数年前の夜、米国アイダホ州で一晩中冷たい風が吹き荒れた。翌朝、庭を見ると、回転草(タンブルウィード)が首の高さまで積み重なっていた。
最近、同じような光景をとらえた短い動画が公開され、オンラインで話題を呼んでいる。動画の説明によれば、モンタナ州ボーズマンで撮影されたもののようだ。数え切れないほどの回転草が風に吹かれ、カメラの前を横切っている。
回転草は100年以上前から米国西部のほぼ全域で目にするおなじみの植物だが、実は米国原産ではない。学名はSalsola tragusで、ロシアアザミとも呼ばれる通り、ロシアの草原地帯(ウラル山脈の東)から持ち込まれた外来種だ。
1年の大部分は地面にしっかり根を張って成長する。しかし、冬が来ると枯れ、茎がもろくなる。そして、風の一吹きで根元から折れ、地面を転がりながら、広範囲に種をまき散らす。科学ジャーナリストのジョージ・ジョンソン氏が書いた『ナショナル ジオグラフィック』誌の記事によれば、小型車ほどの大きな塊になるものもあり、最大25万個もの種をいたるところに落とすという(参考記事:「米国西部にはびこる 転がる雑草」)。
ジョンソン氏は次のように説明している。
春になって雪が解け、私たちの牧場に夏の雨が降り始める頃、回転草の無数の種が茶色の大地から青緑色の小さな芽を出した。若芽は愛らしく、無害に見えるが、まもなくその本性を現す。数日後にはもう、私の手のひらぐらいの大きさに成長していた。これを強引に地面から引き抜こうとしても、ゴムのような弾力をもつ紫色の根はなかなか抜けない。
回転草が米国西部で確認されたのは1880年。当時、この厄介な植物は反体制派によって故意に持ち込まれたに違いないと考える人もいた。しかし科学者たちは、栽培用に輸入されたアマの種に紛れ込んでいたのだろうと推測している。
私の両親が経験したように、枯れた回転草は庭や道路を封鎖し、火災のリスクを高める。しかも、成長中は大量の水を吸い上げ、在来種や作物と競合する。これが土壌の乾燥を招き、土壌の浸食が促進されることもある(参考記事:「米国西部を襲う干ばつの脅威」)。
回転草は米国西部の大部分、さらにはカナダまで広がっている。アルゼンチンやオーストラリア、ユーラシアの全域でも確認されている。ゾウムシ、ダニ、菌類などの生物を使った駆除の研究が長年続けられているが、今のところ、最も効果的なのはやはり除草剤だ(参考記事:「侵略しつづける外来種」)。