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「庵野さん、卒業おめでとう」緒方恵美が振り返る、庵野秀明と碇シンジとの25年

インタビュー

「庵野さん、卒業おめでとう」緒方恵美が振り返る、庵野秀明と碇シンジとの25年

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズの最新作にして完結編となる『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が、ついに公開となった。2007年から『:序』、『:破』(09)、『:Q』(12)と続いた物語が、ついに終わった――。その衝撃と感動に震えた人も多いことだろう。
「庵野さん、卒業おめでとう」と、“誰も知らない結末”へと到達した庵野秀明総監督を祝福するのは、テレビシリーズ「新世紀エヴァンゲリオン」の放送開始から、主人公の碇シンジを25年にわたって演じてきた声優の緒方恵美。ひとつのピリオドが打たれたいま、緒方が運と縁、選択によって導かれたシンジとの出会い。庵野総監督やシンジと過ごした25年を語った。

※本記事は、作品の展開に関する記述を含みます。未見の方はご注意ください。

「庵野さんに『寂しくても仕方ない。終わるの』と言われました」

ついに公開となった『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が大ヒットを記録している
ついに公開となった『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が大ヒットを記録している[c]カラー


1995年にテレビシリーズ「新世紀エヴァンゲリオン」が放送スタートし、新作が発表されるごとに社会現象を巻き起こしてきた「エヴァンゲリオン」。2007年に『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズが始まり、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』では「一体どのような結末を迎えるのか?」と注目されてきた。しかし新型コロナウイルス感染拡大の影響によって公開延期を余儀なくされ、いよいよお披露目となったのが3月8日。待ちに待ったファンが駆けつけ、公開7日で興収33億円を突破する大ヒットを記録している。

緒方は「とにかく無事に公開できてよかったなというのが、いまの一番の想いです」と安堵感を吐露。「もしかして予定通り昨年の6月に公開されていたら、もっと喪失感やいろいろな気持ちが芽生えていたのかもしれません。“公開できない”という時期が続いたので、いまはやっと皆様に観ていただけた、よかったという想いでおります」と公開の喜びを噛み締め、完成作を観て「庵野さんが誠実にお答えになっているなと感じました」と語る。

エヴァンゲリオン初号機に乗り込み、使徒と戦うことを強要された14歳の少年、シンジ。壮絶な戦いを通してシンジの心の葛藤、成長を描いてきた本シリーズだが、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズが終劇を迎えて喪失感を覚えている人もいるはずだ。緒方自身は、「喪失感というよりは、14歳のまま取り残されているよう」といまの率直な心境を明かす。

「本作を録り始めたころ、庵野さんに『本当に終わるんですか?』と伺ったことがあって、すると庵野さんは『終わるんだよ』と。『寂しい』とお話ししたら、『寂しくても仕方がないんだ。終わるの』と言われました(笑)。そのころは『これで本当に終わるんだ……よかった。でも寂しい。でもよかった』と、複雑な気持ちを抱えながら向かっていました。まだ台本も、前半しか届いていないころだったので余計に。でもいまでは、自分が“14歳のまま取り残されている”ような感じがしていて。というのも、本作の中盤以降では、シンジが“狂言回し”のようになって、周りの方たちを送りだしていくというポジションになっています。だからこそ、かもしれません」と語り、「『終わるんだよ』とおっしゃっていた庵野さんを、『卒業おめでとう』と見送ったような気持ちです」と微笑む。

さらに“送りだす”というポジションになったシンジについて、緒方は「『新世紀エヴァンゲリオン劇場版』の時にも思いましたが、『エヴァ』の場合は精神世界を描くことも多く、どこまでが作中でリアリティがある出来事なのか、判然としないところもあります。シンジが本当に能動的にみんなを送りだしたのかといえば、どうなのだろうという想いもあって。みんなと向き合い、気持ちを尋ねていったら、みんなが卒業して行った。それを送りだした、という感覚が近いのかもしれません」と話す。

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