻繁にアップデートが行われれるWindowsの場合、採用が難しいという課題があったという。また、ROSを用いるロボット業界および、アカデミアなどLinuxユーザーが中心の業界からもLinux対応を求める声があったという。同社はこうした市場の開拓/拡大に向けて、新たにLinux対応版を開発したとしている。

 ベッコフ日本法人の代表取締役社長である川野俊充氏は、「この対応が実現したことで、ようやく、内製の場合とTwinCATを平等に比較してもらえることになる。既に日本の顧客の引き合いもあり、本当に待ち望まれていた対応であることは間違いない」と期待を見せていた。

Windows版ではできなかった2つの機能

 今回発表されたLinux対応版TwinCATは、Linux上でTwinCATが動作する標準仕様の「TwinCAT L(TwinCAT runtime for real-time Linux)」に加え、それぞれWindows版には無かった機能を実現する2つ製品をラインアップしている。

TwinCAT L(TwinCAT runtime for real-time Linux)の概要 TwinCAT L(TwinCAT runtime for real-time Linux)の概要[クリックで拡大]

 1つはコンテナ機能を搭載した「TwinCAT C(TwinCAT runtime in containers)」だ。従来のWindows版では基本的に複数の機械の制御には別々のコントローラーが必要となっていたが、TwinCAT Cではコンテナ技術によって1つのコントローラー上に複数のTwinCATをインストールできるため、複数の異なる機械を1つのコントローラーで制御可能になるという。

 そしてもう1つは、ハイパーバイザーを使用することでLinux上でWindowsが動作可能となる「TwinCAT WL(Windows on TwinCAT L)」だ。従来のWindows版では、顧客はWindowsOSのセキュリティアップデートやメンテナンスの際に機械を止める必要があったが、「TwinCAT WLであれば、Windows自体は仮想化されているので、アップデートやモジュールの追加、メンテナンスの際も機械の動作を止める必要はなく、可用性を上げられる」(川野氏)としている。

TwinCAT C(TwinCAT runtime in containers)TwinCAT WL(Windows on TwinCAT L)の概要TwinCAT WL(Windows on TwinCAT L)の概要 左=TwinCAT C(TwinCAT runtime in containers)/右=TwinCAT WL(Windows on TwinCAT L)の概要[クリックで拡大]

 なお、Linux対応は「技術的には以前から可能だった」というが、LinuxではGNU GPL(General Public License)で何らの改変を行った場合にそれを公開する義務があるため、自社のノウハウを守りつつLinux対応を実現することが難しい課題となっていたという。川野氏は「今回、ようやくこの課題を解決するめどがついたタイミングで発表することができた」として紹介していた。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.