既成メディアに取材能力を期待しすぎ
ブコメあたりを見ると、デモ主催者がリリース打ってるのにメディアが気付かなかったはずはない、と思ってらっしゃる方が多いようで、気付いてるのに知らぬふりをしているのだとご立腹でいらっしゃる。
あのですね、みなさん既成メディアの取材能力のなさを甘くみすぎです。
既成メディアはもうすっかり独自取材能力を失っていて、おおかた省庁の流した情報を記者クラブ経由で記事にしたててるだけで、自分の足で取材して書いてる記事はほとんどないですからね。
読者ウケしそうな記事が記者クラブから流れてこなかったら、フリーランスの持ち込みネタで紙面を埋めるか、各社からのプレスリリースを記事にしたてます。
そのプレスリリースは毎日100件以上も殺到してきてるわけです。リリース出すほうはタダで宣伝ができると思ってるから、言ってみればスパムのようなリリースを編集部は毎日毎日毎日毎日飽きるほど見てるわけです。
毎日新聞の出身で雑誌編集長をつとめた山川健さんも「複数の配信サービス会社からのリリースを受信している場合では1日数百件にもなります」と言っていますね。そんなリリース(スパム?)の山から、まじめな市民デモのリリースが目にとまる確率なんて多寡がしれてますよ。
今回、海外メディア(の日本支局)のほうに取り上げられやすかったのは、ふだん海外メディアのほうがおそらく営業目的のスパムリリースを受けとることが少なく、リリース1つ1つに目を通しやすかったからではないかなと思います。ただし、海外メディアでこういうデモが取り上げられるのは、「日本でこんなバカが湧いてるよ、イエローモンキーは野蛮だね」というニュアンスが含まれているので、デモ参加者や支援者が海外メディアに取り上げられたことをあまり自慢げに言わないほうがよさげかな。
さて、では、どうすれば国内メディアの取材をうけ、報道されることができたか。
コネがやはりでかい。かねて付き合いのある記者とつねに情報交換をおこたらず、何気ない会話のなかで「オレさあ、こんど渋谷でデモやることにしたからさあ」みたいなこと言えば、報道につながるかどうかは別として、少なくとも認知はされる。認知されなければ存在しないのと同じことですからね。
新聞の世界には「記事広告」って言葉があるんだけど、これは記事のフリをした広告のこと。「広告」とは書かないで一般の記事のように見せかけている。もちろん読者をあざむく不正なんだけど、現場ではまかり通っている。でも実態は広告なので、メディアは広告料を取る。記者とのコネがあれば、取材を受ける側なんだから、場合によっては広告料を取られずにすむかもしれない。もともと不正に書かれる記事だから広告料の名目が立たないですしね。
けど、今回のデモ主催者の田母神さんはおそらくその辺のコネがあまりない。カネもない。コネといえば、せいぜいチャンネル桜くらいでしょう。チャンネル桜では発信力が弱すぎる。ならば、コネ以外の方法を考えなければならない。
リリースを打つというのも、実はそんなに悪い手ではなかった。おカネもかかんないしね。ただ、やはり確実性にかける。かりにリリースに目をとめた記者がいたとしても、日ごろより連続的な付き合いがないとどうしても本質をはずした上っ面の取材、報道にしかならなかったりする。まず、おたがいの認識の摺り合わせからしないと誤解の溝が埋まらない。
それにタイミングがよくなかった。メディアの反中ムードはもう数日前からすこし控えめになってる。もうさんざん読者を反中ブームに煽りたててきたので、読者はだんだん飽きてきちゃって、それじゃあ数字を稼げなくなってきていた。そこで今度は「ちょっと騒ぎすぎなんじゃないですかね、日本のほうが冷静さを欠いてませんかね」などと醒めた顔してインテリを気取ってみたり。いかにも朝日的ですね。それはこのネタにトドメを刺したいからなんじゃなくて、同じネタを最後までとことんしゃぶり尽くすための既定路線、お決まりのシナリオなんですよね。
つまり今回の反中デモはそのトレンドに逆行してる。完全に出遅れてた。ピークを越したあと波に乗ろうとしても無理ってもんです。それでは場違いな、時代錯誤なイメージにしかならないです。あと1週間、行動が早ければ取り上げられてたかもしれない。「わたしたち日本人はみんな中国政府の横暴に怒ってます。ごらんください。渋谷駅前には抗議の声をあげる市民のみなさまがこんなにたくさん集まってます!!!!」
渋谷は人通りが多いから、あそこへ行けば目立つだろうというのもちょっと単純にすぎる考え方で、要はちょっとくらい人数集めても、普通の通行人のなかに埋没しちゃうんですね。それに、あそこでは毎日のように演説してる人がいる。運動家のなかでも埋没しちゃう。「木を隠すなら森へ」って言うけど、今回のは「見せつけたい木を森へ」持ってっちゃった。これは、いかにもまずい。TV局の前を通ったらTV局のクルーが駆けつけてくれるとでも思ったのかな。いやいや、そんなの見てないですから。かれらは記者クラブから流される情報しか基本的に見てない。
このデモはきちんとしたブレーンがいなくて、ほとんど手探りで実施されたものだと思いますよ。あらかじめ警察に届けが必要ってところまでは学習したみたいだけど、いかに効果的に存在をアピールするかというところまではまだまだ手が(頭が)回ってないような気がします。
というか、メディアが取り上げるかどうかなんてどうでもいいでしょう?メディア越しにデモ隊の主張を聞いて、「そうだったのか!!!!」と目が覚める人が続出…なんて夢想してますか。んなやついねーよ。
http://blog.livedoor.jp/yatanavi/archives/52689478.html
そもそも、デモはマスコミの力に頼って広げるような筋合いのものではない。少しでも人数を増やし、少しでも多くやって民衆を動かすのがデモというものである。