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前回の記事では125ccクラス最安値のホンダDio110ベーシックを細かく紹介した。ディオ110ベーシックはいわば、新車価格を安価に設定して通勤通学ニーズに特化したモデルであると言える。2024年に価格改定があり25万円少々まで上がったものの、発売時の価格は驚きの21万円。今どき21万円で買える新車があることを嬉しく思うわけだが、それでは同じ通勤通学に特化したライバルとの違いはなんだろう。そこで今回は同じホンダのLEAD125、ヤマハのアクシスZとJOG125の4台を比較してみたい。今回も例によってユーチューブで動画を無料配信しているモトチャンプTVで2024年に公開された「通勤に最適な125スクーターを比較試乗テスト!」という動画をダイジェストにまとめたものだ。

今回の4台は通勤通学に最適といえるモデルたちで、ディオ110ベーシックの25万800円(税込・以下同)が最安値。続くのがジョグ125で26万7300円。アクシスZが28万3000円、リード125だけ唯一30万円越えの34万1000円。価格帯ではディオとジョグが真っ向からぶつかるわけだが、前後14インチタイヤのディオに比べ前後10インチのジョグは圧倒的にコンパクトなボディサイズが魅力。4台中最も全長が短い1740mmでしかない。

タイヤサイズだけ見るとヤマハの2台は昔ながらの前後10インチを採用している。対するホンダはリードが前12、後10インチの異径サイズを採用しディオは前後14インチとなっている。そこで気になるのが重さ。軽量な順から紹介するとジョグの95kg、ディオの96kg、アクシスZの100kg、リードの116kgとなっている。手軽さが魅力の通勤通学モデルなのだから、車重は軽いのがベスト。その意味ではジョグとディオが100kg以内に収まっていてポイントが高い。

エンジンで見るとホンダの2車はまるで違う。安価なディオは空冷2バルブ単気筒であり、排気量も最も小さい。アイドリングストップを採用していることもあり燃費性能はWMTCモード(以下同)で55.6km/Lとなっている。対極的なリードは水冷4バルブ単気筒エンジンで4台中最もパワフルな11psを発生する。それでも燃費は49.2km/Lを達成している。

対するヤマハ勢はジョグ、アクシスZともに同じエンジンを搭載している。空冷2バルブ単気筒で最高出力は8.3psと共通のスペックだ。最コンパクトなジョグだが燃費性能はアクシスZと同じ51.9km/Lになっている。とはいえ4車ともリッター当たり50km近く走るわけで、これは乗り方によって変動するから誤差と言っても過言ではないだろう。

では実用性でいうとどうだろう。いずれも無鉛レギュラーガソリン仕様で、タンク容量はディオが4.9L、ジョグが4.0L、アクシスZが5.5L、リードが6Lとなっている。燃料タンクが最も小さなジョグだと給油回数が多くなりそうだ。だが問題は給油口。ディオ以外の3車はフロントカウル内側に位置しているのだが、ディオだけはシート下にある。そのため給油のたびにシートを上げ下げしなければならない。
アクシスZの試乗インプレ

では試乗してみての印象はどうだろう。スクーターレース経験者であるMCシモが最もお気に入りだったのがアクシスZ。ベースを同じくするジョグに対して2万数千円しか価格は変わらないのにフロントブレーキにディスクを採用していたり、シート下スペースも大きく、価格から見て最もバランスの取れた車両だと捉えている。10インチタイヤによるクイックな操縦性は昔ながらの原付らしさで魅力的な部分。また足を前に出しやすいフロア形状も特徴でライディングの余裕につながりそうだ。

ケニー佐川としては10インチならではの特性が気になったそうで、例えばフロントブレーキだけで強めにブレーキングするとタイヤがロックして転びそうになる。確かにクイックな操縦性は魅力であるのだが、小径ホイールの切れ込むハンドリングが合っていなかったそうだ。だが、4車中最もシート下スペースが大きいことは魅力で、4車いずれもフルフェイスヘルメットは入らないが、アクシスZだけはジェットヘルが2個収納できる。これは大きなアドバンテージだろう。
ジョグ125の試乗インプレ

続いてジョグはどうだろう。コンパクトさが魅力ではあるが小柄なMCシモが「俺でピッタリ」というくらいで、体格の良い人には窮屈に感じられるかもしれない。確かにコンパクトではあるのだが、それなら50ccスクーターでも良いのでは?という意見だった。パイロンスラロームなどでの旋回性は確かに高いのだが、10インチタイヤによるクイックさは時として旋回後のオツリの揺り戻しに繋がることがある。この挙動がある程度収まっているのがアクシスZを選んだ理由でもあったそうだ。

大柄なケニー佐川だとハンドルをフルロック近くまで切ると、確かに膝と干渉してしまっていた。50ccスクーターで良いけれど、もう少し排気量に余裕が欲しいと感じられるユーザーにはベストマッチだといえる。またジョグだけでなく同じエンジンのアクシスZについてもそうだが、MCシモからスロットルオフ時に遠心クラッチが切れるタイミングが早いという指摘があった。それほど大きな問題ではないが、旋回中にクラッチが切れると、駆動力がかからずバランスを崩しがちになる。
リード125の試乗インプレ

3人とも走りにもポジション的にも装備的にも高級感があるとの意見で一致したのがリード。水冷エンジンによるパワーは圧倒的なアドバンテージで、全員が口を揃えてパワフルと表現。MCシモはパーシャルで巡航中の場面から再加速する場合でもエンジンの伸びが感じられて楽しいと表現。またリヤ10インチタイヤのためか旋回性も鋭く、コーナーからの脱出でパワフルさを生かしたダッシュが得られる。これはケニー佐川も同意見で旋回中の安定性が高く、思ったようなライン取りが決まるとのこと。ブレーキングでの安定感も抜群なので安心して乗っていられるそうだ。ただMCシモの言うように35万円近い価格を考えると尻込みしてしまうと言うのも納得だ。

編集長のチャボが最もお気に入りだったのが実はリード。確かにディオやジョグと比べて10万円前後高価なリードではあるが「せっかく新車買うなら、もうちょっと頑張って狙いたい」とのこと。チャボも体格的に大柄ではあるのでリードの車格でちょうど良いのだろう。さらに今回の4台の中で唯一時計を装備しているのもリードなのだ。通勤通学に時計は欠かせないと言うのがチャボの意見で納得。
ディオ110ベーシックの試乗インプレ

では最安値のディオはどうだろう。あらゆるシーンを想定して試乗した結果、ケニー佐川が最も良かったモデルとして挙げたのが実はディオだった。突出した性能はないものの14インチタイヤによる安定感の高さや誰でも不安なく感じられる操縦安定性、ハンドル位置の高さが絶妙でリラックスした乗車姿勢を取れることなどを高得点の理由としていた。MCシモ、チャボともに乗りやすさやライディングポジションの良さを認めていたものの、その印象は「普通」だったようだ。

MCシモいわく「パワーがない」ことがディオの残念ポイント。スロットルをワイドオープンにしても、得られる加速力に見るべきものはない。そこが実は普通に乗れる通勤通学モデルとしての美点であるのだが、やはりスクーターレース経験者からすると物足りなさになるのだろう。ただ、パイロンスラロームをしても突出した面がないため、どこまでもニュートラルな印象とのこと。また真横から見ると良くわかるが、ホンダの2車はキャリアとシート後ろがフラットになっている。積載性という面ではヤマハの2車より有利だろう。