拡張された身体機能「第3の親指」
人間の手において、親指は物を掴むために重要な役割を担う特別な指です。
この親指が増えたら、ちょっと便利になるかもしれません。
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)などの研究チームは、そんな人間の身体機能を拡張するべく、小指の外側に新たな親指を追加して手を対称形にするデバイスを開発しました。
こうした拡張デバイスは、脳波検出を利用するブレイン・コンピューター・インタフェースを利用する場合がありますが、今回は異なります。
この「第3の親指」は足首に取り付けられたセンサーによって、両足のつま先の動きで制御されるのです。
なんだか、話だけ聞くと難しそうな気もしますが、研究では36人の参加者にこのデバイスを装着し、5日間使用の訓練を行ってもらいました。
最初は多少、新しい親指に戸惑っといる実験参加者たちですが……
しかし、参加者たちは、すぐに新しい親指のコツを理解して、さまざまな動作について大幅な改善をすることができました。
カップを手に持ったままコーヒーに砂糖を入れてかき混ぜる、1つ余分にグラスを運ぶなどの運動タスクが可能になったのです。
他にも、片手でペットボトルを持ったままキャップを開けたり、マジシャンみたいなカードさばきも可能です。
素直に便利そうと感心してしまいますが、今回の研究者たちの関心はこのデバイスが脳に及ぼす影響です。
研究チームは第3の親指を使用する前と後で、参加者たちの脳にどのような変化があったかを、fMRIを使って調査しました。
すると、驚きの発見があったのです。
それは拡張された体を利用することには、大きな代償が伴う可能性を示唆するものでした。