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のら保健師の独り言

常勤行政保健師歴28年の経験をもとに、行政保健師向けに役立つ情報を提供するブログです。特に新人~中堅まで気づきにくいけど知っておきたい周辺情報を積極的に発信しています。ぜひご覧ください!

4月から保健師になる方へ:今のうちにやっておきたいこと

 保健師が読むメリットは
-学生として時間のとれる今の時期だからやっておきたいこと。

 

今のうちにやっておきたいこと

こんにちは。今日は、4月から新たに保健師として働く方々に向けて、今の時期にできることをお伝えしようと思います。すでに就職が決まって一安心、という人も多いでしょう。学生生活も残りわずかですし、いまのうちに遊べることがあればぜひ遊んでおいてくださいね。

 

一方で、ちょっとだけ仕事のことを意識すると良いこともあります。4月から始まる職場は、最初の数週間~1か月はかなり忙しくなる場合が多いです。少なくともゴールデンウィークまでは、新しい環境に慣れるための連日ラッシュだと思っていたほうがいいかもしれません。ゴールデンウィークを迎える頃には、クタクタになっている姿が目に浮かぶかも…。

 

実際、1年目の保健師がこなす業務は想像以上に多く、勉強も必要です。次にまとまった休みが取りやすいのは、夏休みあたりかもしれませんが、そこではメンタルヘルスの回復や気分転換に時間を取られてしまいがち。つまり、「4月以降に新しい勉強をする余裕はあまりない」ということです。

 

そこで私が特におすすめしたいのは、Excelの勉強と、生成AI(ジェネレーティブAI)の活用に触れておくこと。理由は大きく分けて2つあります。(もし自宅にExcelがなければ、Googleスプレッドシートでも構いません。生成AIに質問しながら、いろいろ試してくださいね。)

 

1. Excelの勉強は時短につながる

 

多くの大学生がExcelをそこそこ扱えるように思われがちですが、いざ業務で使うとなると「入力しかできない」「関数をまったく知らない」というケースが珍しくありません。仕事が本格化してからだと、Excelの勉強時間を捻出するのは難しいもの。

 

① 仕事が始まると勉強にとれる時間が少ないため効率的に仕事ができないため、保健師の実務にとる時間が少なくなる。

 

Excelの操作に慣れれば、入力速度が上がり、結果的に作業効率がアップ

 

Excelを習得しておくと、WordやPowerPointの操作にも通じる

 

④ 年度末にはデータ処理をする機会が必ずあるため、あらかじめExcelを使えると大きく助かる

 

 

実際、4月からの1年間は保健師として覚えるべき仕事が山積みで、Excelやデータ処理の学習に時間を取るのは大変です。逆に、今の時期に10時間ほどの初級者レベルの講座を受けておくだけで、かなり差がつくと思います。YouTubeなら「金子先生のチャンネル」が分かりやすくお勧めです。

www.youtube.com

 

また、私のブログでも保健師が知っておきたいExcelの範囲をしめしたブログがあります。ただし、順番的には金子先生のYouTube動画を先にやると良いでしょう。

 

nekoken2022.hatenablog.com

2. 生成AIを活用して苦手をカバー

 

もう一つが生成AIの活用。ChatGPTなどが代表的ですが、このツールを使い倒せるかどうかで、業務効率が大きく変わります。

 

文章作成のサポート:うまく文章が書けないとき、AIに構成を見直してもらう

 

Excel関数の作成や疑問解決:関数の書き方やデータ分析のヒントをAIに聞いてみる

 

イデア出し:地域活動の企画案など、ざっくりAIに相談してヒントを得る

 

 

なぜ、デジタルサポートが保健師にとって大事かというと、保健師本来の業務”に集中するための時間を生み出すからです。1~2年目はとにかく業務量が多いので、デスクワークの効率化は死活問題。AIを使うと上達が早いですが、最初は慣れが必要。今から10分でもいいので毎日使ってみると、4月以降かなり助けになるでしょう。

3. なぜ今の時期がベストなのか?

 

1年目の業務は予想以上に忙しい

→ 仕事でExcelやAIの勉強をする余裕がない

 

春休みの今なら、10~20時間程度の学習時間を確保できる

→ 初心者レベルの脱却は十分可能

 

 

保健師の業務は、通年、部署にもよりますがかなりの量があります。そこでExcelやAI活用に慣れていないと、「ちょっと調べるだけ」で延々時間がかかってしまい、残業が増えるかもしれません。慣れてさえいれば、スムーズに処理が進み、保健師としての実務にも少しだけ余裕を持って臨めるはず

おわりに:余裕を作ってこそ、本来の業務に集中できる

 

私が思うに、Excelや生成AIに強い保健師はまだ少ない印象があります。そういう意味では、新人のあなたが「ExcelとAIで作業を効率化できる」と重宝される可能性もあるでしょう。(悪く利用される可能性あるのでExcelが出来る事は適当に内緒にしておきましょう。)それに、保健師として大切なのは“住民や対象者への直接的な支援やコミュニケーション”であって、デスクワークに時間を奪われすぎるのはもったいないですよね。デスクワークも完璧にしつつ、保健師の本来業務を行うように務めてください。

 

この春休みを活かして、Excel初級レベルを卒業し、生成AIに触れておく。これだけで1年目を乗り越える余裕が違うと思います。「難しそう」「面倒くさい」と敬遠せず、いまのうちにちょっとだけ頑張ってみましょう。結果的に、その頑張りがあなたの貴重な時間を救い、本来学ぶべき保健師の専門知識や技術へ集中できる土台を作ってくれるはずです。

 

4月、そしてこれから始まる新しい環境が、あなたにとって充実したものになりますように。もし余裕があれば、ぜひExcel講座や生成AIとの“練習”をやってみてくださいね。応援しています!

 

 

(ネコケン)

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書評:「就職氷河期世代の経済学」を読んで(保健師に効く読書)

 保健師が読むメリットは
-わりと見過ごしがちな「世代論」。これを押さえる事で事業計画をたてる時にイメージがわきます。

保健師だからこそ知りたい:就職氷河期世代の経済と世代背景

こんにちは。最近、「就職氷河期世代」というキーワードを目にする機会が増えたな、と感じています。保健師としていろんな世代の人と関わる中でも、その世代特有の困難や不安定さが見え隠れする場面が少なくありません

そこで今回、

書名:就職氷河期世代の経済学

永濱利廣(ながはま・としひろ)著

日本能率協会マネジメントセンター刊)

を紹介すます。

改めて本著から、この世代の背景を整理してみることにしました。

1. 就職氷河期世代とは?

厚生労働省では、バブル崩壊後の厳しい雇用環境(1990年代~2000年代)で就職活動を行った結果、いまも課題を抱えている世代を「就職氷河期世代」と呼んでいます。具体的には”現在30代後半から50代前半(1970年代~1980年代前半生まれ)”あたりが該当し、人口も多いのが特徴です。

  • バブル後の不況: 企業の新卒採用が極端に縮小
  • 正規雇用の急増: 正社員になれず、やむなくアルバイトや派遣に
  • 賃金上昇の機会を逃す: 若い頃の低賃金が中年期まで響き、資産形成が難しくなる

このように、本来なら人生の基盤を築く若い時期に「思うように就職できない」という経験を強いられ、いまも不安定な収入や老後の備え不足を抱えている人が少なくないといわれています。

2. 世代背景と保健師の関わり

保健師は乳幼児から高齢者まで幅広い年代を支援しますが、実は“就職氷河期世代”に特化した視点を持つこは、あまり多くないかもしれません。しかし、彼らが現在、Z世代の親になっている事を忘れてはいけません。Z世代は、大学進学にあたり奨学金戸いう名の教育ローンを借りて入て、それが生計の圧迫になっているようです。また、最近では貧困家庭の話題も多くなり、家庭内で経済的に厳しい状況や、働きづらさを抱えていると、それが子どもの健康やメンタル面に影響を与えることも考えられます。

たとえば、ひとり親世帯が非正規雇用に集中している場合、収入や就労時間が安定せず育児に十分な時間を割けない……といった負の連鎖が起こりやすいかもしれません。(最近では結婚したカップル10組のうち3組が離婚するのが普通といわれています。)また、年齢的にも40~50代で体力的にきつくなる時期に、キャリア形成がままならず、メンタル不調を抱えて支援が必要になることもあります。世代の背景を知っておくと、保健師として地域での面談や家庭訪問などでより的確にアセスメントできる幅が増えていきます。

3. 『就職氷河期世代の経済』の概要

永濱利廣著『就職氷河期世代の経済学』を読んでみると、以下のようなポイントがわかりやすくまとめられています。

  1. バブル崩壊後の企業の採用縮小

    • 新卒時代に正社員としての門が狭かった
    • 解雇規制や人件費の高さから企業が慎重になり、非正規のポストを増やす流れがあった
  2. 正規雇用が生活を不安定化

    • 派遣、アルバイトが長期化
    • 30代・40代になっても正社員登用が難しく、年収が上がりにくい
  3. 少子化や消費低迷への影響

    • 結婚・出産をためらう人が増え、ベビーブームが起きなかった
    • 消費意欲が高まりにくく、日本経済全体の活力にも影を落としている

著者は、「当時は『自己責任』と突き放されたが、実際にこの世代が大規模に貧困化すれば、社会全体の負担が増える」と強調しています。まさに、“個人の問題”と切り捨ててはいけないわけですね。

4. 保健師が知る意義:メンタルヘルスや地域保健の鍵

就職氷河期世代は、若いころに十分な社会的基盤を築けなかったため、40~50代になっても経済面・精神面で不安定な方が少なくありません。とりわけメンタルヘルスの問題は、収入や将来への不安と強く結びつくケースも考えられます。(最近では、団塊ジュニアの結婚できずに年収200万円程度の男性が自らを下級国民といっているという話を橘玲著「DD(どっちもどっち)論」で読んだ覚えがあります。)

  • 家庭内のコミュニケーション: 経済的なストレスが家族関係を悪化させる可能性
  • 子育てへの影響: 親自身が働き方や生計面で苦しければ、子どもの体調管理や通院、学校生活が不安定になりやすい
  • 社会資源の未活用な方: 50代であっても、早期退職や失業や度重なる転職を経て健康保険に加入していない人、年金未納が多い人など多種多様な課題がある人がいる

こうした問題が見えにくいまま放置されると、地域全体の健康度も下がります。「あの家庭は特に問題なし」と思っていたら、実は親が氷河期世代で非正規三昧、突然の失業や病気で一気に困窮……なんてことも。これらの問題は、保健師だけでは勿論解決はできませんが知っておくことが必要だと思います。そのうえで保健師として“今の家族”だけでなく、“親の世代背景”を押さえておくのが、支援にとって対象者をアセスメントをする大事なヒントになり得ます。

5. まとめ

就職氷河期世代(現在30代後半~50代前半)という単語は、メディアでも耳にする機会が増えたものの、その実態を詳しく理解している保健師は案外多くないのではないでしょうか。しかし、この世代が抱える貧困リスクやメンタル面の不安定さは、彼らの子どもやそのパートナーにも大きく影響を及ぼします。

  • 経済的背景: ずっと非正規雇用だった人も珍しくない
  • 社会的支援の遅れ: 「自己責任」とされてきた歴史的背景
  • 地域への影響: 就職氷河期世代の不安定さが、そのまま子育てや高齢者ケアに波及する可能性

本書『就職氷河期世代の経済学』を読むことで、制度的・歴史的な視点から「どうしてこの世代がこんなに厳しい状況にあるのか」腑に落ちるはずです。保健師として、メンタルヘルスの支援や家庭訪問を行う際には、こうした“世代特有の背景”を踏まえてアセスメントすることが、より的確なサポートの鍵になるのではないでしょうか。ぜひ一度、手に取ってみてください。

 

(ネコケン)

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ケースワークする時に援助対象者しか見ていない?~家族背景を見落とさないために~

 

 保健師が読むメリットは
-援助対象者だけでなく本人を支える家族等のサポートする事を思いだします。

 

はじめに

皆さんは、ケースワークを行う際に援助対象者の家族状況をどの程度考慮していますか? 保健師として、本人の状態だけに目が行きがちになるケースは珍しくありません。とはいえ、周囲のサポート力や家族の抱える問題を見落とすと、あとになってトラブルが深刻化することもしばしば。このブログ記事では、そんな“家族背景の見落とし”のリスクと、なぜ包括的に家族をアセスメントする必要があるのかを考えてみたいと思います。

 

1. 援助対象者「だけ」を見ることの落とし穴

最近、友人の職場であった事例を耳にしました。ある保健師の後輩がケースワークを行う際、援助対象者本人の一部の問題だけを取り上げ、家族の状況をほとんど確認しないまま支援プランを組んでいたというのです。

 

一見すると本人には特段の問題がないように見えても、家族背景をよく見ると“いつトラブルが起きてもおかしくない”潜在的リスクが潜んでいることがあります。例えば、生活リズムの乱れを抱える子どもがいる家庭で、実は配偶者との不和が深刻化していたり、別居状態が長引いていたり。援助対象者が一応「元気」そうでも、家族サポート力が弱ければ、少しの変化が引き金になって大きな問題が表面化する可能性があります。

 

2. 小学校以降で見落とされがちな家族問題

乳幼児期であれば、子どもの虐待や夫婦・家族関係が保健師の支援の中心になります。しかし、子どもが小学校以降になり表面的には落ち着いたように見えると、家族の問題が「そこまで深刻ではない」として後回しにされてしまうことが少なくないかもしれません

 

たとえば8050問題

「親が80代で、子どもが50代の精神障害の方や難病の方を抱えている」というケースです。親御さんの体力や財力が衰える中で、子どもが自立していない状況が重なると、あっという間に生活や介護の問題が深刻化します。こうした家族を行政としてサポートする場合、地区担当保健師の連携が不可欠です。(この例は、わりとポピュラーなケースなので気づき易いと思います)

 

気づかれにくい潜在的リスク

家族の基盤が脆弱になっているとき、援助対象者が困った事態になってから初めて「家族が機能していなかった」と分かるケースは少なくありません。つまり、「本人は自立しているから大丈夫」と安心していたら、実は家族みんなで無理をしていた、という状況も考えられます。

 

 

 

3. 発達障害相談の増加と家族サポート力

近年、発達障害の診断や相談が以前に比べて増えている印象は多くの保健師が感じていると思います。小中学校のころから保健所に相談が入るケースも増え、支援プランを考えるうえで「家族がどう受け止めているか」「家庭内でどうサポートを分担しているか」が重要になります。

 

しかし、援助対象者だけに注目していると、たとえば母親だけが頑張りすぎて心身ともに疲労していたり、父親や祖父母が距離を置いてしまっている状況を見逃してしまいがち。思春期の発達障害等の支援に関しても、保健師が「家庭全体のサポート体制をアセスメントする」という視点をもつことで、必要な関係機関やサービスに早期につなげる可能性が広がります。

 

4. ケースワーク時には「家族サポート力」を見る

 

援助対象者が何らかの障害や疾病を抱えているなら、家族がどれほどサポートできるのかを客観的に把握しておくことはとても重要です。家族サポート力が弱い場合、あるいは家族自体が今後変化(高齢化、経済的問題、心理的負担)を迎える可能性が高い場合は、そのままにしておくと後から急に大きな問題が噴出するかもしれません。

 

家族サポート力チェック

(以下は私が注意している点ですが個人で広げて頂けたらと思います。)

1. 主に誰が日常的なケアを行うのか

2. そのケア担当者が心身の余裕を失っていないか

3. 他の家族とのコミュニケーションは円滑か

4. 経済面・就業状況は安定しているか

5. 将来的な介護や相続の見通し

 

こうしたポイントを把握するだけで、支援や相談先をより適切に選びやすくなります。

 

5. 経験の浅い保健師、あるいは先輩も見逃すかも?

思春期などの微妙な時期は、30年前にはあまり深くケアされなかった面があり、周囲が「ある程度放置してもなんとかなるのでは?」という先入観をもっているかもしれません。つまり、先輩保健師自身が「家族背景をしっかり見る」という意識をあまり持っていない可能性があります。

 

特に、現代の子どもや若者を取り巻く環境は加速度的に変化しています。スマホSNSの普及がコミュニケーション構造を大きく変え、引きこもりやメンタル不調などが早期化・複雑化している現状を考えると、 「昔の常識」や「先輩の感覚」だけでは対応が追いつかない場面も増えているでしょう。

6. おわりに:家族アセスメントを記録に残す意識を

今回の雑感として強調したいのは、「ケースワーク時には家族背景にも注目しよう」というごく単純なメッセージです。とはいえ、実際の記録や書類には「家族サポート力」などの欄がなかったり、慣例として本人情報だけに集中する書き方をしている施設もあるかもしれません。だからこそ、保健師自身が意識して家族の状況をチェックし、必要に応じて多職種連携を図ることが大切です。

目的意識: 「将来的に何が起こりそうか? 家族はどう変化しそうか?」という視点をもつ。

家族アセスメント: 記録やカンファレンスで共有する際、最低限のポイントでも入れておく。

 

今こそ再確認: “ケースワークは援助対象者単体ではなく、その背後にある家族・コミュニティまで含む”という基本を改めて思い出すこと。

 

 

短い雑感ではありますが、今後の支援で「家族をどう見るか」を見直すきっかけになれば嬉しいです。

 

(ネコケン)

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文化がヒトを進化させた:保健師が読むメリットとは?

 保健師が読むメリットは
-専門的な内容ですが、読んでみると「人間という生き物がいかに“文化”によって進化してきたか」がよくわかり、保健師としても活かせるヒントにあふれています。

 

 

はじめに

 

今回ご紹介するのは、

ジョセフ・ヘンリック著

『文化がヒトを進化させた:人類の繁栄と〈文化-遺伝子革命〉』

という一冊です。

 

保健師は日々の業務で、発達障害を持つ子どもやそのご家族、外国から移住してきた方や多文化を背景に持つ住民など、実に多様な方々に接しますよね。人間が本来どのような特性を持った生物かを理解していると、対象者とのコミュニケーションやアセスメントが一段と深まるでしょう。本書を通じて、人間の文化と遺伝子がどのように絡み合い、いまの社会を形作っているのか学んでみませんか?

 

1. 「ヒトを進化させたのは文化だ」という考え方

 

著者ジョセフ・ヘンリックは、本書で「人類の成功の秘密は“生まれつきの知能”ではなく、文化として受け継いできた知的スキルやノウハウにある」と主張しています。私たちが遺伝的に備えている脳の働きだけではなく、周囲の大人や仲間から学ぶ行動様式こそが人類を強く進化させた、というのです。

 

集合知:一人ひとりの個人能力を超えて、集団として蓄積される知識・技術

 

模倣学習:子どものころから「誰の真似をすればよいか」を見極めるスキル

 

 

これらが「文化」と呼ばれる遺産として、何世代にもわたって受け継がれてきた結果、私たち人間は環境へ適応する大きな力を持ちました。一方で、その文化的ノウハウを全部奪われてしまうと、道具なしで野山を生き抜くなど到底できない――という実例が、本書には豊富に載っているのです。

 

2. 具体例:文化進化が支えたヒトの長距離走

本書の中でも印象深いのが、「人が長距離走に優れている理由」に関するエピソードです

 

馬などの動物と比べると、人間は体内に大量の水を蓄えられません。さらに一度にがぶっと水を飲むことも得意ではありません。

 

それなのに、人間は長距離走で動物に追いつき、狩猟ができるほどの持久力を獲得してきました。

 

 

その秘密は、文化として編み出された「水容器」と「水場を探すノウハウ」にあったというのが著者の指摘です。実際に多くの狩猟採集社会では、ヒョウタンや革袋、あるいはダチョウの卵の殻を用いて水を持ち運び、どこで水を得られるかという知恵を世代から世代へと受け継いできました。もしその「文化」がなければ、ヒトの持久力は宝の持ち腐れになってしまうというわけです。

 

3. 保健師が得られる気づき

 

この本を読み進めると、人間の生物としての特徴と、文化が生み出す“集合知の両面から、私たちがいかに生き延びてきたのかが理解できます。保健師として活動していると、以下のような視点で役立つでしょう。

 

1. 異文化への理解

 

現代日本は、多文化背景を持つ住民も増えています。彼らが当然と思う生活習慣や価値観は、日本人の文化とは全く違うかもしれません。

 

「人間は文化によって大きく形作られる」という事実を知ると、外国人住民や異文化圏の方々へのアセスメントや支援の仕方も柔軟になり、「なんでそんな行動をするの?」という偏見を減らせます。

 

2. 発達障害を含む多様性の捉え方

 

人間は遺伝子だけでなく、周囲から学ぶ文化の影響で大きく育ち方が変わります。

 

発達障害の方々の特性も、「個人の脳機能だけ」ではなく、「社会や周囲がどう適切なスキルを教え、対応しているか」という文化的背景が一因になる場合があると考えられます。

 

3. コミュニティの健康づくりにおけるヒント

 

集合知としての文化がどんどん蓄積されていくことで、地域の健康課題にも新たなアイデアが生まれるかもしれません。

 

保健師自身が「こういう知識・技術を共有すれば地域住民の生活が向上する」といった形で、文化進化を意図的に後押しするような役割を担うことも考えられます。

 

 

 

4. 人類の文化依存は“強み”でもあり“弱み”でもある

 

『文化がヒトを進化させた』では、人間が「文化」に高く依存していることが、私たちの強みだと説きます。大量の知識や技術を受け継いで暮らしているからこそ、先人が苦労して培ったノウハウを新世代が再発明する必要がありません。(もちろん、より良い物を、さらに作り上げる可能性が高いです。)

しかし同時に、それを失うとどこかに孤立して取り残されるリスクがある点も描かれています。これは、現在の社会状況(たとえば過疎地域や孤立無援の高齢者など)を考えるうえでも示唆に富むはずです。保健師としては、「周囲の人々や社会資源とつながりが絶たれると、彼らの健康や生活はガラッと悪化する」と理解できれば、より踏み込んだ支援体制づくりを考えられます。

 

5. まとめ

 

『文化がヒトを進化させた』は、「人類にとって文化こそが最大の武器である」という斬新な視点で書かれた一冊です。

 

長距離走の秘訣から日常生活のノウハウまで、具体的なエピソードによって「人間とはいかに文化に依存した生き物か」が詳しく描かれています。

 

保健師として、多様な背景を持つ住民と向き合うとき、あるいは発達障害や高齢者支援などの場面で、「文化」という視点を常に持つことが大きなアドバンテージになるはずです。

 

 

「生まれつき備わった脳の力」だけではなく、「周囲から学んだ知的スキル」がいかに私たちの生活を支えているか――。本書を読むと、その大切さを改めて痛感します。ぜひ、保健師業務に限らず、自分の人生観にも取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

 

(ネコケン)

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保健師現場から考える生成AI活用法 ― 境界知能の方への支援とドラえもん時代の幕開け

 

 保健師が読むメリットは
-生成AIを利用した支援の仕方のヒントがあります。

 

保健師活動の中で感じる生成AI活用の現状

日々の保健師活動を通して感じるのですが、最近、境界知能の方々の中に生成AIを活用するケースが見受けられます。

ただ、実際の利用状況を見ると、本人が本来求める答えを得るために、AIに一方的に答えさせるような使い方になっている印象です。

本来であれば、双方向のコミュニケーションを通じて理解を深めるべきところ、単に自分の質問を変えながら、望む答えを導き出すだけの利用法に留まっているケースが多いように思います。

 

生成AIの活用によるメリット

 

一方で、生成AIを上手に活用することで、境界知能の方々にも大きなメリットがもたらされる可能性があります。

ただ、地区活動に従事する保健師の中には、実際に自分で使っていないため、効果的な使い方やそのメリットを十分に伝えられていない方も少なくない印象です。

今後、10年以内に生成AIの活用法に関する研修や助言の機会が増えることが期待されます。

そこで今回は、発達障害や境界知能の方々が生成AIを活用することで得られるメリットについて、改めて考えてみました。

 

生成AIは、将来的にはまるで「ドラえもん」のような存在となり、さまざまな支援の可能性を広げてくれるでしょう。

現時点では、援助対象者がどのように生成AIを使いこなしているか、我々保健師も注視していく必要があります。

 

 

生成AIがもたらす支援の可能性

 

1. コミュニケーション支援

 

対話の補助

対話形式で質問に答えたり、会話の練習相手として利用することで、コミュニケーション能力や社交スキルの向上に寄与します。

生成AIは、何度聞いても怒らない、気長に相手をしてくれるため、本人が伝えたい内容を整理したり、自分の気持ちに気づきやすくするのに役立ちます

 

言語の調整

難解な表現や専門用語を噛み砕き、シンプルな言葉に置き換えることで、情報の理解をサポートします。例えば、私もよくやりますが、「小学生4年生でもわかるように説明して」等わかりやすく言葉を砕いてもらうなどすると理解しやすくなります

 

 

2. 学習・教育支援

 

個別学習プランの作成

利用者の理解度や興味に合わせた教材の提供や、学習内容のカスタマイズが可能です。

 

問題解決のアシスト

宿題や課題に対するヒント、解説、例題の生成を通じて、学習のサポートが行えます。

類題を沢山作成させる事でより理解しやすくする事も可能です。

 

3. 生活の自立支援

 

もうじきAIのアシストにより、現在の通知設定をよりやりやすくするようなスケジュール管理・リマインダー等、日常生活のルーチン管理ができるようになります。その結果、タスクのリマインドを通じ、時間管理や自律的な行動を促進します。

 

意思決定の補助

シンプルな選択肢やシナリオの提示により、意思決定をサポートし、自己肯定感や自立性の向上が期待されます。

 

 

4. 情緒・ストレスマネジメント

基本的に生成AIは、優しい対応と労いをしてくれます。その事で癒される方もいます。

ラクゼーションの提案

瞑想、呼吸法、簡単なストレス解消法などを対話形式で提案することで、情緒の安定を支援します。

 

感情表現の支援

利用者が自分の感情や体験を言語化する際のサポート、気持ちを受け止め、良い行動を褒める等を通して、自己理解や情緒のコントロールに寄与します。

 

 

 

 

 

生成AI活用の際の注意点

 

生成AIを活用する際は、利用者一人ひとりの状況やニーズに応じた安全な環境づくりが大変重要です。

援助対象者が安全に利用しているかどうかの気づきが必要です。

生成AIはあくまで補助ツールとして位置づけ、専門家や支援者の判断と併用することで、より効果的な支援が可能になると考えています。

今後、生成AIとの付き合い方やその活用法についても、研修などでの議題が増えることが予想されます。

まとめ

 

保健師として、日々の活動の中で新たな技術やツールがもたらす可能性に目を向けることは大切です。

生成AIは、適切に活用すれば、境界知能や発達障害を持つ方々の支援において、コミュニケーション、学習、生活自立、情緒の安定など多方面で大きな力となるでしょう。

これからも、私たち保健師自身が生成AIを理解し、効果的な活用法を学んでいくことが求められる時代になってきています。研修等あれば積極的に参加し、ご自身も利用してみることで助言のイメージがつくはずです。

 

 

以上、保健師活動の現場から感じた生成AIの可能性とその活用法についての考察でした。今後も引き続き、最新の技術やツールの情報に注目しながら、皆さんと情報共有していきたいと思います。

 

(ネコケン)

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【年度末の統計業務】効率化のカギは「本当に必要なデータ」と「生成AI」の活用

 

 保健師が読むメリットは
-現在の仕事のデータ集計に対して立ち止まってみてみる事ができます。

 

はじめに

1月も終わりが近づき、年度末がすぐそこまで来ていますね。常勤の保健師にとっては、事業統計の集計作業が待っている時期ではないでしょうか。忙しい中での統計業務は苦手意識を感じる方も多く、ただ「数を取る」だけで終わってしまうケースも見受けられます。

 

しかし、本来であれば年度末の統計は「来年度に向けた事業アセスメント」に活かすべきもの。時間がないからといって、集計が目的化してしまっていませんか? 本当に必要な情報を取り切れていないのに、前年度踏襲で形だけの仕事をして満足していませんか?

 

今回は、生成AIの上手な使い方を通じて事業統計を効率化し、事業評価につなげるためのポイントをお伝えします。

 

1. なぜ「意味のないデータ集計」が起こるのか

 

(1)時間が足りない → 前年度踏襲

 

年度末の慌ただしさの中で「時間がないから去年通りでいい」となりがち。結局、どれだけ集計しても誰も見ないデータになってしまう可能性もあります。

 

(2)必要性を再考する余裕がない

 

「このデータは何に使うのか?」を考えず、なんとなく集計してしまう。その結果、事業評価や今後の改善には結びつかない統計作業だけが残ります。

 

 

 

2. 生成AIを活用して、統計業務を時短しよう

 

私自身、関数を調べながら手作業で表を作ると、ざっと8時間かかる業務がありました。ところが、生成AIに関数づくりを任せたところ、およそ3時間以内で終了。残りの5時間を別の集計や検討に充てられたのです。

 

もし常勤保健師の皆さんが同じように生成AIを活用できれば、3時間で集計が終わり、余った5時間で事業評価やアセスメントにじっくり時間を使えるようになります。忙しさを言い訳に、必要なデータの検証を後回しにしなくても済むのです。

 

 



 

3. 統計を「事業評価」に活かすためのポイント

 

1. 集計する目的を明確にする

「このデータは何のために使うのか?」という視点を常に意識しましょう。単に数を並べるだけでなく、事前にアセスメントの項目を設定しておくことが大切です。

 

 

2. 生成AIなどを使い、業務効率化を図る

時間がない中でも、日頃から効率化を意識してAIを活用することがポイント。手作業を減らし、余った時間で“本当に必要な作業”に注力できます。

 

 

 

 

 

 

4. 今こそ意識したい「年度末の仕事術」

 

(1)年度末こそ「本当に必要なデータ」を見極める

 

とにかく集計に追われがちな年度末。しかし、そのまま漫然と統計業務をこなしていると、来年度の事業計画に活かせるはずの知見をスルーしてしまうかもしれません。「なぜ、この数値が必要なのか?」を自問してみてください。

 

(2)次回の夏は勉強のチャンス

 

今から間に合わないと感じる方も、次回の夏頃には比較的時間を作りやすいのではないでしょうか。仕事と学習は別物と割り切り、効率化の方法を探る・AIのスキルを磨くなど、早めに準備しておくのがおすすめです。

 

 

 

 

5. まとめ

 

・前年度踏襲の「意味のない統計」になっていないか、今一度見直そう。

 

・生成AIを活用すれば、集計業務を大幅に時短できる。

 

・空いた時間で事業評価やアセスメントをきちんと行えば、来年度の改善につながる。

 

・夏など、時間が取りやすい時期に学んでおくと安心。

 

 

年度末は何かと忙しいですが、「集計して終わり」ではもったいない。できるところからAIに助けてもらい、業務の効率化と事業評価の向上を同時に目指していきましょう。お疲れさまですが、どうか少しでもラクに、そして有意義に年度末を乗り切ってくださいね。



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【書籍紹介】『ファスト&スロー』で学ぶ思考のクセ

今回ご紹介するのは、行動経済学ノーベル賞を受賞したダニエル・カーニマンの著書『ファスト&スロー』です。上下巻の大ボリュームですが、まずは上巻だけでも十分に読み応えがあり、人間の思考パターンを深く理解するうえで大きなヒントを与えてくれます。

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 保健師が読むメリットは
-援助対象者の“思考のクセ”を理解する手がかりになります。

 




 

今回ご紹介するのは、行動経済学ノーベル賞を受賞したダニエル・カーニマンの著書『ファスト&スロー』です。上下巻の大ボリュームですが、まずは上巻だけでも十分に読み応えがあり、人間の思考パターンを深く理解するうえで大きなヒントを与えてくれます。

発売日:2014年06月
著者/編集:ダニエル・カーネマン, 村井章子
書名:ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか? 
出版社:早川書房

 

 

本書のポイント:システム1とシステム2

『ファスト&スロー』の中心的なテーマは、人間の思考を2つのシステムに分けて考えるということです

 

システム1(早い思考): 直感や連想によって瞬時に判断する。 たとえば犬や猫を見て即座に「かわいい!」と感じるのは、このシステム1による反応です。

システム2(遅い思考): 論理的・分析的に物事を検討する。 直感的な判断に対して「本当に正しいか?」と一呼吸おいて考え直すのがシステム2の役割です。

 

● システム1に支配されやすい状況

私たちは、ニュースやSNSを見ているとき、報道される内容に瞬時に反応しがちです。たとえば、ある人に関して否定的な報道を目にすると、システム2で検証する前に「この人は悪い人だ」と決めつけてしまうことがあります。

● システム2の本来の役割

本来なら、システム1が下した判断に対して、システム2が「ちょっと待てよ」と落ち着いて考える時間を持つことで、誤解や早とちりを防ぐことができます。しかし、私たちが忙しかったり余裕のないときは、システム2がうまく機能せず、直感的な判断に追随しがちになるのです。

 

 AIの進歩とシステム1・システム2

最近話題の生成系AIにも、システム1・システム2のアプローチがあるとされています。連想をベースにした高速な回答を得意とする一方で、徐々に論理思考を取り入れようとする技術も出てきました。

今後、AIの研究が進むことで、人間の脳や思考特性の解明にも寄与するかもしれません。

 

 保健師が得られるメリット

● 思考のクセを理解し、援助対象者を支援する

保健師にとっては、援助対象者の“思考のクセ”を理解する手がかりになります。たとえば「この方は、すぐに自己否定的な結論に飛びつく。システム1が働いているのかもしれない」と考えれば、声かけの仕方や支援のアプローチを工夫できます。

また、声掛けの仕方どう相手のシステム1に反応するかを意識することで、適切な言葉がけをできる可能性が増えます。

● 精神医学との関連性

カーニマンの理論は、今後精神医学やメンタルヘルス分野にも応用の可能性があります。保健師が先にこの本のエッセンスを知っておくことで、実践の場面で「早い思考」「遅い思考」の視点を活用しやすくなるでしょう。


● 自分自身を客観視できる

 

また、この理論を学ぶことは、保健師自身の思考や判断を見直すきっかけにもなります。忙しいときほどシステム1に頼りがちであるため、「今、私は直感で走っていないか?」と立ち止まることで、より適切な支援ができるかもしれません。

 

 

 まとめ:まずは上巻からでも読んでみよう

『ファスト&スロー』は上下巻のボリュームがあるが、まずは上巻だけでも十分に価値がある。
人間の思考を「システム1(早い思考)」と「システム2(遅い思考)」に分ける考え方は、私たちの日常や仕事に幅広く応用できる。
保健師として援助対象者を支援するときも、相手の思考パターンや自身の思考のクセを把握することで、より適切な関わり方が見つかるはず。


「思考には2種類ある」という視点を持つだけでも、判断ミスを防いだり、自分や相手を客観的に見るヒントを得られます。興味を持った方は、ぜひ『ファスト&スロー』を手に取ってみてくださいね。



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