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■2代目マーチをベースにしたマーチボレロ
1997(平成9)年10月14日、日産自動車から2代目「マーチ」をベースにしたカスタムカー「マーチボレロ」がデビューした。特装車を作る日産のグループ会社“オーテックジャパン”が手掛けたマーチボレロは、マーチとは打って変わってレトロな雰囲気の個性的なモデルとして人気を獲得した。
人気のカスタマーカーを手掛けるオーテックジャパン
オーテックジャパンは、1986年に設立された日産自動車のグループ会社である。日産車をベースに特装車を作るメーカーであり、乗用車ベースのカスタムカーと福祉車両、商用特装車の3つのタイプの特装車を作っている。
最近は、メーカー純正のカスタムカー(コンプリートカー)が多数販売されて人気を集めている。日産では、カスタムカーの製作は、グループ会社のオーテックジャパンとニスモ(NISMO)がその役割を担っている。
ニスモは、モータースポーツ活動をメインにし、市販用のチューニングパーツを開発・販売し、さらに市販車をハイチューニングしたコンプリートカーのマーチNISMOやリーフNISMOなど、ほぼすべての日産車ベースのスポーツバージョンのNISMOシリーズを開発している。
一方のオーテックジャパンは、こちらもほぼすべての日産車にAUTECHシリーズやライダー、エアロといったグレードのモデルを手掛けている。簡単に言えば、NISMOシリーズはよりスポーティに、AUTECHシリーズはよりプレミアム感に特化したモデルを開発するように棲み分けされているのだ。
ボレロのベースは世界戦略リッターカーのマーチ
初代マーチは、リッターカーのパイオニアとして1982年にデビューした。内外装を著名なデザイナー、ジウジアーロがデザインしたことが話題になり、洗練された親しみのあるハッチバックスタイルと運転のしやすさが人気を呼び、ヒットモデルとなった。
パワートレインは、日産初のアルミ製1.0L直4 SOHCと4速/5速MTおよび3速ATの組み合わせで、駆動方式はFF。世界戦略車として位置づけられ、欧州では「マイクラ」の車名で販売され、日本と同様、欧州でもヒットした。
1992年にモデルチェンジした2代目は、丸みを帯びたキュートなデザインに変更され、ホイールベースを延長して室内空間を拡大。エンジンは、1.0&1.2L直4 DOHCに変更してパワーアップし、走りについてもレベルアップを図った。
2代目マーチは、コンパクトカーとしての完成度の高さが世界的に評価され、“日本カー・オブ・ザ・イヤー”を受賞し、さらに日本車初の“欧州カー・オブ・ザ・イヤー”に輝いたのをはじめ、“ドイツ・ゴールデンステアリング賞”、“英国オートデザイン金賞”を受賞するなど、世界のアワードを独占した。
内外装ともレトロ風に変貌したボレロ
1997年のこの日登場したボレロは、2代目マーチのボディはそのままに、専用丸型ヘヅドライトや大型のメッキグリル、メッキオーバーライダーなど、レトロ調の高級感のあるデザインを採用。さらに、リヤについてもリヤコンビネーションランプを丸型で立体感のある形状とし、メッキバックドアモールなどを採用して個性をアピールした。
内装も大幅に手が加えられ、アイボリーのシート表皮に合わせてメーターやエアコンパネルにも同系色を採用。さらにインパネやステアリングの一部をウッド調とすることで、スタイリング同様レトロな雰囲気を醸し出した。
3ドアと5ドアが設定されたが、車両価格は3ドアの1.0L仕様で127.8万円(5速MT)/135.3万円(4速AT)、1.3L仕様で158.7万円(5速MT)/168.5万円(CVT)に設定された。当時の大卒初任給は19.6万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で1.0L仕様が150万円/159万円、1.3L仕様が186万円/198万円に相当する。
マーチボレロは、その後もマーチのモデルチェンジと同時に発売され、一定の人気を獲得したが、2018年に生産を終えた。
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実は、オーテックジャパンが手掛けたマーチのカスタムカーは「マーチボレロ」だけでない。ボレロの他にも、マーチベースの「タンゴ」、「ルンバ」、「ポルカ」と、いずれも舞曲の名が付けられたレトロ調モデルが販売されていた。多様なニーズに応えるために、オーテックジャパンとNISMOはその役目を果たしているのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。