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セイの断罪

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「……今回も大変だったわねえ」


ほう…とお茶を飲んでいる最中、そんな言葉を聞いた。目の前に座るのは、ミモザ。

ここはアルメニア公爵家の別邸…つまり王都にある我が家だ。


「まあ、ねえ…。あわや罪人だったんだものね」


「貴女、波乱万丈過ぎるわよ」


苦笑いと共に言われた言葉に、全くだ…と私も苦笑いを思わず浮かべてしまった。


「晴れて無罪を証明して王都にいるって言うから、会おうと手紙を出しても中々返事をしてくれなかったしね?」


あの査問会から一週間が過ぎている。


早く帰りたいと思いつつ、けれどもまだ帰れてない。


取り敢えず従業員を引き抜かれた王都にある店舗のゴタゴタを収めるのと、後はあわよくば通行税を取られている通商がどうにかならないかなあ……という交渉で。


正直、領地が第二王子派の面々に囲まれている以上、なかなか上手くはいっていないけれど。


一週間と言わず、査問会前から休みなく働いていたので、皆に休めと強制的に休みを取らされている今日、久しぶりにミモザに会ったという訳だ。


「それについては、本当に申し訳なく思っているわ」


「謝る必要はないわ。…私の言い方もきつかったけれど。貴女が働き詰めだって言うのも、聞いていたし。……今日も、時間をくれてありがとう」


「こちらこそ。愛想を尽かされても仕方ないのに、いつも気にかけてくれてありがとう」


学園から追放された後も、連絡を取ってくれてたし。


この前の査問会の時も、心配してくれているような文面の手紙を送ってくれていた。


……本当に、彼女が友達で在り続けてくれていることをありがたく思っている。


「そういえば王都にある店舗、営業再開していたわね」


「仮、だけどね。今は領地から連れてきた面々と後は新たに雇っている人たちで回して貰っているの」


領地から連れてきた面々は半分以上が、今まで商品開発に携わってきてきた人たち。


現場の空気を感じて貰う機会があった方が良いのかしら、と前に思った事があったので、今回便乗してみた。


新たに雇った人たちで回せるようになったら、引き上げさせてまた領地で通常業務に戻って貰うけれども。


「そう。やっぱり今まで閉じていたからか、随分混んでいたわね」


「あら、行ったの?」


「いいえ。行こうと思ったんだけど……あまりに混んでたから諦めたのよ。一週間で、少し落ち着いたみたいだけど」


「へえ……嬉しいけど、大丈夫だったかしら?確かに、メリダも随分疲れて帰って来てたけど」


うーん……行ったところで、何もできない。


けれども、この目でどんな様子か直接見たいような……。


「……商会に行ってみましょうか」


「良いの?」


「ええ。営業再開してこの方一回も様子を見ていないし……これからも見に行けるか怪しいし。ターニャ。従業員の皆が飲めるよう果実のジュースを準備しておいて」


「……従業員の人たちが飲めるよう?」


ターニャはすぐに頭を下げて了承の意を示していたけれども、ミモザが不思議そうに首を傾げていた。


「ええ。差し入れよ。一生懸命働いてくれているのだから」


「そんな事もするのね……」


ミモザは、驚いたように目を丸めている。


「どこの商会もそうかは知らないけれども。でも、従業員がいて初めてお店がまわせるでしょう?」


……今回の事件で、それは痛いほど痛感したわ。


「特に最近忙しいみたいだしね」


そうして、私とターニャ・ミモザと護衛の面々で領都に繰り出した。


「何だか久しぶりね、こうして外に出るのも」


視察に行く時と同じく質素な格好に、今回は髪色まで染めている。


そのため、いつもの銀髪ではなく赤みがかった茶色の髪だ。


これはアズータ商会で研究中の新商品。


なんでも植物からできた染料らしく、2・3日で落ちるらしい。


最近、企画研究の部署にいる皆が持ってくる新商品は、私をあっと驚かせるようなものが混じっている。


これも、その一つだ。


いずれは、白髪染めみたいなのができると喜ばれるかしら?


でも、この世界ってカラフルな髪色だからあまり白でも目立たない。


寧ろ、灰色になったおじ様……うん、渋くて素敵。


と言うわけであんまり需要、なさそうよね……。


そんな事を考えつつ歩いていると、割とすぐに店に辿り着いた。



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